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「向こう岸」を感じさせるLOVE PSYCHEDELICO『Last Smile』の不思議な開放感…20年経った新曲でも健在

KUMI(右)とNAOKIにより1997年に結成(写真は2006年、Getty Images)
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ボーカルKUMIとギターNAOKIの男女2人からなるロックデュオLOVE PSYCHEDELICO。2001年発売の1stアルバム『THE GREATEST HITS』が200万枚を突破するなど、2000年代初頭の音楽シーンで輝きを放ちました。20年以上続くキャリアのなかで、ライターの田中稲さんを虜にしたのは3rdシングル『Last Smile』。英語と日本語を行ったり来たりする歌詞をはじめ、その独自の音楽世界の魅力を田中さんが綴ります。

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私にとって、時々無性に聴きたくなり、聴き出すと別人格が飛び出すという、かなり危険な曲がある。2000年にリリースされたLOVE PSYCHEDELICO(ラブサイケデリコ)の楽曲『Last Smile』である。

初めて聴いた時の衝撃たるや。心の整地されていないゾーンを歩いて迫ってくる足音のような、ジャリジャリとしたギターの音色。ほぼほぼアップダウンがない、呪文のようなメロディー。いきなりドラマチックに訪れる「♪目のま↑ェえで〜ラ〜スマ〜ァァァィ(目の前でLast smile)♪」というサビ! アンニュイだけど力強い、アンビバレントな歌声——。

洋楽なのかと思いきや、英語っぽい日本語がホロホロと聴こえてくる。歌っているのは日本のアーティストのようだ。マジで!? 私は正直、舌を巻くなどして日本語を英語っぽく歌う歌手が苦手なのだが、ラブサイケデリコはむしろ惹かれた。耳にスルリと入り、心臓までストレートに流れ、あとから英語と日本語がジュワッと心に分散していく感じ。

ゾワゾワと胸のあたりがざわめく。ところが聴いた後は、不思議な開放感と爽快感が残る。「なんだこの曲は……!」とオロオロしてしまった。

ボーカルのKUMIさんは帰国子女ということで、英語のネイティブ感はなるほど納得。しかし、あの英語日本語の歌詞は、もはやアメリカとかイギリスとか日本とか、そういう現実世界の類の言葉ではなく、「向こう岸」の公用語だと思っている。それほど本当に不思議な聴き心地。「楽園」「ヘヴン」という言葉に同居する怖さと憧れを、ガツンと体感させてくれるすごい曲だった。

「ジョン・レノン・スーパーライブ2006」の記者会見にて。右から斉藤和義、オノ・ヨーコ、LOVE PSYCHEDELICOの2人(Getty Images)
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全て、まるっとスタイリッシュ

『Last Smile』に大感動した私は、少し我を見失った。「この曲にハマることができた自分は、きっとスタイリッシュ」という、錯覚に陥ってしまったのである。

しかし、カン違いしても仕方がないというもの。楽曲は洗練されているのはもちろん、あのインパクト大の、女性のイラストが描かれたロゴマーク、そして「ラブサイケデリコ」というイカしたバンド名。全てが、まるっとスタイリッシュだった。それにハマった私もスタイリッシュだと思い込んで何が悪いのか。悪いのは若さである(といっても当時すでに30を超えていたが)。

2001年発売の1stアルバム『THE GREATEST HITS』は200万枚を売り上げた
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彼らの音楽を聴くときは別人格になれる気がした。アルバム『THE GREATEST HITS』(2001年)を購入すべく、CDショップで手に取った時、意味もなく髪をかきあげたり、気だるい微笑みを浮かべたりしていた気がする。音楽の感動と陶酔力とは、それほどの威力を持つものである。

この1stアルバムのテーマは「ロックなんて聴かない女の子の部屋のCDの棚にロックのリフが入っているCDを1枚置く」だったそうだ。当時の私は思うつぼ。このテーマをそのまま実行に移していたことになる。くっ、まんまと!

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