
「なんだか最近、顔つきが老けてきた…」。年齢とともに、そう感じるかたも多いかもしれません。でも、加齢によるものだけではなく、日々の食生活によって見た目年齢を加速させてしまっているとしたらーー。今回は、体重78kgから1年間で24kgのダイエットに成功し、その後トータルダイエットカウンセラーとして活動、今はヘルスフードサイエンス研究家の大西ひとみさんに、脱・老け顔を目指す食生活について教えてもらいました。
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老化の原因となるAGEって何?
最近は、食べ物の選択によって見た目の老化が早まることをご存知のかたも増えてきたと思います。老化と言えば「酸化」を浮かべる人が多いと思いますが、皆さんは「AGE」についてご存知でしょうか? AGEとは日本語で「終末糖化産物」といい、たんぱく質が糖化してできた、老化の原因になる物質のことをいいます。

糖化とはたんぱく質と糖質が一緒に加熱されることによって、たんぱく質が糖に結びつくことを言います。その状態をわかりやすく例えると、豚肉(たんぱく質)をパン粉(糖質)に絡めて油で揚げると、衣が茶色く焦げますが、まさにその状態をイメージしてください。糖化によって体内でAGEが作られ、肉体がどんどん焦げていき、これが肌のシミやシワの原因になると言われています。
抗酸化システムがうまく機能しなくなる
紫外線や食品添加物、喫煙などにより生成される活性酸素によって酸化することも老化を進める原因のひとつと言われているのですが、私たちの体の中にはこの酸化から身を守るための抗酸化システムが存在しています。しかし、この抗酸化システムの大半の酵素がたんぱく質からできているため、そのたんぱく質が糖化によってAGEになってしまうことで抗酸化システムがうまく働けなくなり、身体がどんどん錆びる上に焦げてしまいます。
AGEがさらに恐ろしいのは、人間の筋肉や臓器はたんぱく質でできているので、ダンボールのなかに腐ったりんごが一個あるとその周りも腐敗していくように、AGE化したたんぱく質の周りから浸食していき、健康なたんぱく質までもAGE化していくということ。つまり最終的には身体全体がAGE化してしまう可能性が出てくると、専門家も警鐘を鳴らしています。
AGEによる老化を促進させうる食べ物とは?
けれどもAGEは、食生活に気をつけるだけでも随分とその生成を予防することができます。

まず、血糖値が急激に上がりやすい食品や、たんぱく質と糖質を一緒に加熱した食品(衣のついた揚げ物など)、あとは果糖の多い食材、特に異性果糖(ガムシロップやフルーツジュースなど)の摂取のしすぎに気を付けること。これらはとくに糖化を促進させやすい食品であるとされています。
アガベシロップに要注意
もうひとつ、気をつけてほしい食材は、アガベシロップです。アガベシロップは血糖値をほとんど上げないという理由で、一時期ダイエットに効果的とかなりブームになった甘味料です。しかし、アガベシロップはほとんど果糖でできています。
ですからダイエットによいと思って甘味料として頻繁に摂取している人は、上記の理由から、逆に老化を進めてしまっている可能性があります。もしダイエットのことを考えた甘味料を摂取するのであれば、キシリトールやラカントなどをおすすめします。
AGEによる糖化を防ぐ食べ物&調理法
糖化を起こしにくい食生活は、血糖値が上がりにくい食材をできるだけ選んで摂取すること、炭水化物だらけの食事をしないこと、炭水化物類は摂るならできるだけ低GI値のものを選ぶこと、食物繊維の豊富な野菜などを摂取するよう意識することで目指すことができます。

トマトジュースやお酢など酸性の成分をプラス
また、調理法を変えるだけでも随分違ってきます。AGEが体内で作られにくい調理法は順番に「生→蒸す→茹でる→煮る→炒める→焼く→揚げる」となります。揚げる、焼く、炒めるなどの調理法で料理を摂取する場合は、トマトジュースや、お酢、レモン汁などの酸性の成分を加えるとAGEを減らすことができると言われています。また、糖化を抑える食材としてビタミンC、緑茶、しょうが、シナモンなどもよいとされています。
私が普段から意識していること
私は普段から加工食品を買うときは必ず原材料をチェックし、必要以上の糖質が含まれていないかを確認すると同時に、野菜をたくさん摂取することを意識しています。また、アミノ酸スコア100の卵なども毎日食べるようにしています。AGEの生成を促進してしまいがちな食生活を一切排除することは不可能で、私もつい揚げ物をたくさん食べたり、果糖たっぷりのフルーツジュースを飲むことももちろんあります。
「知ること」で普段から注意できる
けれども、身体に悪影響を及ぼす可能性があるとわかっていて摂取するのと、何も知らずに摂取するのとでは大きな差が出ると思っています。なぜなら、それらが身体に及ぼす影響をわかっていれば、それを補うために何かをしたり摂取したりすることができるからです。AGEを体内に作ってしまう原因を知っていれば、例えば揚げ物を食べるときに酢の物を食べる選択ができます。
小さなことですが、食べることは一生続けていくこと。日々の小さな選択が若さだけでなく健康にも大きな影響を及ぼします。
◆教えてくれたのは:ヘルスフードサイエンス研究家・大西ひとみさん

9年間、米ロサンゼルスでパーソナルトレーナーとして活動後帰国。トータルダイエットカウンセラーとして7冊の本を出版、ダイエット商品・食品の商品開発の監修などをはじめさまざまなメディアで活動。2017年に自身のギルトフリースイーツブランド「h+diet(エイチプラスダイエット)」(https://h-plusdiet.com/)を立ち上げ、現在は東京・武蔵小山で『h+diet laboratory』をオープン。野菜を使い、甘味料・人工甘味料不使用、グルテンフリーの「栄養学から考えるオーガニックスイーツ」を販売、他社の商品監修などに携わるなどヘルスフードサイエンス研究家としても活動。