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67歳オバ記者が綴る「過去」と「未来」 元夫とのホテル結婚式の光景とメタバースが描く”新たな世界”

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上京して49年になりました(!)
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ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(67歳)。18歳で上京して49年、年を重ねるとともに、過去を振り返ることも増えてきた。同時に、進化する最新技術に思いをはせることも。オバ記者が綴る「過去」と「未来」とは──。

* * *

18歳で上京して49年

ちょっと待って! うそでしょ! 私が常磐線に乗って茨城から上京してから来年で50年? えーと高卒で文京区の靴屋の店員になったのが18歳でいま、67歳だから、そうだよ。都民になって49年だよ。ギャーッ、私、その間、何してきた?

一昨日、都内の大学病院の待合室で、天井を仰ぎ見た私。2年前に卵巣がんの疑いで子宮と卵巣の全摘手術をしたときに、すい臓にのう胞があったのが見つかって、それから半年に一度、経過観察のために通院しているの。

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卵巣がんの疑いで手術を受けた時のオバ記者
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検査自体はどうってことないんだけどその後、検査結果を聞くまで、まぁ、待たされるんだわ。今回も1時間以上、待合室で地蔵のように固まっていたわよ。そうしたら、ふと、私の持ち時間がどのくらいあるのかなと思い、その流れで私は何年、東京にいるんだっけと考えたわけ。

「野原さ~ん。診察室にお入りください」

やっと声がかかった瞬間、ふぅ〜っとお腹の力が抜けちゃった。O医師の声で、悪いことは言われないと確信したんだよね。前回は「今のところは大丈夫」だったけど、今回は「はいはい、問題ないですね」だって。

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病院の待ち時間が本当にイヤ!
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お茶の水の駅で鮮明に思い出した上京時の光景

それはそれでめでたいんだけど、その一方で”上京して50年”が頭から離れなくてね。病院を出た足で気づいたらお茶の水に向かってたの。

お茶の水は高3のとき、スキー用のズボンを買いにきたのが最初で、それから初デートは駅前のパブ。21歳のときに1年間バイトした出版社があったりして何かと縁がある町なんだよね。駅前に立ったらその時々の自分が何を考えていたか、ものすごく鮮明によみがえってきたんだわ。

そして極めつきが山の上ホテルよ。最初に来たのは出版社のバイト時代で、ティールームでお茶を飲んだんだよね。その時の印象がすごく良くて、3年後には「ここでなら結婚式をやってもいい」と夫になる人に口走ってたんだから、キャーッ、若いって恐ろしいわ。

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結婚披露宴を行った山の上ホテル
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でも今にして思えば風来坊の私が24歳でまともな結婚披露宴をするのを両親は喜んだんだろうね。父親が張り切ってマイクロバスを運転して茨城から親戚一同を連れてきてね。当時90歳になっていた祖父は着くなりくたびれてラウンジの床にペタリと座り込んでたっけ。

休業しているホテルの前に立ったらあの日のことが次から次に思い出してきた。そして、そういえばここに来た祖父も両親も弟ももうこの世にはいないんだなと思ったら動けなくなっちゃった。

メタバースの開発者のトークショーに参加

そんなわけでたっぷり過去を振り返った翌日は、なんと、メタバースの開発者のトークショーで、一気に未来にワープ。忙しいったらないって。会場は新橋の駅のすぐそばの築90年のクラシックなビルで、中を案内してくれるんだって! 実はよくわからないメタバースより、こっちにひかれて参加を決めたの。そりゃあ、ステキに決まってるって。屋上に登って夜の新橋駅を見ればご覧の通りよ。

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夜の新橋
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イベントは建設業界のイメージアップをしようと、大手建設会社の若手社員が中心になって定期的に開催していてね。名づけて『けんせつぴーあーる ないと』。ひょんなことから畑違いの私も混ぜてもらうようになったんだけど、これが毎回、面白いんだわ。

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『けんせつぴーあーる』に初参加した時のオバ記者
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で、メタバースよ。現実社会とバーチャルな映像世界の融合、なんて言われてもちんぷんかんぷんだよね? でも、「昔、ウォークマンが出た時に音楽を持ち歩けるようになったでしょう。今は声をかけたら音楽をかけたり天気を教えてくれるアレクサやSiriが身近になっています。その機能をウォークマンみたいに持ち歩いて、『この近くのトイレはどこ?』とか、『美味しい家系ラーメンを食べたい』と話しかけると音声で『右方向に3分歩いてください』と教えてくれて、スマホや空間に道案内の映像が映しだされたらいいと思いませんか? 旅のお供になるばかりか、そう遠くないうちに日常のありとあらゆるところで活躍し始めます」と言われたら興味が湧かない?

すでに建設業界ではメタバースが実用化され始めているんだってよ。

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今回の『けんせつぴーあーるないと』も有意義な会でした
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そういえば昔、元夫が「進化した時代を生きているんだから若い人は年配者より優れている」と言っていたんだよね。最近、若い人と話すたびに「ほんとだ!」と思うんだわ。

「年齢が違う! 私、浮いてない? 話、合うかしら」なーんてビビってるのは67歳の私のほうでいまどきの30代、40代は年齢で人を選別しないんだよね。こういうフランクさって私ら世代にはなかったわ。

そんなわけでこの夜は過去より未来がいいに決まっていると思えて、とても幸せな気持ちになったのでした。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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