
構想から15年の歳月をかけてたどり着いた”最高到達点”
アンコールまで、MCは一切なし。その理由を、「前回のツアーで本編30分、アンコール30分、合計1時間も話していて。トークショーになっちゃうから、今回は時間制限を設けることにした」と笑いながら明かしたNissy。制限があると言いながらも、ついついタイムオーバーをしながらのMC中に、ふと、東京公演がツアーのセミファイナルだと口にして「言わなきゃよかった……」と寂しさを滲ませた。

アンコールのあと、サプライズで再登場して歌った『どうしようか?』では思いがあふれ出し、その目には涙が。2013年8月にNissyとして初めて世間に発表したこの曲は、表層的には片思いをしている男性の心情をつづった歌詞だが、実は「何もかも八方塞がりで、生きることを諦めかけたときにつくった」という作品で、自分自身へ向けたラブソングでもあったという。
「ライブの構想は23歳の頃から考えていたけど、企画書を書いても全然理解されなくて、なんで分かってもらえないんだろうと思っていた」とMC中に明かしたように、ソロアーティストとして動き出すことさえ難しかったときを乗り越え、構想から実に15年の歳月をかけてたどり着いたNissy史上最高のエンターテイメント。
気がつけばそれは、Nissyのエンターテイメントを愛してやまないファンと共につかんだ2度目の6大ドームツアーの場で花開き、ソロアーティストとして史上初の快挙を成し遂げた。全公演ソールドアウトという満開の花を添えて。
“最高到達点”として完成させた今回のベストドームツアーは、まさにBest of the Best。この先のことはまだわからないが、ドームに集まった5万人に向けて、チケットを買って来てくれたことは当たり前のことではないと深々と頭を下げていたNissyは、感謝の気持ちを胸に、ファンのためへと次のステップを踏み出すだろう。ただただ目の前にいる人を喜ばせて、幸せにするために。それがどんな形であれ、Nissyの手にかかれば、それはNissy Entertainmentになることだけは確かだ。

(2月20日、東京・東京ドーム、『Nissy Entertainment “Re:10th Anniversary Final” BEST DOME TOUR』)
撮影/田中聖太郎