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《市販薬・処方薬の「副作用」最新情報》厚労省管轄の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」が公開したものをリスト化

薬には重い副作用があるケースも(写真/PIXTA)
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「症状がつらい」「元気になりたい」──そんな一心で人々は薬に頼る。たしかに、医学の進歩により、多くの病気が薬で治るようになった。しかし、その裏で重篤な事態が起きていることも知っておきたい。「まさかの事態」を防ぎ、あなたの身を守る総力リストを紹介する。

薬の副作用で「陸で溺れているような」状況になったケース

猛暑が続く8月上旬、千葉県在住の主婦・Aさん(53才)はのどのリンパ周辺に痛みを感じた。夏風邪も流行っているのでクリニックにかかって薬の処方を受けたが、それが悪夢の始まりだった。

薬の副作用で重篤な事態を引き起こす可能性がある(写真/PIXTA)
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「引っ越して以来、近所にかかりつけ医がいなかったのでネットで見て評判のよさそうな内科を受診しました。医師によれば診断が難しく、“リンパ節炎かもしれないし、ひょっとしたら甲状腺の病気かもしれない。

がんの可能性もありますが、いったんいちばん強い抗生物質を出すので1週間様子を見てみましょう”と、1日1回服用することになりました。

すると翌朝、いきなり強い息苦しさと動悸が襲ってきました。懸命に呼吸しても苦しく、陸で溺れているような感じで冷や汗が止まりません。同時に、部屋が狭くなって壁に押しつぶされるような恐怖感も押し寄せました」(Aさん・以下同)

経験したことのない不可解な症状に強い不安を覚えたが、医師から「がんかもしれない」と告げられたショックの影響かもしれないと様子を見ることに。

「とはいえ、また呼吸ができなくなるのではないかと食事どころか水を飲むことさえ怖くなり、強い不安も出て、うつ病のような心理状態が続きました」

弱り果てたAさんがふたたび医師のもとを訪ねると、あっけらかんとした様子で「ああ、薬の副作用ですね。合わない人もいるんです」と言われたという。

「調べると重大な副作用に『呼吸困難』とありました。その頃にはのどの痛みはほぼ消えていたので薬はやめることになり、徐々に息苦しさや動悸、精神状態も改善しました。こんなにひどい副作用があるなら、事前に説明してほしかったと憤っています」

病気を治すはずの薬だが、その副作用に苦しむ人は少なからずいる。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが言う。

「薬の副作用は多岐にわたるうえ、きちんと把握していない医師も少なくない。どんな副作用がどの程度体に出るかは患者さんによって千差万別。ある人にとってはまったく影響がない薬でも、別の人がのめば重篤な事態を引き起こす可能性は充分にあります」

医薬品医療機器総合機構が公開する「患者副作用報告」

8月中旬、小林製薬のサプリメント「紅麹」の死亡例がさらに11件あったことが明らかになり合計で87例になった。サプリよりもさらに体にダイレクトに作用する薬においては、副作用によって同様の“最悪のケース”が起こりうるという。

「薬は薬効が強ければそのぶん副作用も強くなるうえ、症状が出ても服用をやめる以外に手立てがない。いちばんはあらかじめ副作用を知っておき、もし、そのような症状が出たらただちに中断することです」(長澤さん)

その際の一助となるのが、医薬品の副作用による健康被害救済を担う、厚生労働省管轄の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)が、医薬品を使用し副作用を体感した患者からの報告を集約し、ウェブ上で公開している「患者副作用報告」だ。

ホームページには、市販の風邪薬から心臓やてんかんの処方薬まであらゆる薬が実名で挙げられ、「関節痛」「アナフィラキシーショック」など具体的な症状が出た人の性別や年代もはっきりと記載されている。この「リスト」について、薬剤師でオールアバウトガイドの三上彰貴子さんはこう評価する。

「実際に服用している患者側から副作用の報告ができ、それを確認できるシステムがあることで、医師を含めた医療従事者が気づかないような“副作用かもしれない”状態を早めに認知し、早期のうちに注意を促すことにつながります。被害が広がる前に対策する重要な機能を担っているといえるでしょう」

本誌・女性セブンは今回、最新の1年間で副作用が報告された薬をリストとしてまとめた。

“ダイエット漢方”で足のけいれんや麻痺

リストの中にはドラッグストアで見慣れた薬の名前も少なくない。

特に風邪をひいたときに多くの人が手にする「総合感冒剤」について、新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんはこう警鐘を鳴らす。

薬によって副作用が強いものがある(写真/PIXTA)
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「総合感冒剤はさまざまな症状に効くように、多くの成分が配合されています。つまり、のむ人によっては必要がない成分まで入っており、それだけ副作用の可能性が高まるわけです。薬局で風邪薬を買うなら、熱なら解熱剤、咳なら咳止めという具合にいちばんつらい症状の成分だけが入った商品を選ぶのがいい」

長澤さんは「コデイン」という成分に注意すべしと警鐘を鳴らす。

「総合感冒剤で呼吸困難になったという報告がありますが、これは脳にある『咳中枢』を抑える作用を持つコデインが効きすぎた可能性が考えられる。酸素が取り込めなければ重篤な状態を引き起こす可能性は大いにあり得ます」

副作用が少ないというイメージで漢方薬をのむという人もいるが、甘くみてはいけない。Xやインスタグラムで“ダイエット漢方”として話題となった「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」は長期服用などで低カリウム血症を起こし、足のけいれんや麻痺などの副作用が報告されている。

「漢方薬で肝障害を起こし、入院する人もいます。だるい、あくびがよく出る、むくむ、痰が絡まない咳がよく出るなどの異変が出たらすぐに薬剤師に相談してください」(三上さん)

市販薬以上に多くの副作用が報告されているのが、処方薬だ。掲載のリストには服用している人が多い薬や副作用が多数報告されているものを中心に抜粋したが、その中でも長澤さんが注目したのは多くの副作用が報告されている解熱鎮痛消炎剤の「ロキソプロフェンナトリウム水和物」だった。

「中でも血圧を上げる副作用が厄介。健康診断などで高血圧だと指摘されて降圧剤が処方されていても、実は原因が常用しているロキソプロフェンである場合も少なくない。『多汗症』『悪心』などの副作用は、アセチルコリンという物質が自律神経に働く作用を抑える『抗コリン作用』というものの現れです。年齢によっても自律神経の働きが弱まるので、これらの薬は高齢になると不調が起きやすくなります」

血圧を下げる利尿剤や糖尿病治療薬など生活習慣病の薬もさまざまな副作用が報告されている。特にコレステロール値を下げる高脂血症治療薬には気がかりな副作用が多く見られた。三上さんが言う。

薬によっては高齢になると不調が起きやすくなる(写真/PIXTA)
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「『〜スタチン製剤』がつくスタチン系、『〜フィブラート製剤』とつくフィブラート系、『エゼチミブ』などリストにも名前のある高脂血症治療薬は、筋細胞が融解・壊死する横紋筋融解症という副作用に注意が必要です。

運動や重労働をしていないのに筋肉痛を感じたり、尿が茶色くなった場合には、すぐに医師や薬剤師に相談してください。放置すると起き上がれず歩行困難になったり腎機能も悪化させるなどして、手遅れにもなりかねません」

種類・報告例が多い精神科の薬

生活習慣病の薬とともに種類・報告例が多かったのは精神科の薬だ。

「その中でも報告例が多い『リスペリドン』は幻覚やせん妄を軽減させる第二世代の抗精神病薬で、SDAと呼ばれるグループに属します。老人性の神経症などでも処方されることが多い。セロトニンやドーパミンなど脳内伝達物質を遮断する薬なので、意識レベルや注意力はどうしても低下します」(長澤さん)

脳に作用する薬は副作用も強く、また気がつきにくい。服用には慎重になるべきだろう。

「今回のリストに入っていませんが、抗認知症薬も副作用が強く、気をつけるべき薬の1つです。脳を活性化する薬ですが、活性化しすぎて夜に眠れなくなったり、不穏状態になる。そのうえ認知症にはほとんど効かないどころか、現場の感覚ではかえって症状を悪化させると感じます。それを裏付けるエビデンスもたくさん出ており、海外では保険適用から外すと決めた国も出ています」(岡田さん・以下同)

岡田さんは、リストを見ながら薬の取捨選択を行ってほしいとアドバイスする。

「このリストは症例ごとでも公開されており、〈副作用発生後の状況〉についても報告されています。たとえば20代男性が催眠剤の一種『アルプラゾラム』の副作用として離脱症候群などになったと記載されていますが、この例では『後遺症あり』となっている。

多くが『回復』あるいは『軽快』となっている中、後遺症が残ったり『死亡』となっているものもあるので、注意して見た方がいいでしょう」

どうしても高齢になるとのむ薬が増えるが、本当に必要なのか見極めは必要だ。

「5剤以上薬をのんでいると副作用が出やすいというデータがあるうえ、のみ合わせで新たな副作用が生じたり薬の副作用が別の病気だと誤認され、さらに薬が出る『処方カスケード』が起きる可能性が高まる。減薬したい場合、医師や薬剤師などに相談してからにしてください」(長澤さん)

冒頭のAさんのように、副作用があっても報告していない人や、副作用そのものを見過ごしてしまう人は少なくない。リストは氷山の一角と捉え、どんな薬にも副作用があることを胸に留めたい。

一般的な市販薬で副作用が報告されている
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出典/独立行政法人医薬品医療機器総合機構「患者副作用報告の状況」(’2003年4月1日〜’2004年3月31日)
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出典/独立行政法人医薬品医療機器総合機構「患者副作用報告の状況」(’2023年4月1日〜’2024年3月31日)
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※女性セブン2024年9月5日号

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