冬が近づくにつれ、気になることが増える「体の冷え」。一方、更年期は冷えと、顔などのほてりが同時に起こり、手足は冷えるのに熱で頭はぼーっとしたり汗が吹き出たりして、QOLの低下など影響を及ぼす場合がある。そこで、ヨガインストラクターの高橋かなこさんに、更年期の冷えのぼせの原因や冷えのぼせを意識した温活について教えてもらった。
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更年期によくある「冷えのぼせ」
手足が冷えていても、顔や胸などの上半身がほてったり発汗したりすることを「冷えのぼせ」といいます。
通常、血管を収縮させる交感神経と、弛緩させる副交感神経がバランスを取りながら体温調節を行っていますが、自律神経のバランスが乱れると調節機能がうまく働きません。
すると、心臓から遠い下半身や手足の先などの末端の血流が悪くなる一方で、上半身は血流が多くなります。これにより、冷えのぼせの状態になるのです。
更年期は女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、自律神経のバランスが崩れることが原因で、血管の収縮・拡張が乱れ、冷えのぼせが生じやすくなります。また、運動不足や気温による冷えなども自律神経を乱す原因となり、冷えのぼせにつながります。
「冷えのぼせ」を意識した温活
血液には熱を運んで体を温める働きがあります。そのため「冷えのぼせ」を意識した温活では、下半身や手足を温めたり、体を動かしたりして血行を促進し、体全体に熱が伝わるようにすることが大切です。
下半身を温める
冷えて血行不良が起きやすい下半身を重点的に温めましょう。仕事中や座りながら何か作業をする際は、厚手の靴下や腹巻き、ひざ掛けなどで下半身が冷えないようにする、お腹まわりにカイロを張ったり腰といすの間に湯たんぽを置いたりするなどの方法で温めます。これにより、冷えによる血管の収縮を防ぐことができます。
また、38〜40度のお湯に10〜15分程度浸かることで、副交感神経が刺激されて血管が拡張し、温められた血液が全身を巡るため、シャワーで済まさずに湯船に浸かるといいでしょう。さらに、副交感神経が優位になるとリラックス効果も期待でき、自律神経のバランスを整えることにもつながります。
ほてりが強い場合やお風呂後にのぼせやすい場合には、足湯や半身浴などで下半身を温めるようにしましょう。
手足をマッサージする
末端の冷えには、マッサージで血行を促すのも効果的です。足の指のつけ根や手のひら、指先などを指圧したりもみほぐしたりしましょう。
マッサージをすることで筋肉の緊張がほぐれるとともに、血管が拡張して末端で滞っていた血液の流れが改善されると、温かい血が循環し冷えの解消につながります。
また、意識的に手足を動かすことも末端の冷えに働きかけます。例えば、デスクワークの合間などに手や足の指でグー、パーを繰り返すといった簡単な動きでも血行が促進されます。
ながら運動で体を動かす
運動をして筋肉を動かすことで、血行が促進されて末端まで血液が行き届きやすくなります。とくに、ふくらはぎは足元の血液を押し上げる役割を担っているため、意識して動かすことが大切です。また、体の熱は大部分が筋肉によって作り出されているため、運動をして筋肉量が増えると冷えにくくなります。
日頃から習慣として運動するには、ながら運動がおすすめです。ながら運動とは、家事や通勤時などの日常生活のなかで無理なくできる運動のことです。洗い物をしながらつま先立ちをする、洗濯物を干しながらスクワットをする、通勤時や社内で階段を使うなどを、日常生活に取り入れてみましょう。
ハードな運動をするとほてりを感じやすい場合は、軽めのながら運動を習慣にするのも効果的です。
更年期の温活に役立つ食材
温活のために食生活へ取り入れたいのは、血流をよくする効果が期待できるビタミンEを含む食材です。
秋に旬を迎えるアーモンドや落花生、うなぎなどにはビタミンEが豊富に含まれています。アーモンドを間食にしたり落花生を和え物に加えたりして、日々の食事へ積極的に取り入れましょう。
また、肉類や魚類などのたんぱく質を多く含む食材や、にんじん、ほうれん草など秋から冬に旬を迎える野菜、北の海で獲れる魚など寒い地域が産地の農水産物も体を温める食材です。
白砂糖や白米、小麦製品など精製された食品や、水分を多く含む夏野菜や果物などは体を冷やしやすい傾向にあるので、摂りすぎには注意しましょう。
温活には漢方薬も役立つ
更年期の温活には、漢方薬を服用するのもよいでしょう。漢方薬は「自律神経を整えて体温調節機能を回復する」「血流をよくして熱を巡らせる」など、体質を改善し、不調にアプローチすることを得意としており、冷えにくい体作りの手助けをします。
おすすめの漢方薬
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
胃腸の働きを整えて「気(エネルギー)」を補うことで自律神経を整えるとともに、体の上部にたまった「気」の巡りを整えて熱を取り去り、冷えのぼせやホットフラッシュなどに働きかけます。体力があまりなく、肩こりがあって疲れやすい人に向いている漢方薬です。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
滞った「血(栄養)」の巡りを解消して熱の偏りをなくすことで、下半身の冷えや冷えのぼせを改善します。体力があり、足の冷えやのぼせ、肩こりなどがある人に向いている漢方薬です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:ヨガインストラクター・高橋かなこさん
たかはし・かなこ。RYT200(全米ヨガアライアンス認定)修了インストラクター。企業での事務経験から、デスクワークで疲れた部位や崩れた姿勢のためのレッスンを得意とする。自身のダイエット成功経験から、美しい体を作るためには食と思考が大切だと痛感し、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp)などで精力的に情報発信を行っている。