
春は、花粉による鼻や目のトラブルが注目されがちですが、髪のダメージや頭皮の炎症にも注意が必要です。春になって、髪のパサつきや傷みが気になるようになったと感じる場合、花粉が関係していることも。そこで、薬剤師の山形ゆかりさんに、花粉による髪トラブルを防ぐ春のヘアケア方法や食事、漢方薬を教えてもらいました。
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花粉が髪トラブルの原因に
静電気によって、花粉は髪に引き寄せられやすい傾向があります。花粉が髪に付着すると、傷みや乾燥を引き起こすからです。
髪は目や鼻などに比べて花粉対策を見落としがちなため、知らず知らずのうちに花粉が多く付着し、ごわつきやパサつき、まとまらないなどの髪トラブルの原因となります。

また、花粉症の人が花粉を頭皮に付着させたままにすると、花粉皮膚炎による炎症やかゆみなどが起こる可能性があります。さらに、健康な髪の毛の育成が妨げられ、薄毛や抜け毛といったトラブルにもつながりやすくなります。
春のヘアケア方法
春の髪トラブル対策には、花粉を髪につけないようにすることが大切です。
ついた花粉はしっかり落とすこと、そして、髪に花粉がつかないようにするケアを実践しましょう。
ブラッシングや洗髪で花粉を落とす
シャンプー前にまず、静電気が起きにくい天然素材や静電気防止加工のヘアブラシでブラッシングをします。
その後、37〜39℃ほどのお湯で髪や頭皮を十分に予洗いしてから、手のひらで泡立てたシャンプーを使って1〜2分程度洗髪します。シャンプーの3倍の時間をかけてしっかりすすぐのが、髪や頭皮に花粉を残さないコツです。

髪や頭皮の保湿をする
しっとりタイプのシャンプーや頭皮用美容液、洗い流さないトリートメントなどを利用して、髪や頭皮の保湿をしましょう。
髪が乾燥していると、静電気が発生しやすく、花粉を引き寄せる原因になります。また、頭皮が乾燥すると花粉の刺激を受けやすくなり、炎症が起こりやすくなります。
洗い流さないトリートメントは、スプレー、ミルク、オイルの順で使うのが効果的です。スプレーやミルクは水分補給、オイルは乾燥防止効果が期待できます。自分の髪の状態を見ながら、複数のアイテムを組み合わせるのがおすすめです。

頭皮用美容液は、お風呂あがりの洗い流さないトリートメントの前に使いましょう。次に紹介する頭皮マッサージと併用すると、より効果が高まります。
頭皮マッサージを行う
頭皮マッサージを行うと、血行が促進され、健康な髪に育ちやすくなります。
花王株式会社ヘアケア研究所の「地肌マッサージの頭皮への作用」(曽我 元、森田康治、新井賢「地肌マッサージの頭皮への作用」花王株式会社ヘアケア研究所https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/48/2/48_97/_pdf)では、約3分間のセルフマッサージを行うと、即時的な血行促進作用があると解説しています。

指先で頭皮全体をもみほぐしたり頭皮マッサージグッズを使用したりして、1日1回など頭皮に負担がかからない頻度で頭皮マッサージを行いましょう。なお、マッサージをするときに爪を立てると、頭皮が傷つく可能性があります。指を寝かせ、指の腹でマッサージをしましょう。
髪トラブルの予防・改善に役立つ食材
髪トラブルの予防・改善に摂りたい栄養素は、「たんぱく質」と「ビタミンC」です。
髪の毛の主成分はケラチンというたんぱく質のため、健康な髪を作るにはたんぱく質が欠かせません。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」たんぱく質https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf)では、成人女性はたんぱく質を1日50gほど摂ることが推奨されています。
1日3食、1食につきご飯やパンなどの主食と、たんぱく質が豊富な肉類や魚介類、乳製品、たまご、大豆製品などを使用した主菜や副菜を1品補うことで1日の摂取目安量を満たせるでしょう。

頭皮の健康維持に有効なビタミンCは、コラーゲンや鉄分の吸収をサポートし、美しい髪を作るのにも役立ちます。
ビタミンCを多く含む食品は、果汁入りアセロラジュースやキウイフルーツ、赤ピーマンやブロッコリーです。野菜や果物をよく食べる人はビタミンCが不足する心配はほとんどありませんが、食生活が偏っている場合は上記の食品を意識して摂りましょう。
髪トラブルの改善には漢方薬も役立つ
髪トラブルには、髪や頭皮の状態の根本改善を目指す漢方薬も役立ちます。花粉による髪トラブルを改善するには、外側からのケアに加えて健康な髪を育てることも大切です。そのため髪トラブルには「血流をよくして頭皮や髪の毛を作る細胞に栄養を届ける」といった作用のある漢方薬を選びます。

髪の悩みに役立つ漢方薬
・人参養栄湯(にんじんようえいとう)
消化・吸収の機能をよくして血流を促し、髪や髪の毛を作る細胞へ栄養を届けます。血色が悪く、疲労や倦怠感を感じる人に用いる漢方薬です。
・四物湯(しもつとう)
栄養を補い巡りをよくすることで、乾燥した頭皮へ栄養を行き渡らせます。皮膚が乾燥し、色つやの悪い人に用いる漢方薬です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。