
暑くなる夏は体の不調が何かと起こりがち。片頭痛や緊張性頭痛も夏に悩まされるケースが多いという。そこで薬剤師の山形ゆかりさんに、頭痛が起こる夏特有の原因をふまえて、予防・解消に役立つ食事や漢方薬について教えてもらった。
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夏に頭痛が起きる原因
夏特有の気候や冷房による冷えは、頭痛を引き起こす原因になります。
夏特有の気候や強い日差し
脳神経のひとつである三叉神経が刺激されることが原因の片頭痛は、ストレスやホルモンバランスの乱れなどの内的要因、夏特有の高温多湿な気候や日差しなど三叉神経を刺激する外的要因で起こります。
さらに、夏の台風や大雨による気圧の変化も頭痛を引き起こす要因のひとつです。低気圧になると自律神経のひとつである交感神経が活発になり、血管が拡張され、三叉神経を圧迫するため、頭痛が起こることがあります。

脱水や熱中症の症状としての頭痛も、夏に起こりやすくなります。気圧などが理由の頭痛と違い、脱水や熱中症は命に関わることもあるので、思い当たることがあれは水分を補給したり、休んだりするなど、頭痛を我慢せずに対策をしましょう。
冷房による冷え
緊張性頭痛は、頭全体、もしくは後ろ側に圧迫感や締め付け感のある鈍痛が特徴で、主に血行不良によって起こる頭痛です。冷房が効いた室内で過ごすことで体が冷えると、肩や首などの筋肉が収縮して血流が悪くなるため、緊張性頭痛が起こりやすくなります。
冷房の効いた室内と蒸し暑い外との気温差による、自律神経の乱れも頭痛の原因のひとつです。気温差が激しい環境を行き来することで体温調整をする自律神経へ負担がかかります。血管の拡張・収縮をして血流をコントロールする役割を担っている自律神経のバランスが乱れことで血行不良が起こると、頭痛を引き起こすことがあります。
夏の頭痛の予防・解消法
これらの夏特有の頭痛を予防・解消する方法を知って、対策をしましょう。
日差しや暑さによる刺激を防ぐ
刺激による頭痛を防ぐには、日差しが強く気温が高い9〜15時の外出を避け、できるだけ朝夕の涼しい時間帯に出かけるのが理想的ですが、それが難しい場合は、帽子やサングラス、日傘などで日差しをガードしましょう。日差しを防ぐことで体感温度も下がり、暑さによる刺激を和らげることにもつながります。

冷えによる血行不良を防ぐ
血行不良による頭痛を招かないよう、体を冷やしすぎないことを意識しましょう。
体の負担が少ない理想の室温は28℃ほどといわれています。実際の室温や湿度、窓からの日差しなどの状況に合わせて冷房の設定温度を調整する、エアコンの自動運転機能を利用するなどの方法で、体を冷やしすぎない快適な室温を保つようにしましょう。
冷たい空気は下に、暖かい空気は上にたまりやすいため、涼しさを感じるまでに時間がかかることがあります。そのようなときに冷房を強めると、部屋の冷やしすぎにつながります。サーキュレーターや扇風機で冷気を循環させるなど、室温のムラを減らすことも有効です。
自分で冷房の温度を調整できない外出先では、カーディガンやストール、ひざ掛けなどを利用するといいでしょう。

冷たいものを飲むと体が内側から冷えるので、できれば常温や温かい飲みものを選びましょう。
夏の頭痛解消に役立つ食材
夏の頭痛解消には、「マグネシウム」と「ビタミンB2」を多く含む食材がおすすめです。
マグネシウムには血管の緊張を和らげる効果があり、血行不良の改善が期待できます。また、頭痛には細胞内でのエネルギー生成に関わるミトコンドリアの機能に問題が生じていることが関係していると考えられています。エネルギーの生産や細胞の再生を助ける働きをするビタミンB2を摂取することで、ミトコンドリアの機能をサポートし、頭痛の頻度や時間の減少が期待できるでしょう。
夏に旬を迎える食材であれば、マグネシウムはさやいんげんやみょうがに、ビタミンB2はモロヘイヤや大葉、とうもろこしなどに多く含まれています。

これらのマグネシウムやビタミンB2が豊富な食材は、夏に食べる機会が増えるそうめんやそばなどの冷たい麺類と合わせやすいため、薬味にしたり、付け合わせのてんぷらにしたりして積極的に食べましょう。
なお、上記の食材のなかでも、とうもろこしは鮮度が落ちやすいので、栄養が減ったり、味が落ちたりするのを防ぐために、早めにゆでたり蒸したりして保存しましょう。
夏の頭痛解消には漢方薬も役立つ
夏の頭痛には、「水分の循環をよくして、血行を改善し頭痛を解消する」「体を温めて冷えを取り除く」といった作用のある漢方薬も役立ちます。

おすすめの漢方薬
・五苓散(ごれいさん)
水分代謝をよくすることで体にたまった余分な水分を排出するとともに、気圧の変動による血管の拡張を抑制します。頭痛やむくみ、吐き気などに用いられる漢方薬です。
・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
体内で滞った水分を排出して冷えを取り除き、体を温めて頭痛を防ぎます。習慣的な頭痛や吐き気を伴う偏頭痛などに用いられる漢方薬です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。