《熱中症よりも危険》気づいた時にはもう手遅れなこともある“低体温症” 筋肉量が落ちて基礎代謝が下がる高齢者はリスク大、糖尿病や不整脈などの持病がある人も注意
筋肉をつけて筋肉量を増やすことで対策
低体温症は「寒さで体から失われる熱量」が、「体で作られる熱量」や「暖房などで外部から得られる熱量」を上回ったときに起きる。そこで必要なのは「体で作られる熱量」を高めるために、筋肉をつけて基礎代謝を上げることだ。石原さんがアドバイスする。
「体温の約4割が筋肉から作られているため、筋肉を鍛えることで体温が上がりやすくなります。全身の筋肉量のうち約7割を下半身が占めるので、足腰を重点的に鍛えるといいでしょう。つま先立ちをしてから、かかとを床に下ろす『つま先立ち運動』をすればふくらはぎが鍛えられますし、1日30回のスクワットもおすすめ。隙間時間に、その場で足踏みするだけでも効果があります」
1日に20~30分ほど散歩するのもいい。
「数回に分けて歩いてもかまいません。50才を過ぎると体のあちこちが弱くなってくる。足腰を鍛えて動ける体を維持すれば高血圧や糖尿病の予防にもなり、全身の健康にもつながります」(石原さん・以下同)
寒さを感じないからといって、薄着で過ごすのはNGだ。室内でも暖かい服装を心がけよう。
「高齢者の場合、ご本人が“寒くない”と言うものの、手を触ってみると冷たく、体温が34℃台ということは珍しくありません。
ふだんから深部体温を上げるために、腹巻きを習慣づけてほしい。アウターに響くのが気になるなら、昼間は薄手、寝るときは厚手と使い分けるといい。靴下は室内でも履くようにしましょう」
食事についても、体を温めるものを心がける。
「朝食にみそ汁を飲むと、体温が上がりやすくなります。しょうがやねぎ、にんにくなどの薬味は体を温めるので、みそ汁はもちろん、メニューにちょい足しするといい。ひと息つきたいときは、しょうがをたっぷり入れた熱い紅茶がおすすめ。甘みが欲しいときは体を温める作用がある黒砂糖やはちみつを加えてください」
室温は20℃以上、湿度は50~60%を保つのがベスト
生活習慣や食事を見直してせっかく体を温めても、寒いところにいれば体は冷える。専門家たちが何より重要だと口を揃えるのが住宅環境だ。横堀さんが言う。
「低体温症を予防するには、日常的に暮らす環境を整えておくことが大事です。いざというときにエアコンが故障していて、低体温になることもある。寒波の到来など気象情報を事前にチェックして、防寒の準備をしっかり行いましょう」
日本の住宅は海外に比べて断熱性や気密性が低いので、効率的に室温を上げることが大切。
広島工業大学環境学部建築デザイン学科教授の宋城基さんは、まず部屋のドアまわりをチェックすべきだとアドバイスする。
「ドアと壁の間に隙間があると、室内の暖かい空気が逃げていきます。隙間を断熱シートなどで埋めてください。ドアノブが金属なら、熱を奪われないように布で覆うのもいいでしょう」
続いて対策すべきは窓。
「窓のガラス面や金属サッシは、壁と比べて外の冷気が伝わりやすい。ガラスには透明なエアキャップやビニールシートを貼ることを推奨します。サッシにはドアと同じく、断熱シートや隙間シートを貼るといい。日中は部屋を暖めるために、カーテンを開けて太陽の熱を取り入れ、夜はカーテンを閉めて断熱性を高めてください」(宋さん・以下同)
いっそのこと、リフォームするのも手だ。自治体によっては、住宅の断熱リフォームに補助金が出ることもある。効率よく部屋を暖めるためには、エアコンの使い方も工夫したい。
「暖かい空気は上に向かうので、エアコンの風向きを下にすると、効率的に部屋全体を暖めることができます。リビングや寝室だけを暖めていると、ヒートショックが起きやすくなるので、トイレや浴室も暖めることを忘れないでください」
室温は20℃以上、湿度は50~60%を保つのがベストだと石原さんは言う。
「寒いかどうかは自分の感覚で判断せずに、温湿度計を置いて“見える化”すること。2時間に1回はチェックするといいでしょう。寒さを感じたら、すぐに体を温めてください」
離れて暮らす高齢の家族がいれば、とにかく密に連絡を取ろう。
「夜から朝にかけて気温が下がるので、低体温症は明け方に増えます。ひとり暮らしの高齢者の家族がいる人は、毎朝連絡を取るようにすると異変に気づきやすい」(横堀さん・以下同)
持病がないと思っていても、突然体調が悪化することはある。「私に限っては大丈夫」と過信せず、定期的に健診を受けるなどして健康状態を確認しておこう。
「ふだんから健康管理ができていない人ほど、低体温症になりやすい。持病がある人はかかりつけ医と連携をとって、血糖値や血圧の管理などを行い、体調を整えておくことです。発作が起きたり、低体温を疑われる症状が出たときは、すぐに病院に行くか救急車を呼んでください」
まだまだ寒い日が続く季節、室内での凍死リスクを念頭にしっかり対策しよう。
※女性セブン2025年2月6日号