
立ち上がったり階段をのぼったりするときに、なんとなく感じるひざ痛。セルフケアで痛みを解消したいと考える人もいるのではないでしょうか。そこで、一次的な痛みの緩和や予防ができるセルフケアの方法、食材・漢方薬についてヨガインストラクターの高橋かなこさんに教えてもらいました。
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中高年のひざ痛の原因は?
ひざ痛の原因のひとつに、ひざ関節のクッションである軟骨がすり減る「変形性膝関節症」が挙げられます。
これには、更年期に起こる女性ホルモンの減少や乱れが関わっている可能性があります。女性ホルモンのエストロゲンには、軟骨の材料になるコラーゲン生成を促進する役割があるためです。そのため、ひざ痛は女性に起こりやすいのです。

また、老化や筋力の低下、肥満、O脚・X脚によっても軟骨がすり減り、変形性膝関節症を引き起こすことがあります。
このように、何らかの原因で軟骨がすり減り、関節同士がぶつかり合って炎症を起こすと、痛みが生じます。ひどい場合には激しい痛みを伴うことがあるため、放置せず、ひざに違和感がある場合は整形外科を受診しましょう。
ツボやストレッチでひざ痛を解消する方法
ひざ痛の予防または、通院しながらのケアとして、ツボ押しとヨガストレッチを紹介します。通院中のかたは医師と相談のうえで実践してみてください。
ひざ痛に効くツボ
血流が悪くなったり、筋肉が凝り固まったりすると、発痛物質の滞りやひざ関節の動きの妨げとなり、痛みを悪化させる可能性があるため、血流を改善し筋肉の緊張をほぐすツボ押しをしてみましょう。
ツボ押しは、痛みの根本的な改善法ではありませんが、一時的に痛みを緩和する効果が期待できます。
・膝眼(しつがん)
「膝眼」はひざを曲げたときにできる皿の下のくぼみに位置するツボで、内側が内膝眼、外側が外膝眼です。

ひざを曲げて両手でひざを包み込み、中指で優しく押しながら5秒かけて鼻から息を吸い、ゆっくりと力をぬきながら10秒かけて口から息を吐きましょう。これを5〜6回程度繰り返します。反対の脚も同様に行ってください。
なお、内膝眼はひざの内側の痛みに、外膝眼はひざの外側の痛みに効果があるといわれているので、痛む方を先述した方法で刺激しましょう。
・委中(いちゅう)
ひざの裏側のくぼみの真ん中に位置します。

まずは、いすに座って片脚を伸ばしてください。ひざの裏側を両手で包み込むように添え、左右の中指を重ねて3秒押したら3秒力を抜きましょう。これを5〜6回程度繰り返します。反対の脚も同様に行ってください。可能な限りひざを伸ばしながら行うのがポイントです。
・血海(けっかい)
ひざの皿の内側の上端から親指2本分上に位置するのが「血海」です。

いすに座ってひざを曲げ、親指の腹で押し込むようにして刺激します。30回程度、両脚を同時に刺激しましょう。
ひざ痛に効くヨガストレッチ
ひざ痛を予防する方法として、筋力の低下、肥満、O脚・X脚に効くヨガストレッチを紹介します。家で簡単にできるものばかりなので、スキマ時間に試してみてください。
・「英雄のポーズ2」:筋力の低下が気になる人に
ひざ関節は筋肉によって支えられています。ひざまわりの筋力が低下すると関節が安定しにくくなり、軟骨を消耗しやすくします。ひざまわりの筋肉を鍛えることで、ひざへの負担が軽減できます。

【1】両脚を肩幅より少し大きく開く。
【2】右のつま先は90度外に開き、左のつま先は正面に向ける。
【3】両腕を肩の高さに持ち上げ、右ひざを曲げる。
※右のひざは、かかとの上にくるようにキープします。
【4】骨盤は正面に向けたまま、首は右を向けて右手の中指を見つめる。
通常は立ったまま行うポーズですが、ひざ痛が気になる場合は写真のようにいすを使用して脚への負担を軽減するのもOKです。脚を入れ替えて、反対も同様に行いましょう。
左右10秒ずつを1セットとして、まずは1日1セット行います。慣れてきたら朝晩で2セット実践するとよいでしょう。
・「プランク」:肥満が気になる人に
歩くときに、ひざにかかる負担は体重の約3倍といわれています。そのため、体重が3㎏増えると、ひざへは9㎏の負担が増えるのです。適切な体重を維持し、ひざへの負担を軽減しましょう。

【1】うつ伏せになって、ひじを肩の真下につく。
【2】つま先を立てて、お尻を持ち上げる。
お尻が上がったり下がったりしないように、頭からつま先まで一直線に保ちます。ポイントは「もう限界!」と感じてから5秒耐えることです。まずは1日1回30秒を目標に自分の限界まで挑戦しましょう。
・「骨盤矯正ストレッチ」:O脚・X脚が気になる人に
本来、体重はひざ関節全体で支える必要がありますが、O脚・X脚の人は、体重負荷がひざの内側あるいは外側に集中してしまうため、軟骨を消耗しやすいです。骨盤のゆがみを整えることで、O脚・X脚を緩和することが期待でき、軟骨への負担軽減につながります。

【1】仰向けに寝て、両ひざを立てる。
【2】右足のくるぶしあたりを、左脚のひざよりやや下側につける。
【3】左脚のもも裏に両手をあてて、ひざを胸に引き寄せる。
右のひざが体の内側に入ってこないように最初の位置をキープしてください。肩に力が入らないよう、首をまっすぐに保つのがポイントです。左右30秒ずつを1日1回行いましょう。
ひざ痛を予防する食材
ひざ痛の予防には軟骨の材料となる「コラーゲン」が豊富に含まれる食材を積極的に摂取しましょう。鶏の手羽先や豚の軟骨、魚の皮やアラなどに含まれ、今の季節だと「アブラガレイ」が旬を迎え、えんがわ部分にコラーゲンが豊富です。
また、「ビタミンC」や「鉄分」には、コラーゲンの生成をサポートする働きがあるため、ビタミンCが多く含まれる「レモン」を、えんがわのお刺身に絞りましょう。

鉄分は、秋から冬にかけて旬を迎える大豆やほうれん草に含まれます。主菜に「レモンを添えたえんがわのお刺身」を、汁物に「ほうれん草のお味噌汁」を添えれば、相性ばっちりです。
コラーゲンは年齢や生活習慣によって不足しがちな成分です。ビタミンCや鉄分ともうまく組み合わせながら補っていきましょう。
ひざ痛には漢方薬も役立つ
漢方薬もひざ痛の予防や緩和に役立ちます。
「加齢による体力の衰えを補う」「女性ホルモンの乱れを整える」「水分の循環をよくする」といった働きのある生薬を含む漢方薬を選び、ひざ痛の原因である老化や女性ホルモンの乱れ、肥満などにアプローチします。

ひざ痛の予防・緩和が期待できる漢方薬
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
栄養を補って体を温める漢方薬です。女性ホルモンのバランスを整えたり、水分代謝をよくしてむくみなどを改善したりする効果が期待できます。
・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
「防已」に抗炎症作用があることや、ある実験で階段昇降の改善が見られたことなどから、変形性膝関節症に使用されることもある漢方薬です。水分代謝を上げて、肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、水太りに効果が期待できます。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:ヨガインストラクター・高橋かなこさん

たかはし・かなこ。RYT200(全米ヨガアライアンス認定)修了インストラクター。企業での事務経験から、デスクワークで疲れた部位や崩れた姿勢のためのレッスンを得意とする。自身のダイエット成功経験から、美しい体を作るためには食と思考が大切だと痛感し、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp)などで精力的に情報発信を行っている。