
平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性で約12年。いくら「長生き」しても寝たきりだったら意味がない。寝たきりリスクを下げるカギは、血管を広げる物質「NO」の分泌にあった。
血管をしなやかにして広げることが寝たきりの予防に
日本人の死因で最も多いのはがん。次いで2位に心疾患、4位に脳血管疾患があがる。脳血管疾患は発症とともに死に至ることがあるが、一命をとりとめて後遺症が残るケースも少なくない。血管・心臓のエキスパートの医師・医学博士で、現在は家庭医として1日に100人以上の患者と接している高橋亮さんが言う。
「脳血管疾患は、脳梗塞、脳出血などが代表的です。脳の血管が詰まってしまうのが脳梗塞で、弾力性を失った脳の血管が破れて出血するのが脳出血。どちらも動脈硬化が主な原因です」
高橋さんはとりわけ脳出血のおそろしさについて「高い確率で後遺症が残ること」を指摘する。
「脳出血で運ばれてきたかたのほとんどは手足に障害が残り、寝たきり生活になってしまう可能性が高いといえます。つい先日も、血圧の薬をのみ忘れていたかたが自転車で遠出をした出先で脳出血になり病院に運ばれて、そのまま寝たきり生活になってしまいました。
加齢とともに血管は硬くなり、弾力を失ってしまいます。また高血圧が続くと血管に負担がかかり、動脈硬化を招いてしまう。血管をしなやかにして広げることが、寝たきりの予防につながります」(高橋さん・以下同)
そこで高橋さんが著書『血管の名医が薬よりも頼りにしている 狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』で提唱するのが、誰でも簡単にすぐにできる「血管広げ体操」だ。ポイントは血管を広げて血圧を下げる天然物質「NO(一酸化窒素)」を分泌することにある。
「窒素と酸素が結合したNOは大気中にも存在し、人体の血管内の細胞からも分泌されます。NOが血管内に放出されると、血管平滑筋に『力を抜いて』というサインが伝わり、血管が広がるんです。
結果的に血流がよくなり、血圧が下がる。そしてNOが血液とともに全身に流れることで、血管がしなやかになり広がる。NOが分泌されるのは、軽い運動をして筋肉を伸び縮みさせたときなんです」
体操のおかげで105才まで元気
運動の中でも特にやるべきは、太ももとふくらはぎを伸ばすことだ。
「全身には約600の筋肉があり、そのうち6〜7割が下半身に集中しています。下半身を動かすことが、最も効率よくNOを生み出せる。そのなかでも太ももとふくらはぎの筋肉は大きく、ここを伸ばすストレッチは効果が大きい。
論文を調べると10〜15分程度のストレッチをすることで徐々に血管がしなやかになり、広がり始めると報告されています。長時間やる必要はありません」
太ももを伸ばす体操をしていた高橋さんの祖母は、90才を超えても自分の足で歩いていたという。
「私が子供の頃、祖母が毎日テレビを見ながら太ももを伸ばしていたんです。血管の研究を始めてから、あれは科学的な自重の加圧トレーニングだったんだと気づきました。動脈硬化が進んでしまって、複数の病院で『もう打つ手がない』と診断された患者さんが、ストレッチを中心とした生活習慣を1年続けたことで、劇的に回復した例もあります。
ちなみに、私の外来に通っていた患者さんの最高齢は105才のかたでした。転倒による外傷で亡くなられましたが、最期まで自分の足で歩いて来院したり、身の回りのことを自力でこなしていました」
テレビやスマホを見ながら、1日10分でOK。血管を広げて寝たきりを予防し、健康寿命を延ばしたい。
《血管広げ体操》
【1】ひざをついて足首の下にクッションを置く

片ひざをついて、もう片方のひざを立てる。ひざをついている足の足首の下にクッションを置く。
【2】足首をつかんで前傾する

スマホを見ながら、ひざを立てた足の足首を手でつかんで、上半身を前に倒す。背中が曲がらないように注意。
《血管広げ体操》前太ももを伸ばす運動
【1】リラックスして座る

テレビを見ながら姿勢を正して、床の上に正座する。座布団を使ってもいい。
【2】手をついて後ろに倒れる

お尻の後ろで両手を床につける。両手はできるだけお尻から離す。
【3】お尻を上げる

お尻を軽く浮かせた状態をキープ。腰を痛めないように注意。難しければ、【2】だけでも充分に効果アリ。
※女性セブン2026年2月5日号