自分の体の健康状態を調べるために推奨されるのが毎年の健康診断だ。厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)によると、20才以上で過去1年間に健診や人間ドックを受けたことがある人は、男性が73.1%、女性65.7%と高い水準にある。
デメリットの多い胸部X線検査
しかし、国をあげて健康診断に“盲信”するのは日本だけだと指摘するのは老年医学に詳しい精神科医の和田秀樹さんだ。
「日本の企業が従業員に対して健康診断を義務づけるようになったのは1970年代頃。対象者は圧倒的に男性が多かったわけですが、現在の寿命を見ると、男女の差は縮むどころかかえって広がるばかり。そもそも、健康診断が寿命を延ばすというエビデンスはどこにもありません」
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんも重ねる。
「過剰な健診を受けることで、かえって体に負担をかけてしまうケースも多くあります」
時代遅れな健診メニューもある。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが言う。
「圧倒的にデメリットが多いのが、胸部X線検査、いわゆるレントゲン検査です。もともとは結核を調べるための検査で、現代ではほとんど意味をなさないどころか放射線被ばくによって発がんリスクが高まります。
また、胃部X線検査(バリウム検査)は、さらにその何十倍、何百倍の放射線を浴びます。一方で、精度への疑問も指摘されている。受けるなら胃カメラによる検査がいいでしょう」
胃がんの発見率はバリウムに比べ胃カメラは18倍
バリウムでは早期胃がんなどが発見されにくいといい、千葉県松戸市が公表するデータによると、胃がんの発見率はバリウムに比べ胃カメラは18倍に及ぶ。ナビタスクリニック理事長で内科医の谷本哲也さんもこう警鐘を鳴らす。
「バリウム検査で異常が見つかった場合、結局は胃カメラを受けることになるので二度手間になります。また、バリウムが体外に排出されず長時間腸にたまると、腸閉塞や腸穿孔を起こす危険があります」
更年期以降、骨粗しょう症リスクが高まる女性にとっては骨密度検査も重要に思えるが、室井さんは「10年に一度でいい」と断じる。
「海外ではチュージング・ワイズリーといって、“無駄な医療や有害な医療をなくそう”というキャンペーンが行われており、骨密度検査はその典型。X線を用いたDEXA法(デュアルエネルギーX線吸収測定法)が一般的で被ばくリスクも多少あるうえに、閉経後に骨密度が下がったとしてもすぐに骨粗しょう症になるわけではありません」
※女性セブン2025年1月16・23日号