女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第13回は、寧々さん自身も驚いたという「大失敗」について。
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日々生活していると、ちょこちょこ色んな失敗をする。
携帯やお財布を忘れて出かけてしまったり…今のところ両方忘れた事はないので、何とか大丈夫ですが…。夕飯作って、「ご飯出来たよ~」と家族に声をかけて、ご飯をよそおうと炊飯器をあけたら炊き忘れていたり。麻婆豆腐を作っていたら、途中でお豆腐を買い忘れていることに気づいたり。それぐらいは、全然いい方だ。
この間久しぶりに大きな失敗をした。自分でもびっくりした。
仕事に朝早く行くとき、小さなおむすびを作るのだが、時間がなくて二つは食べきれず、一つをカバンの中に入れた。その日は、塩とごまだけのシンプルなおにぎりにした。
最近、仕事現場に持っていくことが多いのがすぐに洗える布バッグ。仕事が終わり帰ってきて、そのバッグの中の物を全部だして、他の物と一緒にバッグを洗濯機に入れた。
洗濯機をあけて固まった…
その間に掃除していると、洗濯終了を知らせる音がした。とにかく干さなきゃと思い、洗濯機をあけたら…。
ご飯粒とごまだらけになった洗濯物が…。固まった。
あああ~やってしまった。そうだ、食べるのを忘れていた。もったいない事をしてしまった…。それもそうだけど、どうしておむすびがバッグに入ってるの? バッグの中のものは全部出したはずなのに、と思ったところで、しょうがない。
深いため息。落ち込む。
とりあえず一つ一つ洗濯物を出して、ご飯粒を取り、ごまを取り、洗濯機を空にした。
すぐに洗い直さなければと思ったのだが、再び洗濯機の中を見て固まった。
我が家の洗濯機は、私が好きなので縦型なのだが、洗濯槽の穴という穴にご飯粒とごまがびっしりつまっていたのだ。
冗談抜きにして、1分ぐらい見つめていたと思う。その間、頭の中はグルグルとこれをどうするか、どうやったらすぐに綺麗になるのか考えていた。
とりあえずリビングに行き、夫に「やっちゃった~」と話す。「ああ~」といいながら苦笑いしている。ん~これは手伝ってくれそうにないぞと思い、あきらめて再び洗濯機の前に。
仕方ない。つまようじを持ってきて、洗濯槽のご飯粒とごまを一粒一粒取るしかない。
あの時ほど洗濯槽の穴の数の多さを恨めしく思った事はない。しかも、縦型なので頭をずっと下にむけているので、そのうちクラクラしてきた。
頑張っては、休み、頑張っては、休み、何とか全部取った時には、疲れ果てていた。
おむすびをごまにしたのが“失敗”だったのだろうか。いや、そこじゃない。「食べ物を粗末にしちゃいけない」――もちろん、わざとじゃないのだが、その言葉をこの日ほど痛感したことはなかった。反省しきりである。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。