《うつと遺伝》最新研究で明らかになった「母親から感染するヒトヘルペスウイルス6の影響」、専門家は「外的な要因が大きく、遺伝的な要因でだけ発症するわけではない」
基本的な生活習慣が体も心も整える
自分自身にうつの遺伝子があるかどうかを検査で調べることは「ゲノムを網羅的に調べてもごくわずかしかうつ病リスクを予測できないため、現段階では実用的ではない」(山形さん)というが、両親や近親者にうつ病の経験がある場合は、予防する意識を持ってもいいだろう。
「私たちのデータでは、小学校低学年以下の子供のうつ傾向には、遺伝的な影響は確認できませんでした。この時期のうつの発症にも予防にも、環境的な要因が大きく寄与するものと考えられます。家族や友人との良好な人間関係が心理的な支えになり、ストレスを緩和してくれる。幼少期のうちに信頼できる人間関係を構築しておくことは、その後のメンタルヘルスの安定にも大きく影響します。
確たるエビデンスとは言えませんが、一般論として規則的な睡眠、運動、栄養バランスのいい食事といった基本的な生活習慣は身体的な健康だけではなく、心理社会的な健康にもよい影響があるでしょう。“めんどうくさいからご飯は食べなくていい”とか、深酒やスマホの見すぎなどは当然ながら推奨されません」(高橋さん・以下同)
年を重ねるにつれて、不安やうつ症状が見られたらどのようにすればいいか。
「いざとなれば、心理カウンセリングといったプロフェッショナルのサポートを臆することなく利用してほしい。家族の誰かがメンタル不安に陥ると周囲にも心理的影響を与え、負の連鎖となってしまうこともある。専門家のアドバイスを受けて、サポートしてもらう意義は大きいでしょう」
山形さんは、「うつの遺伝」を恐れすぎないことが大切だと説く。
「遺伝率は、“親がうつ病である場合に子がうつ病になる確率”ではないことに注意が必要です。うつ病のように遺伝率が40%程度である場合、片方の親と子のうつ病へのなりやすさの関連は実際にはかなり弱いものです。
また、肥満(BMI)の遺伝率は75%程度ですが、それでも食べすぎれば太るし、節制すればやせます。うつ病になるかどうかは、環境や自分の行動に左右される程度が大きいといえます」
生きものである以上、“不都合な遺伝”は必ず存在する。しかし、それは自分の心持ちと習慣、環境次第でプラスに変えられるのだ。
※女性セブン2024年12月12日号