
年末年始、ごちそうを思う存分楽しんで…気づけばお財布が大ピンチ!なんて人も多いのでは? そんなときこそ、野菜の切れ端を活用した再生栽培にチャレンジしてみませんか? 育て方は簡単。野菜の根やヘタを水につけるだけ。成長を観察するのが楽しいうえ、節約になるし、栄養満点で疲れた胃も労ってくれると一石三鳥。今回は再生栽培野菜のレシピも紹介。賢く家計を立て直しましょう。
水につけておくだけ!再生栽培の基本手順
再生栽培とは、野菜のヘタや芯、根など通常は捨ててしまうことが多い部分を水につけて、もう一度その野菜を育てる方法のこと。
苗作り
ヘタや根を再生するので捨てずに取っておくこと。
大根やにんじんは“ヘタ”を、小松菜や水菜といった葉物野菜は“株元”を長めに残しておくようにしよう。

育成
水は毎日交換し、容器も清潔さを保つこと。農業コンサルタントの宮崎大輔さんは言う。
「水を毎日交換することが上手に育てる秘訣です。水が腐ると菌が増えて枯れてしまうため、容器も時々食器用洗剤で洗い、菌を繁殖させないようにすることが長持ちのコツ。そして、芽や葉を水没させないようにしましょう」
収穫
収穫サイズは通常より小ぶりになる覚悟を。今回紹介する野菜&ハーブははさみで切って収穫できる。
「再生栽培による収穫量は、最初に購入した野菜の半分か4分の1程度になります」
水につけて育てる野菜のメリット・デメリット
【メリット】
・簡単に始められる
・キッチンの隅などに置け、場所をとらない
・毎日水を交換するだけで栽培が簡単
【デメリット】
・栄養成分が足りなくなるため、長くは育たない
・育てられる野菜の種類が少ない
実質無料で始められる“リボーンベジタブル”
再生栽培といえば、代表的な野菜は豆苗で、実際に試したことがある、という人もいるだろう。しかし、野菜の切れ端などから新たな葉を育成できる植物は、ほかにもたくさんあると、宮崎さんは言う。
「冬なら水菜やほうれん草、夏なら空心菜が意外と簡単に栽培できて、料理にも使いやすく、おすすめです」(宮崎さん・以下同)
再生栽培の魅力は、わざわざ種や苗を買ってくる必要がなく、食材として買ってきた野菜の余りを使って挑戦できる手軽さにある。
「室内で、土がなくても始められ、コストもほとんどかかりません。適温を保つ必要はありますが、エアコンを活用すれば、季節に関係なく育てられます」

再生栽培はコロナ禍から注目され、いまは野菜くずを減らせるという、エコの観点からも注目されている。
「コロナ禍では、外出が制限される中、室内でできる家庭菜園のニーズが高まり、再生栽培も注目されました。いまは“リボーンベジタブル”と呼ばれ、食品廃棄削減の一助となるだけでなく、家庭での取り組みが環境意識を高めるきっかけにもなっています」
再生栽培はいま、節約にもエコにもなるうえ、育てる楽しさがあると定着しつつあるようだ。
家庭料理に使うには十分メリットあり
再生栽培の中でも、水だけで育てる水耕栽培は手軽さが魅力だが、土や肥料を使って栽培した野菜に比べて何度も収穫できない。植物が必要とするミネラルなどは本来、土から吸収するのだが、水耕栽培だとそれができず、長期栽培が難しいからだ。
「とはいえ、β-カロテンやビタミンEといった抗酸化作用の高い栄養素や、骨を強くするカルシウムを含む野菜などを少量でも自宅で収穫できるのは大きな利点。昨今の野菜の価格高騰を考えると、毎日の食事にプラスできるなら充分価値があるといえます」とは、国際中医薬膳師の大友育美さん。
捨てるはずの野菜のヘタや根が家計を救うひと皿に大変身。大友さんが、再生野菜の収穫量の少なさを生かしたレシピを考案。育てて作って楽しんで!
※作り方は記載がないもの以外、すべて作りやすい分量。電子レンジでの加熱はすべて600W。
「豆苗」の育て方&レシピ
「根元の芽のすぐ上をカットしたら、ミニトレーなどに根がすべてつかる程度に水を張り、豆と根の部分をつけます。5~7日で食べられるまで葉と茎が成長し、3回程度は収穫可能」(宮崎さん)

「豆苗」レシピ
《「シーザーサラダ風」》

【1】油揚げ1枚はフライパンで両面を焼く。ひと口大に切ってしょうゆ少量をからめる。
【2】ボウルに、半分に切った豆苗1パック分と【1】を入れる。
【3】オリーブオイル・粉チーズ各大さじ1、塩小さじ1/4、こしょう少量を混ぜ合わせ、【2】の上にかける。
《「ラー油マヨ和え」》

【1】豆苗1パック分は根元を切って、半分の長さに切る(耐熱容器に入れ、ラップをかけて電子レンジで40秒加熱してもよい)。
【2】【1】に具入りラー油・マヨネーズ各大さじ1(あるいは、マヨネーズ大さじ2、ラー油小さじ1でも可)、塩ひとつまみを加えて和える。
「豆苗」の栄養素
「骨の形成を促すビタミンKや、老化の原因である活性酸素を除くビタミンAとCが豊富」(大友さん)
「大根の葉」の育て方&レシピ
「大根のヘタ(頭から約1cm)をミニトレーに置き、葉の根元がつからない程度に水を張ります。約2週間で収穫でき、ヘタの部分がシワシワになれば、収穫終了」(宮崎さん)

「大根の葉」レシピ
《「カルシウムたっぷりふりかけ」》

【1】大根の葉1本分(長さ7~8cm、1/2カップ分)は5cm幅に刻む。【2】フライパンにサラダ油小さじ1を中火で熱し、【1】を入れて3分炒め、しょうゆ・みりん各小さじ1、乾燥小あみえび・白炒りごま各大さじ1を加えて炒める。
《「チーズクリーム煮」》
【1】大根の葉1本分は2cmに、ベーコン1枚は1cm幅に切り、耐熱容器に入れてコンソメ顆粒小さじ1を加えてラップをかけ、電子レンジで2分加熱。
【2】牛乳1/2カップ、ピザ用チーズ大さじ2、片栗粉小さじ1を混ぜる。
【3】【2】に【1】を加えて混ぜ、電子レンジで2分加熱。こしょうを振る。
「大根の葉」の栄養素
「皮膚や粘膜を丈夫にし、視力の維持、免疫力の強化などに効果的なβ-カロテンやビタミンCが豊富」(大友さん)
「にんじんの葉」の育て方&レシピ
「ヘタの部分(頭から約1cm)をミニトレーに置き、葉の根元がつからない程度に水を張ります。約2週間で収穫でき、ヘタの部分がシワシワになれば、収穫終了」(宮崎さん)

「にんじんの葉」レシピ
《「にんじんの葉入りふんわり塩マーボー」》

【1】フライパンに鶏ひき肉100g、ごま油小さじ1を入れて火にかける。鶏がらスープの素小さじ1、塩・豆板醤各小さじ1/2を加え、色が変わるまで炒める。
【2】粗いみじん切りにしたにんじんの葉2本分、潰した絹ごし豆腐300gを【1】に入れてなじませる。水小さじ2で溶いた片栗粉小さじ1をまわし入れ、2分煮立たせたら火を止める。
《「台湾風豆乳スープ (シェントウジャン)」》(2人分)

【1】にんじんの葉2本分は粗いみじん切りに、味つきザーサイ大さじ1分は細切りにする。
【2】耐熱容器に【1】、豆乳1カップを入れて電子レンジで2分30秒加熱。そこへ酢小さじ2、しょうゆ小さじ1を混ぜて固まってきたら、ラー油少量を振る。
「にんじんの葉」の栄養素
「歯や骨を丈夫にし、神経を安定させるカルシウムをはじめ、抗酸化力の高いビタミンEなどが豊富」(大友さん)
「ミント&ローズマリー」の育て方&レシピ
「ミントは葉を食べた後に残った茎を、ローズマリーは葉のついた茎を、それぞれ茎の半分程度まで水につけます。約1か月で収穫可能に」(宮崎さん)

「ミント&ローズマリー」レシピ
《「ミントティー」》
カップにミントの葉4~5枚を入れ、熱湯3/4カップを注ぐ。カップの上に皿などをのせて2分おく。
《「ミントシロップ」》
【1】鍋に水1/2カップ、砂糖大さじ5を入れて火にかける。
【2】煮立ったらミント2枝を加えて火を止め、蓋をして10分蒸らす。
【3】ミントを取り出して清潔な容器にシロップを入れ、冷蔵庫で保存。炭酸水で4倍に希釈してドリンクに。ジンやホワイトラム、炭酸水を注げばモヒート風に。
《「ローズマリーオイル」》
【1】ローズマリー5cm分は半分に切る。清潔な小瓶に入れ、サラダ油1/2カップを注ぐ。
【2】1週間漬けてから、ローズマリーを取り出す。ドレッシング、パスタ、魚のソテーなどにかけると風味がよく、におい消しにもなる。
《「ローズマリーバター」》
【1】ローズマリー5cmは枝から葉をしごき取り、粗く刻む。
【2】室温においてやわらかくしたバター(有塩・無塩どちらでも)50gに混ぜる。
【3】【2】を棒状になるようにラップで巻き、冷蔵庫に入れて冷やし固める。トースト、肉のソテー、きのこ炒めにおすすめ。
「ミント」の栄養素
「アレルギー症状や認知症予防への効果が期待されているロスマリン酸を含有」(大友さん)
「ローズマリー」の栄養素
「香りの中に、頭をすっきりとさせて集中力や記憶力を向上させる成分が含まれます」(大友さん)
「長ねぎ」の育て方&レシピ
「根元から1~2cmを残しておき、水を張ったコップにつけます。水の量は、根がつかる程度。約1週間で収穫できます」(宮崎さん)

「長ねぎ」レシピ
《「香りねぎみそ」》

長ねぎ(緑の部分)1本分、みじん切りにしたしょうが1/2かけ分、みそ大さじ4を合わせ、削りぶし2gを加えて、なじむまで混ぜ合わせる。おにぎりに塗ったり、豆腐にのせてもおいしい。
《「ツナとねぎの半熟焼き」》

【1】長ねぎ(緑の部分)1本分は小口切りにする。
【2】熱したフライパンに、ツナ缶1缶(70g)を油ごと入れたら、【1】を加えて炒める。
【3】【2】に溶き卵2個を入れ、ゴムべらで大きく混ぜて半熟状に焼き、片側に寄せて形を整える。
【4】皿にのせてしょうゆ適量をかける。
「長ねぎ」の栄養素
「長ねぎの緑の部分には、免疫力を高めるβ-カロテンがたっぷり。冷えの改善や鼻づまり、喉の炎症を鎮静させる効果も」(大友さん)
◆教えてくれたのは:農業コンサルタント・宮崎大輔さん
株式会社イチゴテック代表。いちご栽培の研究で農学修士号を取得。家庭菜園・農業系YouTuberとしても情報を発信中。著書に『キッチンからはじめる! 日本一カンタンな家庭菜園の入門本 おうち野菜づくり』(KADOKAWA)。https://www.youtube.com/channel/UCts0UPnL4A3kaeuFa-6Cmlg
◆教えてくれたのは:国際中医、薬膳師・大友育美さん
フードコーディネーター。おいしくて作りやすく、体にやさしいレシピ提案が好評。著書に『いたわり発酵ごはん 不調しらずの体をつくるおいしい薬膳の知恵』(マイナビ出版)など多数。https://www.instagram.com/ikumi_otomo/?hl=ja
取材・文/番匠郁
※女性セブン2025年1月16・23日号