ダーウィンが「生きた化石」と呼んだと言われるいちょう。約1億5千万年前のジュラ紀から唯一現存する植物とされ、いちょうの実の銀杏(ぎんなん)には多くの栄養素が含まれている。「銀杏は昔から薬用としても使われてきた食材で、栄養素がたっぷり。しかし、食べ過ぎると中毒症状を起こすこともあります」と話すのは、野菜ソムリエプロの福島玲子さん。銀杏の詳しい栄養素と、気をつけるべきことなどの豆知識を教えてもらった。
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銀杏の優れた栄養素、風邪予防にぴったり
古くから食用だけでなく薬用としても親しまれてきた銀杏。漢方では収れん作用があるといわれ、体内の余分な水分や老廃物を排出する働きがあり、下痢などに効果が期待できるといわれてきました。銀杏は栄養素をたっぷり含んでいます。
季節の変わり目にぴったりな銀杏の栄養素
銀杏は糖質が多いのが特徴です。中国では古くから、即効性のあるスタミナ食としても利用されてきたといわれます。
また、ビタミンCもたっぷりで、秋から冬にかけての風邪予防にぴったりです。ビタミンCはコラーゲンの生成にも関わっており、皮膚や粘膜の健康維持にも役立ちます。さらに抗酸化作用によって、アンチエイジング効果も期待できます。
疲労回復効果のあるビタミンB1も豊富。脳の中枢神経や手足などの末梢神経の機能を正常に保つ働きがあります。疲労回復だけでなく、食欲不振、イライラの解消などにも役立ちます。
感染予防や免疫力アップ効果も!
ほかにも、感染予防や抗酸化作用の働きがあるβ−カロテンも多く、体の中でビタミンAに変換され、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きが期待できます。
免疫力を高め、善玉コレステロールを増やすパントテン酸もたっぷり。肝臓の老廃物の排泄や筋肉の働きを高めるカリウムも含まれ、むくみ解消や予防に効果を発揮します。
さらに、マグネシウム、リン、鉄などのミネラルや、でんぷんも多く含まれています。
銀杏の豆知識、適正量を知って中毒を防ぐ
最後に、銀杏の豆知識を2つお話しします。ついつい何個も食べたくなってしまいますが、気を付けてほしい“銀杏中毒”と、いちょうの木から落ちた銀杏の独特のニオイについて解説します。
食べ過ぎ注意!“銀杏中毒”とは?
銀杏はやみつきになる味ですが、食べ過ぎるとめまいや嘔吐、場合によってはけいれんなどの症状が起こるといわれており、特に小さなお子さんは要注意です。
この症状は、銀杏に含まれるメチルピリドキシンという物質によるもの。メチルピリドキシンには、脳の神経の伝達を助けるビタミンB6の活性をじゃまする働きがあるため、神経伝達物質のバランスが崩れて中毒症状が現れるそうです。
銀杏を食べるときは、大人は6〜7粒、小さな子どもは2粒までにしましょう。
食べるときに銀杏がくさくないのはなぜ?
銀杏といえば、強烈なニオイを連想する人も多いでしょう。この原因は、種皮の果肉部分に含まれる、酪酸とエナント酸という成分によるものだといわれています。
このニオイは、いちょうの木の生存戦略で、受粉の手伝いをする昆虫を引き付けるためだと考えられています。銀杏を食べるときは、ニオイの原因となる果肉部分が取り除かれているので、おいしくいただくことができるんです。
◆教えてくれたのは:野菜ソムリエプロ・福島玲子さん
ふくしま・れいこ。野菜ソムリエプロのほか、アスリートフードマイスター2級、ジュニア食育マイスター、食の検定1級、ベジフルカッティングスペシャリスト、エコクッキングナビゲーターなど多数の資格を持ち、日本野菜ソムリエ協会創立 20 周年記念事業『野菜ソムリエ名鑑 vol.1』に掲載されている。現在は、“野菜や果物から健康に”との考えを大切に講演・セミナー講師、イベント・セミナー運営サポート、コラム、料理教室、レシピ開発や監修・ジュニアアスリートの栄養指導・など、多岐にわたって活動中。https://ryufrei.com/
構成/イワイユウ