女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第42回は、寧々さんが久しぶりにやったという「乗馬」について。
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ものすごく久しぶりに乗馬をした。ちゃんと乗ったのは、小学生以来な気がする。どれくらい昔なんだ。40年以上前じゃないか…。可愛い馬を前にして、まず「そうだった~意外と馬って高さがあるんだった」と、乗る前から不安になった。この高さ、私は跨げるのかと思ったが、教えてくださる方は「気合いで頑張ってください~」と明るい声でおっしゃる。
ええい! 気合いを入れると、落ちそうになりながらも何とか頑張って跨ぐ事は出来た。座ってみると、やはり高さがありちょっと怖い。とりあえず右や左の曲がり方、手綱の持ち方、止まり方などを教えてもらい、まずは歩く。
最初に馬をちょっと蹴るのも怖い。暴走したらどうしようと思ったが、優しくポンと蹴ったら進んでくれた。「右に曲がって~まっすぐ進んで~はい、止まって~」という指示に従いながら頑張るが、私が乗った馬はせっかちなのか、すぐに前を歩いている馬にくっついてしまう。手綱を引いてブレーキをかけるのだが、そのうち馬も「もう~どれだけ下手なのさ! という顔で振り向いて私の顔を見たと思ったらヒヒーンとブルブル顔を振ってイヤイヤをする。焦りながら「ごめんね~ごめんね~」と馬に 何度も謝っていたら、「あんまり謝っちゃダメです。馬が好きにしてもいいのねと思っちゃいますから」と言われた。そうか~と思いつつもすぐにまた謝ってしまう私。
「なるようになれ」と思いながら小走りに
「はい、次はゆっくりめに駆け足~」と言われ、焦る私は、「ええ~私に出来ますか?」と尋ねるが「大丈夫です」と言われる。ええい~もうなるようになれと思いながら小走りに。 ワオ!思ったよりも速い!ヘルメットは私の締めかたがちょっと緩かったのか、パカパカするし、私が下手過ぎて振動がすごくて、馬のリズムにうまく合わずに難しい。二周くらい走ると馬ではなく私が全力疾走してるみたいに息が切れてきた。もう苦しくなってきて、思わず「すみません~止まってもいいですか~」と恥ずかしげもなく大声で叫ぶ。
「いいですよ~」と言われ、とりあえず止まる。ぜえ~ぜえ~と呼吸が荒い私と対照的に馬は涼しげな顔をしている。しかも私が前傾姿勢になってしまうからか、内股が鞍にぶつかってものすごく痛い。夫も以前に乗馬の練習を3鞍してお尻の皮が剥けた~と言っていたがこういうことかと今さらながら知る。
そんな中、「はい、もう一度駆け足~」という声が聞こえる。ひえ~と思いながら再び走り出す。 内股はどんどん痛くなる。ついに私はギブアップした。「すみません~もう降りてもいいですか?」 と。
練習は「1鞍45分」だったが、私は30分も持たなかった。 内股は紫色に腫れていた。馬は可愛いが人生でもう馬に乗る事はないかもしれない。でも、良い経験が出来た。その日は夜10時には寝て朝起きたら9時だった。疲れて爆睡でした!
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。出演映画『Dr.コトー診療所現在』が公開中。