健康・医療

体に「いいあぶら」と「悪いあぶら」の違いとは? リスクを避ける摂り方のコツとカギとなるポリフェノールと酢について医師が解説

揚げ物を作っている
体にいいあぶらってどんなもの?(写真/Photo AC)
写真7枚

健康診断の数値が悪く、ぽっこりおなかも気になる…それでも食生活の改善や運動が続かない。それは、「中性脂肪・コレステロールが、いますぐに重大な何かの問題になるという実感がないからではないでしょうか」と医師の五藤良将さんはいう。そこで、『血液と体の「あぶら」を落とすスープ』(アスコム)を上梓した五藤さんに、体に悪い「あぶら」のリスクと対策について教えてもらった。

年間に約34万人が心臓や脳の病気で亡くなっている

中性脂肪値は150(mg/dL)以上、悪玉(LDL) コレステロール値は120(mg/dL)以上が健康診断で「要注意」とされる基準だ。とはいえ五藤さんがいうように、この数値を超えたからといって、健康への危機感を感じる人は少ないだろう。

しかし、厚生労働省が発表した2022年の「主な死因の構成割合」によると、コレステロールや中性脂肪などの脂質異常症、肥満などが大きく関わる病気によって、1年間に約34万人がなくなっている。

「日本人の死亡原因の第2位には心疾患(14.8%)、第4位に脳血管疾患(6.8%)が入っています。これらを合わせると、22.6%。つまり、1年で亡くなられている方の5人に1人が、動脈硬化による心臓や脳の病気で亡くなっているのです」(五藤さん・以下同)

一例として、10年以内に心筋梗塞や狭心症を発症する可能性について予測できる日本動脈硬化学会が提供しているサイトで試算してみると、悪玉コレステロール(LDL)・150(mg/dL)、悪玉コレステロール(HDL)・ 30(mg/dL)、中性脂肪値は160(mg/dL)で血圧・血糖値高め、喫煙習慣もあるAさん(60歳男性)の場合、10年間の間に17%の確率で心筋梗塞や狭心症を引き起こす可能性があるという。

血液検査の結果のイメージ
血液検査の結果が悪くても自覚症状がない人が多い(写真/Photo AC)
写真7枚

「私のクリニックに定期検査で訪れる患者さんの血液検査をすると、Aさん程度の数値の人はたくさんいらっしゃいます。恐ろしいのはほとんどの方には自覚症状がないところです」

中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす3つのカギ

健康を意識して中性脂肪や悪玉コレステロールを減らそうと思っても、手間や時間がかかるものは結局続かないだろう。そこで、五藤さんは「あぶら」を落とすスープを考案。体のあぶらを撃退する「よいあぶら」「ポリフェノール」「酢」の3つがカギとなっている。

「よいあぶら」は固まらないあぶら

カロリーが高いため、体に悪いイメージのあるあぶら。しかし、アマニ油やエゴマ油など健康にいいと注目を集めているものもある。その違いは何なのだろうか。

五藤さんは、冷めた肉料理に浮く油のように冷えて固まるのが「悪いあぶら」、オリーブオイルや魚の油のように冷めても固まらないのが「よいあぶら」だと話す。

鍋に入った角煮
冷えて固まるのは悪いあぶら(写真/Photo AC)
写真7枚

これは、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の違いで、固まる油の「飽和脂肪酸」をとりすぎると、中性脂肪や悪玉コレステロールが増える原因になるという。一方、「不飽和脂肪酸」はオメガ3、オメガ6、オメガ9に分類される。

「オメガ3脂肪酸は中性脂肪を低下させる成分として注目されていて、かつおやいわし、さばなどの魚やアマニ油、えごま油、くるみやアーモンドなどのナッツ類に多く含まれています。魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)には、体脂肪を燃やす作用があるという驚きの報告もあります」

また、「エキストラバージンオリーブオイル」などから摂ることができるオメガ9には、HDL(善玉)コレステロールを増やしてLDL(悪玉)コレステロールを減らす働きがある。そのほか、動脈硬化や高血圧の予防、腸の働きを活性化し、便秘の改善にも有効だ。

「ある研究では、1日スプーン3杯程度のエキストラバージンオリーブオイルを摂取することによって、心臓病や心血管疾患による死亡のリスクが30%も減少するという報告もあります」

オリーブオイル
オメガ9はエキストラバージンオリーブオイルなどに含まれている(写真/Photo AC)
写真7枚

しかし、この3つの「不飽和脂肪酸」の中で、サラダ油やごま油などに含まれるオメガ6には注意が必要だという。

「オメガ6脂肪酸は、体内で炎症を促進する物質を作ることに関わるため、とりすぎると体に悪い影響を与える可能性があります。基本的に、普通に生活していれば、オメガ6脂肪酸は十分に摂取できてしまいます。むしろとりすぎになりかねないので、要注意ということなんですね」

よいあぶらを多く含む食品にも飽和脂肪酸やオメガ6脂肪酸が少量ながら含まれている。また、カロリー過多を防ぐためにも摂りすぎには注意が必要だ。

体の酸化を予防する「ポリフェノール」

ストレスや偏った食事、不健康な生活習慣、喫煙、飲酒、加齢、過労、肥満、紫外線、食品添加物などによって、体内の活性酸素が増えすぎると体が「酸化」する現象が起こる。これを放置していると、体はボロボロになり、やはり死にいたる病につながっていく。

「私たちは呼吸することで体内に酸素をとり入れていますが、その酸素の約2%が活性酸素という物質に変化します。活性酸素の本来の役割は、体内に侵入してきた病原菌やウイルスをその強い毒性で退治することです。しかし、増えすぎると、自分の細胞を攻撃する悪者に変貌してしまいます」

活性酸素だけでも体へのダメージがあるというのに、悪玉(LDL)コレステロール・中性脂肪と組み合わさることで、さらに悪影響をおよぼすことがわかっている。

「LDLコレステロールが『悪玉』といわれるのは、増えすぎることで血管の内壁にくっついてたまり、活性酸素と結びついて酸化するからです。酸化することで大きな塊になり、血管をせまく硬くすることで血液の流れを悪くし、動脈硬化を引き起こすと考えられています」

さらに、中性脂肪も多い場合、通常のLDLコレステロールよりも酸化しやすい小型のLDLコレステロールが増えていく。小型のLDLコレステロールが多い人は、心筋梗塞のリスクが3倍になるという研究報告もあるという。

この、活性酸素の攻撃から身を守り、酸化を防ぐ働きをするのがポリフェノールだ。

緑茶
ポリフェノールを多く含む食品を紹介(写真/Photo AC)
写真7枚

「ポリフェノールは、おもに植物に含まれる苦味や色素の成分です。ポリフェノールにはさまざまな健康効果があるといわれていますが、中でもよく知られているのが抗酸化作用です」

ポリフェノールは活性酸素を食べるため、コレステロールの悪玉化を防ぐことができる。すると、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶコレステロールの役割や、血液内に漂っている余分なコレステロールを回収する善玉(HDL)コレステロールが働きをまっとうできるようになる。

「ポリフェノールは5000種類以上もありますが、中でも酸化を防ぐ(抗酸化)作用が強いといわれるのが、次のようなポリフェノールです」

【レスベラトロール】ブドウの皮や赤ワインに含まれる。
【カテキン】緑茶に多く含まれている成分で、とくにエピガロカテキンガレート(EGCG)は、強力な抗酸化作用をもつといわれる。
【ケルセチン】玉ねぎや茶葉、りんごなどに含まれる。
【オレウロペイン】オリーブオイルに含まれる。
【大豆イソフラボン】大豆や大豆製品に含まれる。
【ショウガオール】しょうがに含まれる。
【アントシアニン】ブルーベリーやブラックベリー、チェリーなどに含まれる。
【クルクミン】ウコンに含まれる。
【フェルラ酸】玄米や米ぬかに含まれる。

「酢」の酢酸とクエン酸で脂肪にアプローチ

酢の主成分に酢酸とクエン酸があるが、これらには脂肪の合成を抑え、脂肪燃焼を促進する作用があると五藤さん。つまり、間接的に悪玉コレステロールを減らすことにつながるのだという。

「クエン酸には新陳代謝を促進して疲労物質である乳酸を体内で分解する働きがあるため、疲労回復を助けます」

りんごとりんご酢
お酢の中でもおすすめはりんご酢(写真/Photo AC)
写真7枚

そんな体にうれしい効果が期待できる酢の中でも、五藤さんがおすすめするのが「りんご酢」だ。その理由は、「りんごポリフェノール」という成分を含んでいることにある。

「最近の研究では、長寿遺伝子を活性化させて寿命を延ばす作用があると発表されています。長寿遺伝子とは老化のプロセスに関わる遺伝子のことで、活性化すると老化を遅らせることができるのではないかと考えられています」

◆教えてくれたのは:医師・五藤良将さん

白衣を着てマグカップをもた男性
医師の五藤良将さん
写真7枚

ごとう・よしまさ。医療法人社団五良会理事長。竹内内科小児科医院院長。1978年、 千葉県生まれ。 防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として勤務。その後、津田沼中央総合病院などを経て、2019年9月に竹内内科小児科医院を継承し院長となる。生活習慣病をはじめ、診療は多岐にわたる。https://www.youtube.com/channel/UCpJjtOyjF22s3NY5MEgeRbA

●ダイエット中の夜ご飯におすすめ食材 食べながら痩せるコツを食にも詳しい薬剤師が解説

●「10kg以上痩せる」と注目の「たんタンダイエット」、ダイエット中に推奨する 3つの“たんぱく質おやつ”

関連キーワード