社会

「キックバック」「利権構造」で利用者が損をしている【火葬場のタブー】“行政のキーマン”区長と区議が語る「改善するためには行政の関与が必要」

トラブルになったら電話番号を変える

「キックバック」や「区民葬」に関しては、業界の因習による利権が生まれる側面があるのは事実だが、一方で“街の葬儀屋さん”の安心感は小さくない。

葬式に参加する女性
“街の葬儀屋さん”の安心感は小さくない(写真/イメージマート)
写真4枚

全東葬連の関係者が話す。

「私たちは地域に根ざした葬祭業者で組織している。最近は加盟社でないインターネットで大々的に広告を打つような葬儀社が目立ちますが、無関係の我々のところにもそういった業者へのクレーム電話がかかってくることが増えました。どうも、広告と実際の料金が違ったりするんです。これに対抗するため、これまで広告に積極的でなかった会社の中にも“誇大広告に騙されないで”という意味で自社の広告を出し始める会社が増えているんですよ」

2021年には、小規模な葬儀をうたうある業者が「追加料金一切不要」「プラン金額がすべての費用」などと広告して集客していたが、その内容が虚偽だったとして消費者庁から処分、景品表示法に基づく課徴金納付命令を受けた。

それ以外にも、国民生活センターには相談が寄せられている。

「ネット上の『1日葬30万円』『葬儀1か月前に予約すると5万円引き』という記載を信用し、葬儀を申し込んだところ、3倍近い見積もりを提示されたり、事前予約での割引自体が存在しなかったりという相談がきています。

こうした場合、会社側からは『ネットの仲介業者が勝手に記載していた』と説明されるケースが多い。また、『提携式場○千件』という紛らわしい記載で、ネット葬儀社と斎場が提携関係にあると誤解する利用者も多いようです」(国民生活センターの担当者)

インターネット検索で出てくる葬儀業者はきれいなホームページを持ち、懇切丁寧な対応をうたうが、その実態は玉石混淆だ。また、単なる「仲介サイト」の場合もあるので、慎重に選びたい。

「登場した当初は中間マージンを省き、遺族や本人のニーズに合った葬儀をよりリーズナブルな価格で提供するというよさがあったネット葬儀社ですが、最近では“拝金主義”の会社も増えてきているようです。

免許も登録も不要な葬祭業者は、名乗るだけですぐに始められる。残念ながら、顔の見える関係もないから“トラブルになったら業者名や電話番号を変えてしまえばいい”と考える悪質業者も存在するのです」(葬祭業経営者)

2075年までは、死亡者数が増加し続けると推計される日本社会。誰もが葬儀や火葬に直面することになる以上、平時から実態を把握し、関心を持つことが大切。利用者が目を向けたその先で、より透明化された火葬や葬儀が実現されることになるはずだ。

※女性セブン2025年1月1日号