健康・医療

【本当に必要なのか?】見直すべき「治療」「薬」「健康食品」 人気の自由診療、民間療法に潜むリスク、「にんにく注射」や「高濃度ビタミンC点滴」には健康効果のデータなし 

受けても意味がない医療や危険を及ぼす医療がある(写真/PIXTA)
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人生100年時代といわれるいま、医療費は右肩上がりで、2023年度の総額は47.3兆円と、3年連続で過去最高を記録した。医療費増加の理由として指摘されるのは、高齢者の増加だ。しかし、医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは「“無意味な医療”の蔓延も医療費拡大に拍車をかけている」と言う。そこで「受けても意味がない医療」、むしろ「危険を及ぼす医療」を取材した。

いちばんの無駄はかぜで病院にかかること

国民皆保険の日本では、不調があれば誰でも容易に医療機関で治療を受けることができる。だがその半面、意味がない治療も生まれやすい。血液内科医の中村幸嗣さんは、「いちばんの無駄はかぜで病院にかかること」と話す。

「かぜを治す薬はありません。わざわざ体調が悪いときに病院に行って、待つ時間や診察費がもったいないと考えた方がいい。症状が悪化したり、治りが遅い場合は受診にも意味が少しはありますが、咳止めや解熱剤など症状を緩和する薬なら、市販薬でも効果は同じです」(中村さん)

70才以上の半数近くがのんでいるといわれる降圧剤は、むしろ健康に悪影響を及ぼす可能性がある。函館稜北病院総合診療科の舛森悠さんが語る。

「年齢によって必要な薬は変わります。高齢者は自然と血圧が下がることがあり、薬で厳しく下げすぎると、転倒などのデメリットが大きい。また、高齢になれば降圧剤をのんでも寿命が延びないこともわかっています」(舛森さん)

降圧剤は健康に悪影響を及ぼす可能性がある(写真/PIXTA)
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年齢を重ねるとともに通う機会が増える整形外科の分野でも、無意味な医療はあふれている。

千葉県在住の主婦・Bさん(61才)がこう憤る。

「突然ひざが痛みだしたので近所の病院に行くと、なぜか腰や足首のレントゲン検査までされました。“痛いのはひざです”と伝えても“必要だから”とのこと。座骨神経痛と診断され、痛み止めをのんで様子を見ることになりました。

でも痛みが強くなる一方で、別の病院にかかったらひざに水がたまっているのが判明し、抜くと痛みは治まりました。誤診のうえにあのレントゲンは何だったのか……。いまだに納得がいきません」

中村さんは、整形外科では不必要な写真を撮ることがあると指摘する。

「レントゲンやCT・MRI検査などは機材費が高いので、採算をとるために不要な人でも撮影し、診療報酬を得ようとする医師がいます。

腰痛や軽度の打撲の場合、骨に異常がないことがほとんどなので撮影は不要だと覚えておきましょう」