女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第40回は、遭遇したという「猪(いのしし)」について。
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山の家で庭の枝切りを頑張っていた。野薔薇が栗の木や山椒の木などに巻きついて、大変な事になっていたので、トゲと格闘しながらチョコチョコ切っていた。野薔薇は赤い実がなっていて、ドライで花瓶にさしても可愛いのだが、とにかくトゲが可愛くない!
それに他の木に巻きつく力強さがすごい。逞しい木だ。 案の定、私はやり過ぎて腰が痛くなるし、右手首を曲げると痛いし、左手の人差し指の関節は前回の草刈りから治らずに腫れたままだ。 さすがに病院に行こうかな~と考えながらも、のばしのばしにしてしまっている。
もう今日はここまでにしておこうと家に入り、温かい紅茶でも飲もうと思っていたら、 庭のほうで夫が大きな声で何か叫んでいる。 彼が大きな声を出すのは珍しいから、何があったのだろうと見に行くと.…ナント!
思っていた猪よりもはるかに大きい!速い!
猪が二頭、庭の右から左を走っている。というか、駆け抜けている。大きい。私が思っていた猪よりもはるかに大きい。そして速い!
びっくりしすぎて口が開いたままになってしまった。確かに庭に大きな足跡があるねとは話していた。夜、庭のライトがセンサーで光るのだが、それに驚いたのか動物がうう~と怒っていたと母が
言っていた。
でも今まで猪に出会ったことはなかった。こんなところにいるんだとびっくりした。ご近所の方も、見たことはないという。
猪って夜行性ではなかったのか? まだ夕方にもなっていないくらいの時間だった。それにしても危なかった。ついさっきまで私は猪が駆け抜けた辺りの枝を切っていた。枝を切ったから走りやすくなったのだろうか?
今までキジやリスは時々見かけたが、猪がいるとは…さすがに恐い。本来、猪は臆病だと聞くが、猪突猛進されたら、どうしていいかわからない。枝切りはまだ終わっていないし…。音楽とかかけていたら大丈夫なのだろうか?
自然が豊かだから、動物や鳥もいる。そういえばキツツキもよく庭の木をつついているが、先日のキツツキは面白かった。 だいたいは、トントントントンという感じでつついているのだが、そのときはトトトトトトトトとものすごくテンポが早くて思わず笑ってしまった。
キツツキならいいんだけど…とにかく、猪に突進されなくてよかった~。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。出演映画『Dr.コトー診療所現在』が公開中。