春は生活環境や人間関係の変化によるストレスを感じやすい季節で、心身に影響を及ぼす場合がよくあります。「ストレス解消に役立つ栄養素を摂って、体の内側からケアをしましょう」と話す管理栄養士の小原水月さんに、栄養とストレスの関係について教えてもらいました。
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春はストレスを感じやすい季節
春は生活環境や人間関係の変化が起こる人も多いでしょう。よい変化、うれしい変化だとしても、脳は「今までと違う状況」をストレスと感じます。ストレスが重なると脳の負担が大きくなり、脳の視床下部で調整している自律神経の乱れにつながります。
意識と関係なく働き、呼吸や血流、内臓やメンタルなど全身の機能の調整をしているのが自律神経です。
自律神経は心身の活動を活発化させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経の2つでできていますが、そのバランスの乱れが、さまざまな不調の原因となります。近年では、自律神経の乱れによる春の体調不調が「春バテ」と呼ぶばれ、注目が高まっています。
ストレスと栄養の関係性
ストレスによって自律神経の交感神経が優位になると、エネルギー代謝が活性化されて一部の栄養素の消費が激しくなります。その結果、体内の栄養バランスが崩れて全身の器官に栄養が十分に行きわたらなくなり、不調があらわれやすくなるのです。
さらに、栄養不足になるとストレスに対応するホルモンの分泌量が減り、ストレス耐性が低下します。そのため、ストレスに弱くなることで自律神経のバランスが乱れ、栄養が不足し、不調があらわれるという悪循環に陥る可能性があります。
ストレス解消に役立つ栄養素
自律神経のバランスを整えるためには、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを過不足なく摂ることが大切です。そのなかでも、とくにストレス解消に欠かせない栄養素にビタミンB群、ビタミンC、トリプトファンがあります。
ビタミンB群
ストレス解消に役立つ栄養素のひとつは、ビタミンB群です。ビタミンB群とは、ビタミンB1やビタミンB2、ナイアシンなど、8種類のビタミンをまとめた呼び方です。ビタミンB群にはエネルギー代謝を助ける働きがあり、脳のエネルギー供給や、疲労回復に役立ちます。
ビタミンB群を摂るには、豚肉(ビタミンB1)、卵(ビタミンB2)、カツオ(ナイアシン)、バナナ(ビタミンB6)、焼きのり(ビタミンB12)、納豆(パントテン酸)、まいたけ(ビオチン)、ブロッコリー(葉酸)など、幅広い食材を食べる必要があります。
ビタミンB群は1種類よりも複数種類をまとめて摂る方が効果的に働くため、特定の種類を決まった食品から摂取するのではなく、さまざまな食材を組み合わせて摂取しましょう。
ビタミンC
ビタミンCは抗ストレス作用を持つ、コルチゾールというホルモンの合成に欠かせない栄養素ですが、ストレスにさらされるとビタミンC自体も急激に消費されます。また、ビタミンC不足になると倦怠感や不安感が強まったり、傷の治りが遅くなったりします。
ビタミンCを多く含む食材は野菜や果物です。ビタミンCは収穫直後から減り続けるので、鮮度の高い野菜や果物を選ぶようにしましょう。
また、摂取したビタミンCのうち、体に吸収されず余った分は尿として排出されるため体内にためておけません。そのため、食後のデザートを果物にしたり、新鮮な野菜や果物をジュースやスムージーにしたりして毎日摂取するのが理想的です。
トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸の一種です。体内で合成できないため、継続的に食事から摂らなければなりません。トリプトファンは、脳内の情報伝達物質で、寝つきをよくしたり、精神を安定させたりする働きがあるセロトニンの材料になります。
トリプトファンを含む食材は肉、魚、卵、乳製品、大豆製品、ナッツ類などです。たとえば、鮭フレークやツナ缶をサラダに混ぜたり、きなこを和え物に使ったりすることで日々の食事のなかでトリプトファンを摂りやすくなります。