発がんリスクのある「ホルモン剤」が使われる牛肉
食肉製品では、冷凍の豚肉(加熱後包装)から大腸菌「E.coli」が検出される違反があった。
「E.coliはO-157など糞便系の大腸菌の総称で、食中毒を引き起こして死に至るケースもあります。一般的にアメリカ産の豚肉はハムやベーコン、ハンバーグなどで使用され、加熱調理が不充分な豚ひき肉製品などから大腸菌が検出されます」
アメリカ産食肉のリスクは大腸菌だけではない。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんは「ホルモン剤」に警鐘を鳴らす。
「ホルモン剤は牛の成長を促進させる目的で使用する化学物質で、女性ホルモンのエストロゲンが代表的です。発がん性が指摘されるため日本国内では使用が認められていませんが、輸入肉は国内に入れる際の検査が“ザル同然”で見逃している状態です。
また、ホルスタインに注射すれば乳量が3割増えるというホルモン剤『ボバインソマトトロピン』も発がん性リスクが指摘されており国内では使用が認められませんが、ホルモン牛肉と同様に検査を素通りして輸入されている可能性があります」(鈴木さん・以下同)

牛肉だけでなくアメリカ産豚肉にも警戒が必要だ。
「アメリカ産の豚肉には、興奮剤・成長促進剤の『ラクトパミン』を使用したものがあります。これも人体への有害な影響が指摘され、ラクトパミンに汚染された豚肉を食べて中毒症状が出た例が報告されています。ゆえにEUやロシア、中国では軒並み輸入禁止ですが、日本は国内での使用は禁止にもかかわらず、輸入品はほぼノーマークで入ってきます。恐ろしいことに、ホルモン剤やラクトパミンは食品表示が義務づけられていないため、使用の有無が消費者には判断できないのです」
汚染された餌から人間へとリスクが伝達されるケースも想定される。小倉さんが指摘するのは、毒カビ・アフラトキシンに汚染されたトウモロコシが乳牛の餌となるパターンだ。
「日本に輸入する際、アフラトキシン汚染が見つかったトウモロコシは餌に回り、もともと餌用のトウモロコシはノーチェックで検査を通過します。
汚染されたトウモロコシを餌として食した牛の肝臓で代謝されたアフラトキシンは血液に流れ込み、牛乳として外に出されます。代謝により、“天然最強の発がん性物質”の毒性は10分の1程度に薄まるとされますが、それでも人間がその汚染牛乳を飲んだら健康被害が生じる可能性があります」(小倉さん)
アメリカの顔色を見て「規制緩和」を繰り返してきた歴史
アメリカ産食品の問題の背景にあるのが、日米の歪な力関係である。過去に日本はアメリカの顔色を見て、国民の健康を考慮しない「規制緩和」を繰り返してきたという。
その発端は1975年にさかのぼる。アメリカ産のレモンから膀胱がんの原因物質とされた際に、日本では使用禁止の防カビ剤「オルトフェニルフェノール」や「チアベンダゾール」が検出された。
当初、日本はレモンを海洋投棄して、アメリカにこれらの防カビ剤の使用禁止を求めた。
「これにアメリカが激怒して、日本の自動車の輸入を制限すると脅しをかけました。すると日本は『農薬としては禁止だが、収穫後に散布したので食品添加物とみなします』と防カビ剤の規制を緩和してしまった。以降、日本は同様の“規制緩和”をほかのアメリカ産食品にも適用しています」(鈴木さん・以下同)
鈴木さんが特に気がかりなアメリカ産食品は「じゃがいも」と「小麦」だ。
「じゃがいもに使われる強力な農薬『ジフェノコナゾール』には発がん性や神経毒性が指摘されますが、日本はかつてのレモンと同様に農薬を食品添加物とみなすルール変更を行いました。また、小麦に使われる除草剤は発がん性のほか、腸内細菌を殺してさまざまな疾患を誘発する危険性が指摘されています。一部でこの見解は否定されていますが、世界各国で規制が強化されるなか、日本は残留基準値を緩和しました。残念ながら、日本人の命の基準値はアメリカへの忖度で決まるのです」


(第3回に続く。第1回から読む)
※女性セブン2025年6月19日号