健康・医療

《3人に1人が女性?》厚手の靴下、タイツやブーツ、温泉…冬こそハイリスクな「水虫」に悩む女性が増加!正しい撃退術を医師が指南

足の裏を気にする女性
男性に多いイメージの水虫だが、いま女性患者が増えている(写真/PIXTA)
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足の指が白くふやけ、カサカサして皮がむける──男性に多いイメージの水虫だが、いま女性患者が増えているという。温度、湿度が高い夏だけでなく、実は冬場も要注意。正しい知識で水虫を寄せ付けないクリーンな日々を。

水虫に悩む女性が増加傾向

水虫といえば、革靴をはいて過ごす時間が長く、外を歩き回る機会も多い男性特有の病気というイメージを抱く人が多いのではないだろうか。ところが、意外にも水虫に悩まされる女性は増加傾向にあるという。

「水虫の患者に男性が多いのは事実ですが、女性でも珍しくない感染症と言っても過言ではありません。近年、全国的に行われた疫学調査によると、日本人の6人に1人が水虫にかかっているという結果が報告されました。そして、その水虫患者のうち、3人に1人が女性といわれています」と話すのは、水虫研究の権威である仲皮フ科クリニックの院長・仲弥さんだ。

水虫の正体は「虫」ではなく「菌」

女性を悩ませる水虫とは、そもそもどんな病気なのだろうか。「虫」という漢字がつくが、蚊などの昆虫が原因になる感染症ではない。カビ(真菌)の一種である白癬菌が、足の裏の皮膚や爪に感染して生じる病気のことを指す。

白癬菌は足だけでなく、頭皮やワキなどに感染することもあり、陰部や太ももの付け根に生じたものは、俗に「いんきんたむし」と呼ばれる。

水虫の種類は主に3つ

仲さんによると、足に生じる水虫には大きく分けて3つのタイプがあるという。

主な水虫の種類を表すイラスト
主な水虫の種類
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足の爪のアップ
水虫はカビ(真菌)の一種である白癬菌が、足の裏の皮膚や爪に感染して生じる病気(写真/PIXTA)
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「足の指の間が赤くなり、皮がむけて、かゆくなるのが趾間型。足の裏、特に土ふまずや足の指の付け根に小さな水ぶくれができて、かゆくなるのが小水疱型。足の裏全体、特にかかとの角質層が厚く、硬くなるものを角質増殖型と言います。多くの人が水虫と聞いてイメージするのが趾間型でしょう。グチュグチュと皮膚が柔らかくなり、悪臭を放つこともあります」(仲さん・以下同)

白癬菌は一般的なカビと同様に、高温多湿な環境を好んで繁殖する。しかも、人間が生活する環境であればどこにでも生息する、極めて身近なカビである。

温泉の脱衣所
温泉など公共の水場には要注意(写真/PIXTA)
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「自宅の風呂場などはもちろん、スポーツジムのプールやシャワールーム、温泉や銭湯のサウナ、更衣室の床、共有の足拭きマットなどにも多く生息します。

家族やジムの利用者に水虫の人がいれば、床やマットには白癬菌がいると考えていいでしょう。水虫患者が触れた部分を介して感染してしまうケースも多いですね」

また、女性の水虫で多く見られるのが、爪の先端が厚くなり、白く濁って見える「爪水虫」だ。これまでは高齢になるほど患者が増加し、60才以上の患者が多いと考えられていたが、近年は若い女性にも患者が増えていると、仲さんは指摘する。

「ミュールやペディキュアなどの流行により、爪先に目が行くようになったことで、爪水虫が注目されるようになりました。爪が白く濁り厚ぼったくなってしまうので、“足先を出すのが恥ずかしい”という女性は少なくありません」

厚手の靴下やブーツが原因に

美容の大敵でもある水虫だが、なぜ女性に増えているのか。

仲さんは、女性が水虫になりやすい要因として、特に冬場は長時間にわたって厚手の靴下やタイツをはくことが多いうえ、ブーツやパンプスなどの気密性が高い靴をはく機会があることを挙げる。また、室内やベッドの中でも靴下をはく女性が増えているなど、ライフスタイルの変化も影響しているという。

コートにブーツ姿の女性の腰から下の後姿
ヒールの高いブーツは"水虫の温床"になりかねない(写真/PIXTA)
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「女性がはくヒールの高い靴は、歩行中に爪先に重心が移るため、足の指がギュッと締め付けられてしまいます。そうなると、指の間の湿度が高くなってしまい、水虫の原因となる白癬菌にとって絶好のすみかになります。そうした靴を日常的にはいていると、水虫が発症するリスクが高まってしまうのです」

ただ、女性の場合、デリケートな話であるせいか、水虫を理由に病院に行くことをためらうことも多いとされる。しかし、受診を控えたせいで症状を悪化させてしまうケースも少なくないのだ。

菌の侵入には24時間以上かかる

水虫を予防するためには、どのような生活を心がけるべきなのだろうか。冬は空気が乾燥しているため、白癬菌の活動が弱まりそうな印象を受ける。ところが、冬の間も水虫を発症するリスクは大きい。特に、冬の間にブーツをはく人は気をつけてほしいという。

水虫撃退8か条とイラスト
水虫撃退8か条
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「ブーツは通気性が悪く、密閉されていて蒸れやすい。ブーツの中の湿度は100%と言っていいですから、白癬菌が繁殖する温床になってしまいます。長時間はき続けないようにしてほしいですね。靴は通気性の高いものを選び、何足かをローテーションではくよう心がけましょう。また、パンプスやストッキングを日頃から身につけ、靴の先で足をすぼめて歩いている女性は、指がくっつきやすく水虫のリスクが高まりますので、要注意です」

仲さんは、白癬菌の性質を知れば、感染や繁殖のリスクを減らすことができるとアドバイスする。

「白癬菌が角質層に侵入するには、24時間以上かかるといわれています。たとえジムなどで水虫患者とマットを共有しても入浴時にこまめに足を洗うようにすれば、水虫に感染する確率はぐんと低くなるでしょう。また、足を白癬菌が繁殖しやすい高温多湿の状態にしないことも大切です。家では靴下を脱ぐなど、できるだけ足を乾燥させておくようにしてください」

菌が足につかないようにすることはもちろん、増殖させないことが重要だ。

治ったように見えても根絶できていない

さて、水虫の症状が悪化したと感じた場合は、皮膚科を受診するのが鉄則である。もちろん、かかりつけ医があるなら、まずはなじみの医師の判断を仰いでもいい。

水虫の治療薬はドラッグストアでも販売され、クリームや軟膏などさまざまな種類がある。市販薬であっても、適切な薬を根気強く塗布していけば、皮膚科で処方されたものと同じように効果を得ることはできる。ただ、完治したと思いきや、数か月後に再発してしまうケースが珍しくないため、効果を実感しにくい人もいるようだ。

杜の街ひらまつ内科クリニック院長の平松順一さんが言う。

「市販薬は、個々の患者さんに適切な薬であるかの判断が難しいうえ、病院で処方される薬とは濃度が異なる場合があります。何より、水虫の厄介な点は、一見治ったように感じても白癬菌が皮膚の奥に逃げ込んでしまい、実際は根絶できていないケースが多いことです。

にもかかわらず、症状が和らぐと白癬菌を根絶できたと勘違いしてしまい、早い時期に市販薬の使用をやめてしまう患者さんがたくさんいます。これが、水虫が再発しやすい理由と考えられます」(平松さん・以下同)

足の形状は人それぞれで一様ではないうえ、ライフスタイルも十人十色なので、水虫の対処法は人によって異なってくるのだ。

冬は治療に最適な季節

また、平松さんによると、水虫を発症しても、痛みもかゆみもないことがあり、気づかずに長く放置してきた患者を見かけることも多いという。足の皮膚に違和感を覚えたら、水虫かどうかの判断がつかない場合でも早めに皮膚科を受診すべきだろう。そして、適切な薬を処方してもらう方が、結果的に完治までにかかる期間が短くなる可能性があると、平松さんは続ける。

「水虫は放置しておけばそのうち治るのでは、と考えているかたも多いですが、それは間違い。また当院の患者さんで、夏にはだしで砂浜を歩いたら治ったというかたもいました。たしかに熱さに弱い白癬菌は、やけどしないギリギリの熱さのお湯に足をつけると、活動が弱まってくるともいわれていますが、やけどのリスクもあり、確実に治る方法とは言えません」

乾燥する冬は、菌が増殖するリスクもある一方で治療に適した季節ともいえる。主な治療法は塗り薬などの外用薬だ。

「症状の有無にかかわらず、1日1回、風呂上がりに充分な量の薬を少なくとも1~2か月以上は患部に塗っていただきます。治療開始直後はいったん軽快したように見えますが、再発することが多く、よくなったと思ってからも1~2か月は塗り続けてほしいですね。一方で、爪水虫や、広範囲にわたって症状が出ている場合は、内服の抗真菌薬を処方することもあります」

水虫を放置すると、足裏から爪へと広がったり、家族にうつしてしまうリスクもある。特に、爪水虫は爪の中まで白癬菌が入り込んでいるため、完治まで時間がかかってしまう。こうした事態を避けるためにも、専門医と相談しながら計画的に治療を進めるのがベストといえそうだ。水虫の治療は、地道に、根気強く行うのが鉄則である。冬の間に水虫対策を万全にして、春を心地よく迎えられるようにしよう。

※女性セブン2025年1月30日号

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