健康・医療

現役医師が“がん検診”のリスクについて本音で座談会「会社や自治体の検診では不充分」な現実、がん予防のためには「一般的な健康を意識した生活」で充分 

うわべの安心より日頃の養生

D:がん検診を受ける前に、まず自身の生活を改めることに無頓着な人が多いことも気になります。がんの予防に大事なことは、たばこを吸わないことや、過度の紫外線を浴びないようにすること。また、カロリーの摂りすぎに注意し、食事のバランスを考え、適度な運動もする。つまり、一般的に考えられるレベルの健康を意識した生活を心がければ充分なのです。そのうえで、何か気になる症状があったら医療機関を受診すればいいと思います。

C:そうですね、がん検診を受けたとしても、常日頃の自分の体調の変化に気配りすることがいちばん大切なことです。そのうえで、なにか変化や不調を感じたり、疑わしい症状が出たら医療機関を受診するといい。

A:私も決して、すべての健康診断を否定しているわけではありません。がん検診ではありませんが、血圧、血糖値、コレステロールの3つは時々測ってもらうべきでしょう。これらの数値をあらかじめ把握しておけば、自分の努力で健康寿命を延ばすことに役立ちます。実際、生活習慣を改善すれば検査値を改善することができますし、がんはもちろん、さまざまな病気の予防につながることも証明されています。

C:乳がんは女性の9人に1人が罹患するといわれますし、子宮頸がんは毎年約1万人の女性がかかり、3000人ほどが亡くなっています。胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの5種類の検診は公的に推奨されていて、ほとんどの自治体で金銭的な補助が出ているので、コストパフォーマンスは高いです。

D:日本人は一生涯で2人に1人ががんになるといわれています。数値を見ると高い確率のように思えますが、逆に言えば2人に1人は“がんにならない”といえるのです。がん検診でうわべだけの安心を得るのではなく、健康的な生活を送り、体の変化を感じたときは医師の診察を受ける。

A:そうですね。がんを不安視するのであれば、喫煙者はいますぐにでもたばこをやめましょう。そして、肥満はあらゆる病気の原因ですから予防すべきです。そして、こまめに運動を行いましょう。病気になったら絶対安静といわれたのは昔のことで、現在では運動が治癒を促進すると考えられるようになりました。私は、ほとんどのがんは個人と社会の努力によって、予防できると考えています。

部位別、女性のがん罹患数と死亡数
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※女性セブン2025年5月22日号