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《春バテに注意》“体の内側”からケア!ストレス解消に役立つ栄養素と春の食材を管理栄養士が解説

項垂れる女性
ストレスを感じやすい春。春バテを防ぐ方法は?(Ph/photoAC)
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春は生活環境や人間関係の変化によるストレスを感じやすい季節で、心身に影響を及ぼす場合がよくあります。「ストレス解消に役立つ栄養素を摂って、体の内側からケアをしましょう」と話す管理栄養士の小原水月さんに、栄養とストレスの関係について教えてもらいました。

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春はストレスを感じやすい季節

春は生活環境や人間関係の変化が起こる人も多いでしょう。よい変化、うれしい変化だとしても、脳は「今までと違う状況」をストレスと感じます。ストレスが重なると脳の負担が大きくなり、脳の視床下部で調整している自律神経の乱れにつながります。

桜
春は自律神経が乱れやすい季節(Ph/photoAC)
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意識と関係なく働き、呼吸や血流、内臓やメンタルなど全身の機能の調整をしているのが自律神経です。

自律神経は心身の活動を活発化させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経の2つでできていますが、そのバランスの乱れが、さまざまな不調の原因となります。近年では、自律神経の乱れによる春の体調不調が「春バテ」と呼ぶばれ、注目が高まっています。

ストレスと栄養の関係性

ストレスによって自律神経の交感神経が優位になると、エネルギー代謝が活性化されて一部の栄養素の消費が激しくなります。その結果、体内の栄養バランスが崩れて全身の器官に栄養が十分に行きわたらなくなり、不調があらわれやすくなるのです。

さらに、栄養不足になるとストレスに対応するホルモンの分泌量が減り、ストレス耐性が低下します。そのため、ストレスに弱くなることで自律神経のバランスが乱れ、栄養が不足し、不調があらわれるという悪循環に陥る可能性があります。

ストレス解消に役立つ栄養素

自律神経のバランスを整えるためには、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを過不足なく摂ることが大切です。そのなかでも、とくにストレス解消に欠かせない栄養素にビタミンB群、ビタミンC、トリプトファンがあります。

サラダ
ストレス解消にはビタミンB群、ビタミンC、トリプトファンが有効(Ph/photoAC)
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ビタミンB群

ストレス解消に役立つ栄養素のひとつは、ビタミンB群です。ビタミンB群とは、ビタミンB1やビタミンB2、ナイアシンなど、8種類のビタミンをまとめた呼び方です。ビタミンB群にはエネルギー代謝を助ける働きがあり、脳のエネルギー供給や、疲労回復に役立ちます。

ビタミンB群を摂るには、豚肉(ビタミンB1)、卵(ビタミンB2)、カツオ(ナイアシン)、バナナ(ビタミンB6)、焼きのり(ビタミンB12)、納豆(パントテン酸)、まいたけ(ビオチン)、ブロッコリー(葉酸)など、幅広い食材を食べる必要があります。

ビタミンB群は1種類よりも複数種類をまとめて摂る方が効果的に働くため、特定の種類を決まった食品から摂取するのではなく、さまざまな食材を組み合わせて摂取しましょう。

ビタミンC

ビタミンCは抗ストレス作用を持つ、コルチゾールというホルモンの合成に欠かせない栄養素ですが、ストレスにさらされるとビタミンC自体も急激に消費されます。また、ビタミンC不足になると倦怠感や不安感が強まったり、傷の治りが遅くなったりします。

ビタミンCを多く含む食材は野菜や果物です。ビタミンCは収穫直後から減り続けるので、鮮度の高い野菜や果物を選ぶようにしましょう。

青葉
ビタミンCを効率的に摂るには、鮮度の高い野菜や果物を選んで(Ph/photoAC)
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また、摂取したビタミンCのうち、体に吸収されず余った分は尿として排出されるため体内にためておけません。そのため、食後のデザートを果物にしたり、新鮮な野菜や果物をジュースやスムージーにしたりして毎日摂取するのが理想的です。

トリプトファン

トリプトファンは必須アミノ酸の一種です。体内で合成できないため、継続的に食事から摂らなければなりません。トリプトファンは、脳内の情報伝達物質で、寝つきをよくしたり、精神を安定させたりする働きがあるセロトニンの材料になります。

トリプトファンを含む食材は肉、魚、卵、乳製品、大豆製品、ナッツ類などです。たとえば、鮭フレークやツナ缶をサラダに混ぜたり、きなこを和え物に使ったりすることで日々の食事のなかでトリプトファンを摂りやすくなります。

ツナの和え物
トリプトファンを含む食材を食事に取り入れる工夫をしてみて(Ph/photoAC)
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ストレスによる暴飲暴食はNG

ストレスを感じると食欲が増したり、過食気味になったりする場合もあります。それは、満腹感を感じさせるセロトニンの働きを抑える作用をもつ、ノルアドレナリンというホルモンがストレスによって分泌されるからです。

食事を楽しむこと自体はよいのですが、日常的に食欲をコントロールできず暴飲暴食をしてしまうと、エネルギー(カロリー)の過剰摂取や栄養バランスの乱れなど、健康面でのリスクがあります。

ストレスによる暴飲暴食を防ぐためには、食べること以外のストレス発散法をいくつか見つけておくのがいいでしょう。散歩やウォーキングなどの軽い運動、読書や裁縫などの趣味、音楽鑑賞やアロマなど、ひとつのことに没頭できるものがあると、ストレスがおさまりやすくなります。

読書をする女性
食べること以外のストレス解消方法をもっておくのが◎(Ph/photoAC)
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ストレス解消には漢方薬も役立つ

ストレスに悩んでいる場合は、漢方薬をのむのもひとつの選択肢です。ストレスを解消して不調を改善したい場合には「ホルモンバランスや自律神経の乱れを整える」「鎮静作用で心を穏やかにする」といった漢方薬を選びます。

試験管に入った生薬
ストレス解消に効果が期待できる漢方薬2つ(Ph/photoAC)
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ストレス解消におすすめの漢方薬2つ

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

精神不安に加えて動悸や不眠などの症状がある人におすすめの漢方薬です。体にこもった熱を冷ますことで神経の高ぶりを鎮めて自律神経を整える効果があり、ストレスによる精神症状、高血圧などに用いられます。

→柴胡加竜骨牡蛎湯について詳しく知る

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

気分がふさいで、のどに引っかかったような違和感がある人におすすめの漢方薬です。喉や胸部に滞ったエネルギーを取り去り、精神の緊張を和らげます。神経症、不眠症、神経性胃炎、咳など幅広い適応があります。

→半夏厚朴湯について詳しく知る

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は毎日のみ続けるだけなので習慣化しやすいのが特徴で、食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

小原水月さんの写真
管理栄養士の小原水月さん
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おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。

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