女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第52回は、寧々さんが山の家で収穫した「玉ねぎ」について。
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山の家のお隣の畑に遊びに行ったら、たくさんの玉ねぎの葉が! 前回見た時は真っ直ぐ空に向かっていたのに、皆地面に綺麗に倒れている。お隣のYさんに、「これ、もしかして倒したんですか?」と尋ねると、「もう食べ頃だからね~」とおっしゃる。
「え、わかるように一本一本倒したんですか?」とビックリして尋ねると、笑いながら「違うわよ~自然に倒れるのよ!」と教えてくださった。玉ねぎすごい! 食べ頃になると、ちゃんと自分で葉を倒してもう食べ頃です!って教えてくれるんだ。おお~可愛い! なんだか玉ねぎを見る目が変わった気がする。
Yさんが玉ねぎを抜くというので、一緒にやらせてもらう。しかし、根がしっかりしていてなかなか抜けない。モタモタしていると、玉ねぎの葉の根元を持って前後左右に動かしながら、回すと抜けやすいと教えてくださった。葉が切れてしまわないか心配だが、とにかく前後左右に回してみる。お!抜けた! しかし、ものすごい数の玉ねぎだ。時々尻餅つきながらもたくさんの玉ねぎを抜いた。
玉ねぎちゃん達が可愛くて仕方ない
そして、たくさんの玉ねぎを一輪車に乗せて、日陰の別の場所に運ぶ。なにしろ玉ねぎの数が多くて重い。ほんの少しのなだらかな坂も、とにかく気を抜くと玉ねぎが転がってしまう。畑から脱け出すのも一苦労だ。
ちょうどその頃、相撲を題材にしたドラマ『サンクチュアリ』を観ていた私は、これは四股のように腰を落として下半身をしっかりして運ぶしかないと思った。運び終わったら、根を鋏で綺麗に切る。そして同じ大きさぐらいの玉ねぎを四つくらいずつ紐で縛る。そしてそれを二つのセットにして8個の玉ねぎを結ぶ。縛り方も教えていただいた。
色々おしゃべりしながら、途中休憩を入れつつ玉ねぎを結ぶのは楽しい。そして次は、結んだ玉ねぎの葉の部分をカットする。一人では難しいので、葉を真っ直ぐ持つ人と切る人に分かれてやる。
それから棒に玉ねぎをかけていく。玉ねぎが重ならないように少し高さをずらす。玉ねぎ8個をまとめて高いところに吊るすのは、結構重くて重労働だ。何日かかかったが、吊るされた玉ねぎちゃん達が可愛くて仕方ない。「これ、全部で何個くらいあるんですか?」と聞くと、「2000か3000くらいかなあ~」とおっしゃった。
すごい! これからスーパーなどで玉ねぎを見たら、愛しくて仕方ないだろうなと思った。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。出演映画『Dr.コトー診療所現在』が公開中。
衣装協力/ワンピース(ハウス オブ ロータス)、ネックレス・リング(マリハ)