
がん宣告と闘病、奇跡的な妊娠と出産、子育ての日々を、遠藤和さんは亡くなる10日前まで日記に綴った。日本中に感動を届けた愛の記録が、約1万8000字の寄稿とともに、この度文庫化される。彼女が遺した言葉には、つい見落としてしまいそうになる「幸せのヒント」がちりばめられている。
ありきたりな普通の日々こそ、かけがえのない時間
コスメとスイーツが大好きで、恋をしたら全力投球。そんな等身大の日常を送っていた女性が、21才のときに宣告されたのは「ステージIVの大腸がん」だった。過酷な闘病に直面しながら、彼女はこの世界にひとつの命と、日記を遺していた──。
2021年12月に発売された、遠藤和さんの手記『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』(小学館刊)。和さんの飾らない言葉が共感を呼んだ同書が文庫化され、6月5日に発売される。和さんの夫・将一さんが思いを明かす。
「改めて、一生懸命に生きた遠藤和という人の存在を1人でも多くの人に知ってほしいなと思っています。なんでもない、ありきたりな普通の日々こそ、かけがえのない時間なのだということを、和の日記を通じて感じていただければうれしいですね」
和さんは1997年、青森市生まれ。地元の飲食店で働いていた。将一さんは6才年上で、札幌市生まれ。大学卒業後、建築系の大手企業に就職し、2013年に青森に配属された。
ふたりが巡り会ったのは2016年10月。和さんの猛アタックが実り、出会ってから10日後に交際が始まった。
順調な交際の傍ら、和さんには病魔が静かに忍び寄っていた。がん宣告を受けたのは、2018年のこと。大腸がんは40代以上の世代で患者数が増える病気で、和さんは20代になったばかりだった。当初診察した医師も、まさか若い女性が大腸がんだとは想定していなかったようだ。
《2018年9月5日(水)
遠藤さんが病室に来てくれた。言わないで別れようかなとも思ったけれど、ちゃんと自分から伝えた。
「私、がんだったんだよね。たぶんこれから大変になるから、今後のことよく考えてみてほしい」
驚いた顔だった。そうだよね、彼女ががんなんて、びっくりするよね。》
未来に向かって誰もが希望を抱く時期に、突如として“命”と向き合うことになった和さんを支えたのが、彼女が日記で“遠藤さん”と綴る将一さんだった。
がん宣告を理由に別れを切り出した和さんに対して、将一さんの心は揺るがなかった。
「迷いはなかったです。絶対に別れない。和にはつらいことを忘れられるまで幸せと楽しい気持ちで上書きするから、と伝えました」(将一さん)