更年期

更年期うつに悩んでいるなら…うつ病との違いや前向きに過ごすため今すぐできること

更年期の不調はメンタル面も直撃。イライラや不眠の他、うつに似た症状が現れることもあるそうです。

暗い部屋から外を眺める女性
Ph/Getty Images
写真6枚

そこで、婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんに、更年期の心の不調とその改善法を教えてもらいました。

* * *

イライラ、不安、気分のムラの解決には?

更年期になると、イライラしやすくなったり、これまで楽しめていたことが急につまらなく思えてきたり、気分のムラが出やすくなります。

頭を抱える女性
Ph/Photo AC
写真6枚

◆心のイライラの原因は自律神経のバランスの崩れ

更年期にイライラや激しい感情の起伏が起こるのは、女性ホルモンが急激に減って、自律神経のバランスが崩れるせい。自律神経には心と体を活発にする交感神経と、休ませる副交感神経があり、バランスを取って働いています。これが乱れると、不安や緊張が高まり、心に変調が起こります。

◆ストレス度の高い環境が症状を悪化させる

人間関係のストレスや過労も、こうした症状を悪化させます。特に更年期世代は、子供の反抗期や受験、親の介護などつらい時期と重なりがちです。イライラしたり、心が不安定になるのも無理はありません。ストレスの原因を把握したり、副交感神経が優位に働くようにリラックスを心がけたりすることが、気持ちを穏やかに保つことにつながります。

◆ 漢方では「抑肝散」「加味逍遥散」

漢方薬は、生薬の組み合わせで女性特有のバランスの乱れを回復させます。体質によって使い分けますが、「抑肝散(よくかんさん)」は興奮や緊張を和らげ、イライラには「加味逍遥散(かみしょうようさん)」が効きます。ホルモン補充療法と併用することもできます。

→ホルモン補充療法についてはコチラ

だるさ、意欲ダウンなどのうつ症状の改善法

更年期の女性の中には、抑うつ症状に悩んでいる人が少なくありません。

うつのイメージイラスト
Ph/Getty Images
写真6枚

◆更年期うつとうつ病は別のもの

気持ちが沈んで何もやる気がおきない、「自分はダメだ」と自己否定や自己嫌悪が高まるなど、この症状はうつと似ているので、心療内科を受診する人もいます。もちろん本来のうつの人もいますが、女性ホルモンの減少が原因で起こる一時的なうつ症状であることも多いのです。

◆「幸せホルモン」セロトニンの分泌の減少

では、なぜ更年期にはうつの症状が出やすいのでしょう。それは、閉経前後に起こる他の不調と同じく、女性ホルモンの減少が原因です。

カギは、心を元気で前向きにする働きがあるセロトニンという脳内物質。別名「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、女性ホルモンのエストロゲンが分泌を促します。更年期にエストロゲンが減少していくことにより、幸せを感じるセロトニンも少なくなり、うつ症状が出るというわけです。

◆ウォーキングでセロトニン分泌を増やす

セロトニン不足によるうつ症状を改善するには、適度な運動が効果的です。

ウォーキングしている2人
Ph/Getty Images
写真6枚

特に一定のリズムを刻む反復運動が効くので、ウォーキング、ランニングがおすすめです。ストレス発散にもなりますし、このような運動することでセロトニンが増えることもわかっています。無理のない範囲で始めてみましょう。

低下する睡眠の質をアップさせる方法

寝付きが悪い、夜中や早朝に目が覚める、熟睡できないなど、閉経前後は睡眠のトラブルが増える時期です。さらに、更年期症状のほてりや多汗なども睡眠の質を下げる原因になります。

◆交感神経と副交感神経の切り換え不良

自律神経には、活動時に働く交感神経とリラックスするときに働く副交感神経があります。夜、しっかり眠るためには、交感神経を抑えて副交感神経を優位にする必要があります。ところが女性ホルモンが急激に変動すると、この切り換えが上手くいかなくなり、眠つきが悪くなったり、眠りの質が下がります。

◆ 脳のリラックスで睡眠の質アップ

規則正しい生活とバランスのとれた食事によって、不眠をはじめとする更年期のさまざまな症状をやわらげることができます。決まった時間に起きて日光を浴び、体内時計のリズムを整えましょう。

ベッドルーム
Ph/Getty Images
写真6枚

また、寝具、照明など眠る環境の見直し、リラックスできる音楽や香りを見つける、寝る前にスマホを見ないなど、できることから試してみてください。

早めの婦人科受診がおすすめ

今回お話ししたイライラや抑うつ症状、不眠は、女性ホルモンの急激な減少が原因です。婦人科では、ホルモン量を測るなど、必要に応じてさまざまな検査をして、本人の希望と状態に合わせて治療方法を決めます。

漢方、サプリメント、少なくなった女性ホルモンを外から補うホルモン補充療法など治療法はたくさんあります。症状がひどく、悩んでいる場合には、努力だけで解決しようとするのではなく、専門医を頼るという方法も検討してみてください。

教えてくれたのは:成城松村クリニック院長・松村圭子さん

松村圭子さん
写真6枚

まつむら・けいこ。1969年生まれ。日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。若い女性の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ「ルナルナ」の顧問医。西洋医学のほか、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。https://www.seijo-keikoclub.com/

構成/森冬生

●ストレスやうつに悩む人にはバナナがおすすめ!効果UPには牛乳をプラス

●閉経によって体に起こる変化とは?更年期を前向きに過ごすための正しい知識