血流コントロールのプロである麻酔科医の富永喜代さんは、誰でも簡単にできる「1分間血流アップ体操」考案者で、『血流がすべて』(アスコム)の著者。そんな富永さんは、家庭の主婦(または主夫)は年間540時間、過酷な姿勢をしており、それが血流を滞らせる原因の一つになっているといいます。日常で意識せず行っている悪姿勢にひと工夫することで、不調が改善されるかもしれません。詳しく聞きました。
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年間540時間も行っているNG姿勢
家事によって強いられている過酷な姿勢と富永さんが話すのは、キッチンに立っているときの姿勢です。料理や皿洗いなど、1日平均90分として1か月では45時間、年間540時間にもなります。
「私のクリニックでも『シンクの高さが体に合っていなくて、腰が痛い』『冬場は足元が寒くて、指先が冷えて仕方ない』といった声が絶えません。どちらの症状も血流の更なる低下を招きます」(富永さん・以下同)
さらに、1年間で360時間、「両腕8kgの重さを頭と首で支えながら操作している時間」と富永さんが語る「スマホの使用時間」。ついつい長時間やってしまいがちなあの姿勢も、血流の悪化につながり、肩こり、首こりの原因となっているそうです。
「こうした暮らしの中の生活習慣が、血流を滞らせる原因となるケースは多々あります」
そこで、同じ作業をしながらも、血がよくめぐる姿勢で行うための改善方法を教えてもらいました。
キッチンには踏み台を用意
まず、先に述べたキッチンでの姿勢についての改善方法です。調理や洗い物など基本的に前かがみの姿勢でいることが多いキッチンでは、腰がつっぱり、首はうつむいたまま。その姿勢で5kgもある頭を支え続けることは、肩や首への負担が大きく、こりにつながります。
「こういうときは、踏み台を作りましょう。手近にある電話帳や漫画雑誌でかまいません。2、3冊重ねて、滑り止めにタオルで巻き、キッチンの足元に設置します」
疲れを感じたら、乗せている足を変えましょう。片足を踏み台に乗せて作業することで、腰の負担はかなり軽くなるそうです。しかも、これはプロの料理人も使っているワザだというので、腰の不調を感じている人はぜひ実践してみましょう。もちろん腰痛の予防にも有効です。
洗濯物干しは肩より低い位置で行う
洗濯物を干すとき、干す位置が頭より高い位置にある場合は要注意だと富永さんは話します。
「いったん、腰をかがめてカゴから洗濯物を取り、高い位置の物干し竿に干す。この動作のくり返しは、首と肩、腰に大きな負担をかけます。とくに頭より高い位置へは首を反らせて、腕をあげる動きとなり、この動作が頸部から手に伸びる動脈を圧迫。血流を悪くするおそれがあります」
この動作を毎日くり返していると、次第に腕や肩、肩甲骨周囲の痛みやしびれなどの症状が出てくることがあるそうです。これは「胸郭出口症候群」と呼ばれる病気なのだそうです。
「洗濯物は肩より低い位置で干すこと。それが難しい場合は、事前に洗濯物干しやハンガーにかけ、それから物干し竿につるしましょう」