健康・医療

《糖尿病や心血管疾患のリスク上昇》内臓脂肪が体にもたらすリスクと医師が考える“3大注意食品”とは?

問診票と聴診器
脂肪のついた体に起こるリスクとは?(写真/Photo AC)
写真7枚

肥満が健康の敵というのは多くの人が知っていることだろう。では、あぶらがたまった体の中では、どんなことが起こっているのだろうか。『血液と体の「あぶら」を落とすスープ』(アスコム)を上梓した医師の五藤良将さんに、悪いあぶらが体に及ぼす影響について聞いた。さらに、悪いあぶらを増やさないために気をつけたい3大注意食品も教えてもらった。

* * *

内臓脂肪が大病のリスクを高める主な理由3つ

体につく脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪があるが、注意すべきは内臓脂肪だと五藤さんはいう。

「内臓脂肪が必要以上にたまると、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカイン(生理活性物質)のバランスが崩れるからです。そして、さまざまな影響が体に表れるようになります」(五藤さん・以下同)

インスリンの働きが低下

内臓脂肪がたまり、アディポサイトカインのバランスが崩れると、まずインスリンの働きが悪くなる。

「インスリンとは、血液中のブドウ糖をエネルギー源として細胞にとり込むために働くホルモンで、うまく働かなくなると、血液中にブドウ糖があふれるようになります」

これは、いわゆる高血糖状態のことで、長く続くと糖尿病のリスクが高まる。

血糖値を測っている
インスリンの働きが低下すると高血糖状態になり、糖尿病のリスクも(写真/Photo AC)
写真7枚

免疫力の低下

2つめは、 免疫力が弱くなることだ。

「免疫とは、私たちの体を病原菌やウイルスなどから守ってくれる防御システムで、そのプロセスのひとつに『炎症』があります。アディポサイトカインのバランスが崩れると、この炎症が慢性化してしまいます」

炎症が続くと防御システムが疲弊してしまう。すると、免疫力が低下し、心血管疾患や糖尿病のリスクが高くなる。

血中コレステロールの増加

3つめの影響は、あぶらをエネルギーとしてうまく活用できなくなり、使いきれなかった中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールが血液中にあふれ出るようになること。

「血液の中のコレステロールの量は、健康な体であれば一定に保たれています。食事でとったコレステロールが多ければ肝臓などで作る量を減らし、少なければ作る量を増やします」

内臓脂肪がたまりすぎた不健康な体ではLDLコレステロール量を調整できず、必要以上に血管内を流れることが体への悪影響につながる。

「すぐに体に異変が表れるわけではありませんが、中性脂肪が増えてLDLコレステロールが小型化して血管にたまり続けると、やがて動脈硬化、さらには心筋梗塞、脳梗塞を引き起こします」

血圧を測っている
血圧が上昇したり、血栓ができたりする可能性も(写真/Photo AC)
写真7枚

また、アディポサイトカインのバランスが崩れると、「血圧を上昇させるだけでなく、血栓ができやすくなるといわれています」と五藤さんはいう。

糖の摂りすぎによる糖化現象に注意

糖質のとりすぎによる体の「糖化」は、体の中にあるたんぱく質やあぶらに、体内で余った糖が結びつくことで起こる。

「体内で起こる酸化現象を『体がさびる』といいますが、糖化現象を『体がこげる』といいます。どちらも、老化を促進する現象として問題視されています」

糖化とAGEsによる悪影響

肌のハリや弾力がなくなったり、しわやシミができやすくなったりといった、老化の原因にも糖化が関係している。

角砂糖が入ったグラス
糖化現象について解説(写真/Photo AC)
写真7枚

さらに、「糖化」が進行すると 悪玉(LDL) コレステロールの酸化を促進する、AGEs(糖化最終生成物)という物質が作り出される。

「AGEsがたまればたまるほどLDLコレステロールもたまりやすくなり、動脈硬化を進行させることになります。当然、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高くなります。糖化は、アルツハイマー病の発症と進行にも影響を与えるとも考えられています。健康な高齢者と比べると、アルツハイマー病の患者さんの脳には、約3倍ものAGEsが蓄積されていたという報告もあります」

AGEsを除去できる食品は非常に少ない

なお、酸化現象の原因物資である活性酸素を除去する働き(抗酸化作用)が期待できる、ポリフェノールなどの栄養素を含む食品は多い一方で、AGEsを除去するための食品は非常に少ないことも問題だ。

そのため、AGEsを作らない、ためないための対策としては糖化の原因となる糖質を摂り過ぎないことが必要だ。

悪いあぶらや糖質の摂りすぎにつながる「3大注意食品」

好きなものばかり食べたり、偏った食生活を続けていると、知らず知らずのうちに悪いあぶらや糖質を取り過ぎている可能性がある。

そこで、五藤さんからとくに気をつけるべき「3大注意食品」を教えてもらった。

ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉

安く、保存性も高いため、便利な加工肉。たんぱく質も摂ることができるからといって、食べ過ぎは禁物だ。

皿にのった加工肉
加工肉を避けた方がいい理由とは?(写真/Photo AC)
写真7枚

「まず、加工肉には、悪いあぶらである飽和脂肪酸が多く含まれています。そして、腐敗を防いだり、美味しくしたりするための添加物も使用されています。添加物のなかには、発がん性が疑われるものも含まれています。WHOからは、『加工肉を毎日食べた場合、500gごとに大腸がんを患う確率が1%上昇する』という恐ろしい研究結果も報告されています」

果物

健康によいイメージのある果物も、糖質を多く含んでいるため注意が必要。

「果物に含まれる『果糖』という糖質は、ほかの糖質よりも小腸で吸収されるスピードが速く、血糖値を急上昇させるという特性をもちます。その結果、中性脂肪がたまりやすくなります」

果汁100%ジュースや果汁入りの野菜ジュースも、果物に含まれている吸収スピードの速い糖質を大量に摂ることにつながるため、気をつけたい。

さまざまなフルーツ
血糖値を急上昇させる果糖に注意(写真/Photo AC)
写真7枚

健康飲料

「ビタミンやミネラルなどが含まれている健康飲料は、飲むと元気になるような気がしますが、その多くには、おいしくするために糖類や甘味料が添加されています。たしかにビタミンやミネラルなどは補給できますが、同時に、よけいな糖質もとってしまうことになります」

食品を購入する際には栄養成分表示を見て、炭水化物の項目からどのくらいの糖質が含まれているのか確認することが大切だ。五藤さんは、栄養成分表示の確認を習慣づけることをすすめている。

◆教えてくれたのは:医師・五藤良将さん

白衣を着てマグカップをもた男性
医師の五藤良将さん
写真7枚

ごとう・よしまさ。医療法人社団五良会理事長。竹内内科小児科医院院長。1978年、 千葉県生まれ。 防衛医科大学校卒業後、自衛隊医官として勤務。その後、津田沼中央総合病院などを経て、2019年9月に竹内内科小児科医院を継承し院長となる。生活習慣病をはじめ、診療は多岐にわたる。https://www.youtube.com/channel/UCpJjtOyjF22s3NY5MEgeRbA

●《ラーメンのスープが好きな医師が考案》中性脂肪・悪玉コレステロール値の低下に役立つ!簡単でおいしい“あぶらを落とすスープ”の作り方

●体に「いいあぶら」と「悪いあぶら」の違いとは? リスクを避ける摂り方のコツとカギとなるポリフェノールと酢について医師が解説

関連キーワード