寝たきりリスクに影響する骨密度の問題。まだまだ先と思いがちだが、骨量が減少し始めるのは女性ホルモンの分泌が低下する40代というから、むしろ身近な問題だ。今すぐ、骨の健康を保つべく、骨密度を上げる「食事と運動」に注目した。
骨密度を維持するにはとにかく食事と運動を!
東京大学医学部附属病院病院長の田中栄さんとゆりクリニック院長の矢吹有里さんは、ともに「骨密度を維持する方法は、食事と運動につきる」と断言する。
「カルシウムの多い食品を摂取するのは当然ですが、バランスが大事。カルシウムは体に吸収されにくいので、腸からの吸収を高めるビタミンD、Kをあわせて摂る必要がある。そして、コラーゲンを作るためにはたんぱく質もしっかり摂ってください。一方、ハムや炭酸飲料などリンの多い食品はカルシウムを溶かすので、摂りすぎ注意です」(田中さん)
また、日光に当たるのも、骨にとっては効果的だ。
「皮膚でビタミンDが作られるので、数分でも日に当たるのはよいことですが、紫外線はシミやしわの原因になるのが難点。その際は、日に当たっても問題のない手のひらで日光浴を」(矢吹さん・以下同)
田中さんによると、日光浴の際に日焼け止めのUVクリームを塗ってしまうと、ビタミンDが遮断されて残念ながら効果がないという。
そして、骨の強化に不可欠なのは、運動だ。
「骨は刺激を与えると強くなる性質があります。特に、脚からがいちばん重力が伝わるので、ウオーキングや階段の上り下りなど、日常で積極的に脚を動かすようにしてください。
少しハードに動けるなら、なわとびやエアロビクスなどのジャンプ運動がおすすめ。筋力が衰えているかたは無理をせず、壁につかまった状態でかかとを上げ下げする運動でもOK。1日のうち何度かに分けて、合計50回行うといいといわれています」
筋トレは骨へ刺激も与えられるため一石二鳥だそう。
骨粗しょう症になってしまったら?
もし罹患した場合、自力で骨密度を上げるのは困難。その際の治療法にはどんなものがあるのか?
「いまは治療薬がたくさん出てきて、それぞれ効果は高いといわれています。大きく分けると、骨の吸収を抑える薬(飲み薬または注射)と、新しく骨を作る薬(注射のみ)の2種。前者の方が種類は豊富ですが、後者の方が強い効果があります」(田中さん・以下同)
両方の薬を一度に使用したら、骨密度はより早く増えるのだろうか?
「双方の効果を殺してしまうので逆効果です。まずは新しい骨を作り、ある程度できたところで吸収抑制薬か、カルシウムの沈着を促進するビタミンDを摂取するといいでしょう」
◆教えてくれたのは:整形外科医・矢吹有里さん
女性のための整形外科ゆりクリニック(東京都港区)院長。東京都済生会中央病院整形外科医長を経て現職。雪印メグミルクによる「骨太な未来プロジェクト」アドバイザーも務める。
◆教えてくれたのは:整形外科医・田中 栄さん
東京大学医学部附属病院病院長。東京大学医学部整形外科助手、講師、准教授、教授を歴任し、2023年より現職。日本整形外科学会専門医・代議員、日本骨粗鬆症学会理事、日本骨代謝学会監事ほか。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2024年10月17日号