健康・医療

メンタルの不調に使われる漢方は? 薬剤師が不調タイプ別に漢方薬を解説

イライラや憂鬱な気持ちが続く、気力がわかないといったメンタルの不調はいち早く解決したいものです。

頬杖をつく女性
メンタルの不調の改善に効果が期待できる漢方薬をタイプ別に紹介!
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そんなメンタルの不調に、漢方薬で改善を目指すという方法もあります。「西洋薬によくみられる眠気が少ない」「ナチュラルな効き目」「副作用のリスクが少ない」などの理由から、心療内科や精神科でも漢方薬が使われていることも多いです。

薬剤師の清水みゆきさんによると、体質や原因など、タイプに応じた漢方薬を用いることで、メンタルの不調の予防や緩和が期待できるそうです。
メンタルの不調が起こる原因を知り、自分の不調のタイプを確認して、自分に合った漢方薬を見つけましょう。

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メンタルの不調の症状と原因

強いストレスや長く続くストレス、そして過労などが、自律神経の働きを乱して情緒を不安定にし、メンタル不調を引き起こします。

メンタルの不調を引き起こすストレスの原因としては、主に以下の3つがあげられます。

・人間関係などのさまざまな悩みによる精神的な要因
・病気やホルモンバランスの乱れなどの身体的な要因
・温度や騒音などの環境的な要因


メンタルの不調は、人によって感じ方がさまざまで、以下のような訴えがあります。

・イライラする
・不安感や焦りが強い
・気分が落ち込む
・意欲がない、やる気がでない

その他にも、メンタルの不調により、以下のような体の症状を引き起こすことがあります。

・食欲不振
・不眠
・頭痛
・肩こり
・吐き気

さまざまな生薬
タイプ別の漢方薬でメンタルの不調を改善!
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漢方では、五臓の「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」が特にメンタルと関係しており、ストレスの影響を受けやすいと考えられています。

「肝」は自律神経系を調節する働きがあります。「心」は意識や思考に関わっています。「脾」は消化吸収を担い、「肝」や「心」にエネルギーの補給をしています。ストレスなどにより「肝」「心」「脾」の働きが悪くなると、その部位に呼応する不調を引き起こすと考えられているのです。漢方薬はこれらの働きを正常な状態に整えます。

また漢方薬はイライラや神経症、精神不安、不眠などの症状に対して、医薬品として効果と安全性が認められていますが、自然の生薬から作られているため、西洋薬よりも比較的、副作用が少ないといわれていることも特徴です。

メンタル不調のタイプをチェック

体質やタイプに合った漢方薬を用いることで、より効果があらわれやすくなります。タイプに応じた漢方薬を選ぶために、チェックリストでメンタル不調のタイプを確認してみましょう。

「肝」の異常タイプ

以下のチェック項目に当てはまる人は、自律神経系を調節する「肝」の働きが低下した「肝の異常タイプ」の可能性があります。

・イライラする
・肩こりや頭痛がある
・目が充血しやすい
・足がつりやすい

「肝」の働きが低下すると「気(き)」の巡りが悪くなり、自律神経が乱れることから、イライラや怒りっぽいといったメンタルの不調が生じます。

「心」の異常タイプ

以下のチェック項目に当てはまる人は、「血(けつ)」の循環や意識をコントロールする「心」の働きが低下した「心の異常タイプ」の可能性があります。

・不安感が強い

・寝付きが悪い
・夢をよくみる

・動悸や息切れがする

「心」が正常に働かないと心が不安定になり、不安感や不眠といったメンタルの不調が生じやすくなります。また、「心」の異常は血の循環の乱れにつながり、動悸や息切れを引き起こします。

「脾」の異常タイプ

以下のチェック項目に当てはまる人は、栄養を消化吸収して体に運ぶ「脾」(胃腸)の働きが低下した「脾の異常タイプ」の可能性があります。

・思い悩むことが多い
・食欲がない
・疲れやすい
・下痢をしやすい

「脾」の働きが低下すると、エネルギーが不足して元気がなくなります。そのため、気力が出ない、くよくよと思い悩むといったメンタルの不調が起きやすくなります。

マグカップに入ったお茶
メンタルの不調を感じたら、漢方薬を試してみては?
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タイプに合った漢方薬でメンタルの不調を改善

漢方の考えでは、病名にこだわらず、不調の原因がどこにあるのかに着目して漢方薬を選びます。下記の3つの漢方薬から、タイプに合ったものを選びましょう。

「肝」の異常タイプにおすすめの漢方薬「四逆散」

四逆散(しぎゃくさん)は、気の巡りを改善し、「肝」のはたらきをよくする漢方薬です。自律神経系のバランスを調節をするので、イライラや怒りっぽいといったメンタル不調の改善に役立ちます。

「心」の異常タイプにおすすめの漢方薬「酸棗仁湯」

酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、「心」の働きを補うことで精神を落ち着かせる漢方薬です。そのため、不安感や不眠などのメンタル不調の改善が期待できます。

「脾」の異常タイプにおすすめの漢方薬「加味帰脾湯」

加味帰脾湯(かみきひとう)は、「脾」の働きをよくして足りない「血」を増やし、「気」の巡りを整えることで精神を安定させる漢方薬です。エネルギーを補充するため、気力がない、くよくよと思い悩むようなメンタル不調の改善に役立ちます。

→「加味帰脾湯」について詳しく知る

漢方薬で体と心の不調を改善

漢方薬は心と体のバランスを正常に整えてくれるため、心の不調、体の不調のどちらも解消できる可能性があります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれた人:薬剤師・清水みゆきさん

清水みゆきさんの写真
薬剤師の清水みゆきさん
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しみず・みゆき。漢方薬・生薬認定薬剤師、JAMHA認定ハーバルセラピスト。製薬企業の研究所勤務を経て、漢方調剤薬局に8年間勤務。漢方薬の服薬指導、食事や養生法での健康づくりのサポート、ハーブティーやアロマの相談販売に従事。現在も漢方調剤薬局で薬剤師として働きながら、「ママのためのやさしい漢方」のサイト運営や漢方やハーブの通信講座やセミナー講師としても活動中。今までの経験を活かし、AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」ができる「あんしん漢方」などで、健康相談や薬膳や漢方に関する情報発信をしている。https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/

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