ペット・動物

愛犬のいびきはかわいくても油断禁物!病気が隠れているケースも 獣医師が注意点を解説

寝る犬
愛犬のいびきはかわいくても油断禁物!病気が隠れているケースも (Ph/イメージマート)
写真5枚

愛犬や愛猫の寝姿は、飼い主さんにとって愛らしいもの。いつまででも見ていられますよね。寝相が悪いのもおならをするのもご愛敬。ただし、いびきとなると、かわいいとばかりは言っていられないようです。獣医師の内山莉音さんに解説してもらいました。

肥満の犬や短頭種の大いびきは要注意

フスー……ブブー……。部屋の片隅から奇妙な物音が聞こえると思ったら、愛犬のいびきだった――。犬を飼っている家庭では、たまにこんなことが起こります。人間よりは高め、小さめの音だったりするものの、立派ないびき。思わず笑ってしまいますが、飼い主さんとしては健康上の問題がないかどうか、注意して様子を見ることも必要だと、内山さんは言います。

「犬は結構いびきをかく子がいます。鼻や喉などの空気の通り道がなんらかの理由で狭くなることで音がする。人間と同じですね」(内山さん・以下同)

犬のいびきの原因 としては、就寝している間に筋肉がゆるんで気道が狭くなったため、肥満で首回りにも脂肪がついて気道が狭くなったため、パグやフレンチブルドッグといった鼻の短い犬種(短頭種)で呼吸状態が悪くなったため、などが考えられるそうです。

寝る犬
パグやフレンチブルドッグといった鼻の短い犬種(短頭種)で呼吸状態が悪くなったため(Ph/イメージマート)
写真5枚

「筋肉がゆるんで一時的に気道が狭まる分には、ただのいびきなので心配いりません。問題なのは、肥満で気管が狭窄している場合や、短頭種で気管虚脱などの病気になった場合。いびきが普段より大きくなってそれが続いたり、起きて安静にしているときもガーガーと呼吸音が目立ったりするようなら、動物病院を受診したほうがいいですね」

短頭種気道症候群は体重管理と暑さ対策が大事

短頭種で呼吸の通りが悪くなるような病気を総称して、短頭種気道症候群といいます 。加齢などによって喉頭や気管を支える軟骨が弱って喉頭や気管がつぶれてしまったり、咽頭の内側が腫れたり、そもそも気管が十分に形成されなかったり、生まれつき鼻の孔が狭かったり、さまざまな疾患が含まれます。

「ひどくなると、寝ている間に繰り返し呼吸が止まる無呼吸症候群になって、酸欠状態になったり、よく眠れなくなったりします。さらに低酸素状態が続けば、唇が青くなるチアノーゼが出たり、悪くすると失神したりします」

こうなると、動物病院で獣医師に診てもらうほかありません。

犬
動物病院で獣医師に診てもらう(Ph/イメージマート)
写真5枚

「主な治療法は、気道を拡げる外科手術ですね。服薬など内科的な治療では根治させることはできません。ただし、飼い方の工夫で症状を軽減することはできます。具体的には、犬のいる場所、寝る場所が暑くならないようにしっかり温度管理をすること、肥満にならないように体重管理をすることです。これらは病気になったときの症状の緩和だけでなく、予防にもなります」

なお、犬ほど多くはないものの、猫もまれにいびきをかくことがあるようです。やはり鼻の短い猫種で比較的起きやすいのだとか。呼吸器症状は暑いとき、興奮したとき、肥満の場合に出やすいので、犬と同様、体重管理と室温管理を徹底することが大切です。

歯ぎしりは放っておかないで

ペットの寝ているときの様子で、もう一つ注意すべきは歯ぎしり です。奥歯と奥歯がこすり合わされて、ギリギリ、シャリシャリというような音がします。犬や猫は、寝ているときだけでなく、起きているときも無意識に歯ぎしりが出ることがあります。

寝る犬
歯ぎしりは放っておかないで(Ph/イメージマート)
写真5枚

「歯ぎしりや食いしばりは、続けていると歯が摩耗したり欠けたりする可能性がありますし、歯ぎしりをする理由として、歯周病など口内の異常や、精神的なストレスなどが考えられますので、放っておかないほうがいいですね。内臓疾患の一症状というケースもあります。口内を確認したり、体調不良やストレスのサインが他に出ていないか様子を見たりして、心配な兆候があれば獣医師に相談してみましょう」

寝ている犬や猫の体が動くのは……

寝ている間に猫の体がぴくっと動いたり、犬の足がカカカッと動いたりすることがありますが、このような動きは気にしなくていいのでしょうか。

「犬や猫も人間と同じように、一度の眠りのなかでレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すことが分かっています。人間の場合、体は休まって脳は活発に働くレム睡眠のときに夢を見るとされています。犬や猫も夢を見ている可能性はありますね」

人間のように睡眠中にいわゆる“金縛り”にあったり、こむら返りを起こしたり、そういうこととも関係があるのかと思いましたが――。

「それはどうでしょうか。犬や猫で足がつって、起きた後も違和感を引きずっているような例は、あまり聞かないですね。犬や猫も夢を見て、夢の内容に反応して体が動くというほうが、ありそうなことかなと思います」

確かに、犬が「睡眠中にはっきり『ワン!』と言った」「普段は遠吠えなどしない小型犬なのに寝ながら遠吠えした」など、愛犬の寝言らしきものを聞いた飼い主さんは珍しくありません。

「犬や猫は『今こんな夢見てた』と報告してはくれないので、確かなことは分かりようがないですが、飼い主さんと楽しく遊ぶ夢や、仲間とコミュニケーションを取り合う夢を見ているのかもしれませんね」

◆教えてくれたのは:獣医師・内山莉音さん

獣医師・内山莉音さん
獣医師・内山莉音さん
写真5枚

獣医師。日本獣医生命科学大学卒業(獣医内科学研究室)。動物病院を経て、アニコム損害保険(株)に勤務。現在もアニコムグループの動物病院で臨床に携わる。

取材・文/赤坂麻実

●犬の4頭に1頭が皮膚病? 犬が自分の身体を噛んだり舐めたりしたら…飼い主が注意すべき疾患の種類と対策は?

●《犬の「目の病気」》結膜炎、白内障、角膜炎 予防や治療法、病状が進んだときに飼い主がやるべきことは?獣医師が解説

関連キーワード