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《インフルエンザ流行中》冬に流行するウイルス感染症 対策ゆるんでない?改めて注意したいマスク、手洗いなど対策の注意点

マスクをする女性
ウイルス感染症の対策をおさらい!
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咳や鼻水、下痢や嘔吐といった症状に悩まされる感染症。インフルエンザの流行は全国的に続いています。感染症を防ぐためにはまず、しっかりと理解することが大切です。そして、自分が感染しないことで他人への感染させるリスクも減らすことができます。そこで、医師の木村眞樹子さんに、冬に流行する感染症の種類と対策について教えてもらいました。

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冬に流行しやすい感染症と感染経路

感染症には細菌が原因のものと、ウイルスが原因のものがあります。生物に分類される細菌は栄養素があれば自身で細胞分裂を行い増殖できますが、ウイルスは生物と非生物の中間的存在で、生物の細胞に感染しないと増殖できません。

冬場に流行しやすい「インフルエンザ」や「ノロウイルス」、「RSウイルス」と、世界中に猛威を奮った「新型コロナウイルス」は、すべてウイルスが原因の感染症です。これらの具体的な症状と感染経路は以下の通りです。

ウイルスのイメージ画像
ウイルスと細菌の違いって?
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インフルエンザウイルス

咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、物品や手指を介して直接または間接的にウイルスに触れる接触感染によって感染するウイルスです。

1〜3日程度の潜伏期間を経て、のどの痛みや鼻水、咳、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの症状があらわれます。症状は1週間程度で軽快します。

ノロウイルス

接触感染や感染者の糞便や吐物、感染者が口にした食品、ウイルスに汚染された食品などによる経口感染で感染します。

1〜2日程度の潜伏期間を経て、吐き気や嘔吐、下痢、発熱、頭痛、倦怠感などの症状があらわれます。多くは数日程度で自然に軽快しますが、症状が消失した後も3〜7日間程度は感染者の便中にウイルスが排出されるため、2次感染に注意が必要です。

生牡蠣
ウイルスに汚染された食品などによる経口感染が起こるノロウイルス
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RSウイルス

飛沫感染、接触感染で感染します。

4〜6日程度の潜伏期間を経て、発熱や鼻水などの比較的軽い風邪症状が起こり、数日で軽快します。

新型コロナウイルス

飛沫感染、接触感染、エアロゾルと呼ばれる飛沫よりも小さなウイルスを含んだ粒子の吸入が主な感染経路です。

オミクロン株の場合は2〜3日程度の潜伏期間を経て、発熱や頭痛、倦怠感、咳、のどの痛みなどの症状が起こり数日で軽快しますが、倦怠感や脱毛、嗅覚・味覚障害など、さまざまな後遺症が残る場合があります。

なお、新たな変異株であるエリス株は、オミクロン株と概ね同様の症状が報告されています。また、2023年9月に東京でも初めて感染が確認されたピロラ株については、警戒が必要な株としてWHOの監視下に置かれています(2023年9月現在)。

感染予防対策

このような感染症を予防するためには、マスクの選び方やウイルス除去などが有効です。

マスクの選び方:性能

マスクのパッケージの記載内容
パッケージをチェックして機能の確認を!
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飛沫感染対策には不織布マスクが有効です。購入前にパッケージで機能を確認しましょう。ウイルスを防ぐためには、「風邪」や「ウイルス飛沫」などと書いてあるものが適しています。

また、試験項目を確認するのも大切です。

マスクのパッケージに記載されている試験項目
試験項目も重要な情報
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「PFE」は約0.1μm(マイクロメートル)の大きさの粒子をどれだけ遮断できるかを示しています「BFE」はバクテリア(細菌)ろ過効率を示し、約3.0μmの大きさの細菌を含む粒子について、ウイルスろ過効率を示す「VFE」は、約0.1~5.0μmの大きさのウイルスを含む粒子ついて、どれだけ遮断できるかを示しています。

規格値に「≧95%」とある場合は、95%以上あるいはそれと同等のろ過効率があることを示し、この数値が高いほどマスクのフィルター機能は高くなります。

ろ過効率が99%のものもあるため、そのような高性能のフィルターを備えた商品を選ぶとより安心でしょう。

マスクの選び方:形状とサイズ

マスクにはさまざまな形状がありますが、「プリーツ型」は、ヒダを調節することで顔のサイズに合わせやすいのと、会話をしてもズレにくい特徴があります。「立体・ダイヤモンド型」は、口元に空間があるため呼吸がしやすく、口紅などが付着しにくいのが特徴です。ウイルスを防ぐ上で、フィットしていれば形状による差はないので、自分にとって、ストレスが少なく着用できる形状のマスクを選びましょう。

マスクを手に持っている
正しいマスクの選び方を知ろう!
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フィットするサイズは指と定規で測ることができます。親指と人差し指でL字型を作り、親指は耳の付け根の一番高いところに、人差し指は鼻筋の一番上から1cm下のところに当てます。親指と人差し指の間隔がズレないように手を顔から離し、二つの指の間隔を定規などで計測してください。

計測した長さが、9〜11cmの人は子ども用、10.5〜12.5cmの人は小さめ、12〜14.5cmの人はふつう、14cm以上の人は大きめがフィットしやすいサイズです。

消毒・手洗い

経口・接触感染には身の回りのものの消毒と手洗いが有効です。

次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする家庭用漂白剤を、次亜塩素酸ナトリウム濃度が0.05%になるように水で薄めると物品用の消毒液ができます。

一例として、原液濃度が5パーセントから6パーセントの塩素系漂白剤を使用する場合は、500mlの水に対し、5mlの塩素系漂白剤を入れると、0.05%程度の濃度になります。(「次亜塩素酸ナトリウム液の作り方」https://www.city.meguro.tokyo.jp/hokenyobou/kenkoufukushi/iryou/jiaensosannatoriumuekinotukurika.html)この消毒液を使えば、今回紹介したウイルスが付着した物品を除菌することができます。

消毒液を作るときに必要なもの
家庭でできる消毒液の作り方
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注意点として、消毒液を作る際の換気、皮膚に悪影響を及ぼすため手指消毒には使用しない、有害な塩素ガスの発生を防ぐために酸性のものと混ぜない、腐食する可能性があるため金属製品には使用しないことを守りましょう。

手洗いは最低でも、石けんやハンドソープで10秒もみ洗いした後に、流水で15秒すすぐことを2回繰り返すことが推奨されています。

たとえば、ノロウイルスや新型コロナウイルスの場合はこの方法で、手についた残存ウイルスを約0.0001%にまで減らすことができます(厚生労働省「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000645359.pdf)

換気

エアロゾル対策には、自分がいる部屋の窓を開けるのではなく、誰もいない部屋の窓を開けて外の空気を取り込み、徐々に自分がいる部屋の空気と入れ替える「二段階換気」を行いましょう。
ウイルスの活動を抑えるには、室温18℃以上、湿度40%以上を保つことが推奨されているためです(厚生労働省「寒冷な場面における感染防止対策の徹底等について」https://www.mhlw.go.jp/content/000695178.pdf)。この方法であれば、冬場でも室温の著しい低下を防ぐことができます。

感染症を予防する食材

感染症に負けない体を作るには、ウイルスを退治する免疫細胞の主成分となる「たんぱく質」と、ウイルスなどの侵入を防ぐ粘膜の機能維持に関わる「ビタミンA」の両方を含む「鶏卵」を食べましょう。

スクランブルエッグ
たんぱく質とビタミンAが豊富な卵は加熱しすぎない調理法が◎
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ビタミンAは熱にやや弱いため、加熱する場合は、さっと火を通す程度のスクランブルエッグなどがよいでしょう。また、ビタミンAは酸化に弱いため作り置きはせず、調理後はすぐに食べるのがおすすめです。

感染症予防には漢方薬も役立つ

基本的な感染症対策や食事のほかに、漢方薬での体質改善で免疫機能を向上させることも、感染症の予防につながります。

「胃腸の働きをよくして、食事の消化吸収を上げる」「血流をよくして栄養を全身に届ける」「自律神経を整え、ストレスによる疲労を減らしたり、睡眠の質を上げたりする」といった漢方薬が免疫機能の低下をサポートします。

小皿に入った漢方茶
感染症予防に効果が期待できる漢方薬を紹介!
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おすすめの漢方薬

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

胃腸の働きをよくして消化吸収機能を上げ、疲労を回復し、気力を充実させる効果が期待できる漢方薬です。食欲があまりない人や体力が低下している人に向いています。

→補中益気湯について詳しく知る

・加味逍遙散(かみしょうようさん)

血流をよくして不足した栄養を補ったり、自律神経を整えたりする働きのある漢方薬です。疲れやすくイライラしやすい人、冷え・不眠などがある人に向いています。

→加味逍遙散について詳しく知る

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:医師・木村眞樹子さん

医師・木村眞樹子さん
医師・木村眞樹子さん
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きむら・まきこ。医師。医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならない体をつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットを活かしつつ漢方の処方も行う。
また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、オンラインで漢方を購入できる「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで情報発信もしている。

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