
自称“青春日本代表”──。MIZYU(24才)、RIN(21才)、SUZUKA(21才)、KANON(21才)の4人が上履きとセーラー服姿でパワフルな歌とダンスを披露する「新しい学校のリーダーズ」が話題です。ライターの田中稲さんが、『TikTok上半期トレンド大賞2023』にも輝いた彼女たちの楽曲『オトナブルー』のパフォーマンスをテレビではじめて観た時の衝撃から、その魅力を探ります。
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最近、とても気になっているアーティストがいる。その名は「新しい学校のリーダーズ」。
なんなのだろうか、この4人の持つ瑞々しいパッションは! テレビで『オトナブルー』をはじめて観たとき、「懐かしさを取り入れる匙加減がすごく新しいな!」という非常にややこしい感動で目が釘付けになった。
どこか昭和歌謡風味の楽曲。50代の私でも非常にとっつきやすい。「大人振る背伸びした想い」を“オトナブルー”とするなんて、なんとステキな言葉遊びなのだろう。
とっつきやすいが、パフォーマンスは見たことがない斬新さに溢れている。ハイクオリティーかつヤンチャテイストなダンスからは、地上波モードに擦れていない、令和の軽やかさを感じる。
作詞を見ると、「新しい学校のリーダー達」となっている。振り付けも自分たちでするという。エッ、すごい! 4つのバラバラな個性がガシッと調和しながら、みんなで楽しくはみだしていくイメージ……。このバランス、控えめに言って奇跡。
私も評判の首ヨコヨコダンスを練習してみたが、ただただ「肩が凝っている人のモノマネ」になってしまった。『オトナブルー』を歌いたいがために無理をしてしまった。嗚呼、「若ブルー」……。


出会いはストーリー動画で突然に
彼女たちのデビューは8年前の2015年。「『オトナブルー』がデビュー曲」くらいに勘違いしていた私は、その活動歴の長さにまず驚いた。『オトナブルー』は今年出た曲で、これでブレイクした感じだったのか……と思い直してさらに調べてみたら、なんとそのリリースは3年前の2020年だった。海外では「ATARASHII GAKKO!」名義で活動し、すでに大人気なのだとか。海外公演の動画を見ると、すさまじい盛り上がりであった。
私が彼女らの存在に気付くのが遅かっただけだったか……。いや、ちょっと待て。思い出してみれば、かなり前に動画で見かけたことがあった気がする。
眠れぬ夜が続き、インスタに上がってくるショート動画をウラウラとスクロールしていたら、なんとも躍動感のある動画が偶然出てきた。制服姿の女の子が数人踊っている。メガネの子はツインテールの女の子の髪の毛を自転車かバイクのハンドルのように持ち、エキサイティングな音楽に乗り、右、左、とカーブを運転しているように体を揺らし踊っていたのだ。
カッコいいなあ! と思ったが、何かの拍子で次の動画に切り替わってしまい、オロオロしているうちに見失ってしまった。もう一度観たくて、ダメ元で「ツインテール 運転」で検索したが結果は虚しく、諦めたのであった。
「新しい学校のリーダーズ」でガンガン検索している今は、探さずとも勝手にその動画が上がってくるので、何度も観ている。『Pineapple Kryptonite』という楽曲のリミックス版だった。

リードボーカルSUZUKAの清々しさ
楽曲も素晴らしいが、「新しい学校のリーダーズ」の最たる魅力は、メンバー全員キャラクターが立っているところだろう。
刈り上げのヘアスタイルが印象的なRINさんのダンスはキレッキレで「SPEEDのHITOEさんの娘説」が出たほどである(違うそうだ)。少女マンガのヒロインフェイスを持つKANONさんは、特技が「SUZUKAさんを肩車したままスクワットできる」ことらしい。ギャップ萌え……! MIZYUさんのツインテールは、もはや髪ではなく生命体。どれだけ振り回しても美しくまとまりつつしなやかに動くので見とれてしまう。
そして、リードボーカルのSUZUKAさんのパフォーマンスのなんと奇抜なことか。笑顔を浮かべながら、躊躇なくガニ股ポーズを繰り出す。ときにはスカートをめくり上げ、舌をべろーんと出して見せる。かなり挑発的だ。しかし下品さはない。不思議だ。
この妙な清々しさ、誰かを思い出す——。そうだ、私の大好きな、吉本新喜劇の島田珠代さんと通ずるものを感じる。見たあとおおらかな幸せに包まれるあの感じ。存分に弾けることで、逆に気まずさやいやらしさは打ち消され、上質のコミカルへと昇華するテクニック!
これは誰でも成功できるものではない。SUZUKAさんは人の心を掴む上級者と見た。
なにより4人全員、笑顔がなんとも明るくあどけない。制服姿で常識からはみだしていく、新しい学校のリーダーズ。懐かしさとイマドキと未来感を行き来しながら起こしてくるその風からは、少し忘れていた、アソビと強気のワクワクが生まれ出る。
そして私も「今どきの音楽はわからない」と遠い目になっている暇はないな、と思うのだ。
◆ライター・田中稲

1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka