料理・レシピ

《66才のアフリカ1か月ジャーニー》人気料理家・瀬尾幸子さん「まさに昭和の日本の朝食がセネガルでも!」

滞在中、唯一観光に行ったゴレ島で木彫りのチーターを購入。「フェリーで30分ほどで行ける美しいゴレ島は、奴隷貿易の歴史を伝える世界遺産でえもあります」(写真/本人提供・以下同)。
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料理研究家の瀬尾幸子さんは、現在66才。テレビや雑誌などで活躍するキャリア30年以上のベテラン料理家で、初心者でもおいしく作れる家庭料理のレシピには、ファンが多い。

瀬尾さんは2024年の12月から2025年の1月の約1か月、アフリカのガーナとセネガルに滞在して、現地の人から家庭料理を学んだ。還暦を過ぎて初のアフリカ旅行に挑戦した理由や、まったく未知のアフリカの料理について聞いた。【セネガル編】

ガーナに約2週間滞在した後、飛行機で3時間ほどのセネガルへ移動。セネガルはガーナと同じ西アフリカ位置し、西は大西洋、西南はサハラ砂漠に面している。

「砂漠が近いので舗装されていない道は砂地が多く、まだ荷馬車が活躍していました。気温は日中26℃、朝は18℃くらいと過ごしやすかったですね。
ホームステイ先は首都・ダカール。かつてここで行われていた『パリ=ダカールラリー』のゴール地点だった場所で、活気のある街です。ホストファミリーのマンボイさんは仕立て屋を営んでいて、私も市場で買ってきた布でドレスを作ってもらいました」(瀬尾さん・以下同)

ホームステイ先のマンボイさんに仕立ててもらったドレス。セネガルはアフリカで一番おしゃれな国とも言われる。
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「ガーナとセネガルの食事は似ているところも多々ありましたが、大きく違うのはセネガルの朝食にはパンが欠かせないこと。これはフランスの植民地時代の名残ですね。朝食用のパンは、形はフランスパンに似ていますがもっとサクサクしていて軽い。これとインスタントコーヒーの『ネスカフェ』に牛乳から作られた『ニド』(パウダータイプのコーヒーフレッシュ。日本では‘70年代前後に発売)を入れて飲むのが定番。まさに昭和の朝ごはんなんですよ!」

朝食に欠かせないフランスパンに似たパンに、チョコレートペーストや、ツナ缶を玉ねぎやスパイスなどで炒めたものを挟んで食べる。
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「セネガルの主食は、ほぼ米。日本の米と違って、小粒でパラパラしています。聞くところによると、タイの破砕米を輸入したところ現地の人の食生活に合っていたこともあり定着したようです。フランスで多く食べられている『クスクス』にもちょっと似ていましたね」

セネガルでは昼食がメインの食事になるという。このとき食べるのは、炊き込みご飯の上に野菜や肉、魚などの具がのった料理。
「基本的な作り方は、まずパラパラの米をさらにパラパラになるように蒸します。一方で肉や魚、野菜などをスープで煮込み、具だけを取り出します。たっぷり旨みが出たスープに蒸し上がった米を入れて炊き、できた炊き込みご飯を器に盛って取り出した具をのせたら完成。料理を盛る大きくて丸い器はいつも同じものを使いますが、盛られる料理の味や見た目はまったく違うんです。
できた料理をみんなで輪になって囲み、シェアしながら食べます。現地の人は手を使って食べるのですが、暗黙のルールとして自分の前のものだけを食べる。向こうのものが食べたいときは手を伸ばさず取ってもらう。皆で分け合いつつ、周りに気をつかいながら食べるのは、まさに私たちが鍋料理を囲むイメージですね(笑)」

鶏肉やパプリカなどを使った華やかな一品。「料理はホームステイ先のお料理担当、アナちゃんに教えてもらいました」。
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セネガルの食事も日本人の口にはすごく合うと思いますよ。市場で売られている野菜も、じゃがいも、にんじん、キャベツ、パプリカなどなじみがある野菜がほとんどでした。でも、ラッキーなことに今回の旅では知らない食べ物も全ておいしく食べられました。『知らない』や『見たことがない』を体験するのが旅の楽しさ。例えば『こっちにも大根があるんだ!』、『でも日本とは使い方が全然違うんだ!』という両方の発見が楽しかったし、勉強になりましたね。

ゴロっと大振り野菜と魚がのったメニュー。丸盛りの野菜を崩しながらご飯と一緒に食べる。
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帰りは30時間かけて日本に帰国。
「移動だけでも大変な体力を使う旅でした。私、ダンスを始める2年前までは筋肉が全然なくて、信号が赤に変わりそうな時は絶対走らないタイプだったんですよ。皆さん感じると思いますが、60才を超えるとどんどん体力が落ちていく。がんばっても横ばい。それがダンスを始めたことで信号が変わりそうな時は走れるようになったし、エスカレーターより階段を選ぶようになりました。この年齢で体力が上向きになったことで、やりたいことは一刻も早くやったほうがいいと痛感しました。
今回のアフリカ旅行も、『あー本当は行きたかったんだよなー』と思いながら75才になっちゃうよりは、思い切って早く行った方がいいと思って。だっていまが私の人生の中で一番若いわけだし、コロナみたいな感染症の流行や世界情勢の変化で行きたくても行けなくなるかもしれないでしょ」

「またアフリカに行くとしたら体調を整えて、体力が落ちないようにしなくてはいけないので、『絶対に行く!』とは言えないですね。そのくらい大変な旅でした。でも、来年は行かないけど、もう少ししたらまた行っちゃうかもしれません(笑)」

(写真/豊田朋子)
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プロフィール
瀬尾幸子/1959年生まれ。大学卒業後、料理の世界に入り雑誌や書籍、テレビ出演など幅広いメディアで活躍。シンプルな素材で無駄な手順を省いた家庭料理のレシピは、料理初心者でもおいしく作れると人気。『60代、瀬尾幸子さんのがんばらない食べ方』世界文化ホールディングスほか、著書多数。

取材・文/丸山月世美

 

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