女性と同じように男性にも更年期があります。夫やパートナーがイライラしたり、無気力なことが増えるなど、「以前と違う」と感じるところがあったら、更年期を疑ってもいいかもしれません。男性の更年期にはどんな変化があるのか知っておきましょう。
婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんに、増加傾向にある男性の更年期について教えてもらいました。
* * *
増えている男性の更年期の原因
閉経期に急激にホルモンが減少する女性と比べて、男性ホルモンが減る速度はゆるやか。心身への影響も少ないため、もともと男性には更年期はありませんでした。
ストレスにより増えている男性の更年期障害
しかし、激しいストレスにさらされがちな現代では、不眠や疲労感など更年期の症状を訴える男性が増えています。男性の更年期障害は、医学的には“LOH(ロー)症候群”と呼ばれ、だいたい40代後半~60歳に起こります。
原因はテストステロンの低下
その原因は、女性と同じようにホルモンが急激に減少すること。加齢やストレスで男性ホルモン・テストステロンの分泌が低下すると、さまざまな不調が引き起こされます。
男性の更年期の症状とは?EDになるケースも
男性の更年期症状は、疲れやすさ、めまい、肩こり、発汗、動悸や息切れなど、女性の更年期のようにさまざまな症状が起こります。
うつ病と似た症状に注意
また、仕事への意欲が落ちたり、イライラや不安感、記憶力・集中力の低下、不眠症になることも。これらの症状はうつ病と似ており、男性の場合は女性ほど更年期が一般的ではないため、精神疾患と勘違いされがちです。もしも中高年の夫やパートナーにこのような症状があらわれたら、男性の更年期の可能性も考えられます。
EDは男性更年期障害の特徴のひとつ
やる気低下と同時に性欲が下がるのが、男性更年期の特徴でもあります。男性ホルモンは性欲ホルモンでもあるので、性欲の低下や勃起不全が起こりがちなのです。そういった症状が出ている場合は、うつ病なのか男性更年期なのか見極める必要があるので専門医を受診することをおすすめします。
男性更年期障害「LOH(ロー)症候群」の治療と予防法
男性更年期障害「LOH(ロー)症候群」の場合もクリニックで治療する方法があります。ただ、女性の場合は婦人科がありますが、男性は病院で何科に行けばいいのか迷うかもしれません。
メンズヘルス外来か泌尿器科へ
男性の更年期障害は、最近増えつつあるメンズヘルス外来か、泌尿器科を受診するように夫やパートナーにアドバイスしてください。
診察では、血液検査で男性ホルモン値を測定し、テストステロン数値が低い場合に「LOH症候群」と判断されます。
ホルモン補充療法、漢方薬
男性の更年期症状には、注射や塗り薬でテストステロンを補う、ホルモン補充療法が効果的です。
また、女性の更年期症状に漢方薬が使われるように、男性の更年期症状にも漢方治療を行うことがあります。ストレスホルモンを減らす働きがある補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、男性ホルモンの一種を増やす八味地黄丸(はちみじおうがん)などが使われています。
運動習慣とリフレッシュが予防に役立つ
男性の更年期障害の予防には筋トレがおすすめです。筋肉を鍛えることは、テストステロンの分泌を促すことにつながるのです。また、趣味を持つ、友人を作るなど好奇心を刺激することにもテストステロンの低下を防ぐ効果がありますよ。
これらは女性の更年期症状の軽減にも効果的なので、パートナーと一緒に運動をしたり、習い事をはじめたりしてみてはどうでしょう。毎日が楽しくなって、健康的な生活を送ることもでき、一石二鳥かもしれません。
教えてくれたのは:成城松村クリニック院長・松村圭子さん
まつむら・けいこ。1969年生まれ。日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。若い女性の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ「ルナルナ」の顧問医。西洋医学のほか、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。https://www.seijo-keikoclub.com/
構成/森冬生