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《漫画家・ひうらさとるさんは“ソロ海外移住”計画》人生後半戦を充実させるコツはおひとりさまデビューと社会貢献

スイスの風景
生きがいについて漫画家・ひうらさとるさんらが教えてくれた(写真/Photo AC)
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子供たちは独立し、仕事もひと段落して人生は新たなステージに。そこで「何か新しいことをはじめよう」と考えている中高年は多い。ひと足先に「はじめた」『女性セブン』読者の声(メールマガジン「女性セブン倶楽部」にて5月17~26日にアンケート調査を実施)を紹介。「やりたいことがない」「退職後の夫にも聞かせたい」という人は必読!

達人の声

まずは、漫画家・ひうらさとるさんとライフ&キャリア研究家・楠木新さんが実践している「生きがい」について紹介する。

漫画家・ひうらさとるさん(59才)「60代からの“ソロ海外移住”計画」

「年上世代の知り合いを見ていると、海外移住や起業など負荷の高い活動ができる限界は70代半ばくらいかな、と感じます。自分自身、元気で動けるのはあと十数年だと思ったら、いま行動すべき!と気づきました。漠然と考えていた海外移住の思いに現実味が出てきたのです。

昨年、娘のサマースクールに同行してスイスに1か月滞在し、そこで1本漫画を仕上げることができたんです。それも、移住の決心がついたきっかけの1つです。

移住といっても1か所に骨を埋めるのではなく、ビザなしで滞在できる3か月ずつ、行きたい国を回ろうかと考えています。

準備としては、英会話の勉強と、友人の紹介やSNSを通じて行きたい国に友達をつくり、情報を集めるくらい。ひとりでも知り合いができたら交流が広がるので、現地でも何とかなるだろうと楽観的に考えています(笑い)。

知らない土地に行くのだからトラブルが起こるのは当たり前。それを乗り越えるところに旅の価値がある。日本という安全圏から出て、自分の伸びしろをぎりぎりまで伸ばしたい。日本にいるだけでは得られない体験は、作品づくりにも生きるはずですから。

その間に、アフリカやペルーのマチュピチュなど、元気じゃないと楽しめない場所にも行かないと!(笑い)」

◆ひうらさとる

漫画家。ドラマ化された『西園寺さんは家事をしない』など代表作多数。新著にエッセイ『58歳、旅の湯かげん いいかげん』(扶桑社)がある。YouTubeチャンネル、Voicy「ひうらさとるの漫画と温泉」も好評。

楠木新さん(70才)「昔好きだったことをもう一度やってみる、憧れる人の“勝手弟子”になる、まずは行動する」

「趣味や仕事に打ち込むシニアは、どうやって生きがいを見つけたのか。長年の取材の中で、見つけ方に3つのパターンがありました。

1つは、幼少〜中学生頃までに好きだったことをもう一度やること。自分が純粋な思いで夢中になったものは長続きしやすいんです。手仕事好きが高じて会社員から提灯職人になった人や、定年後にボランティアで子供に工作を教え、喜びを見出した人もいます。

おすすめは、自分がいちばん輝いていた2〜3年間を振り返る『自分史ノート』をつけること。私の場合は中学時代、投稿した文章が格闘技雑誌に掲載されたことでした。40代半ばで会社勤めに悩んだとき、これを思い出して“書く”という新たな楽しみを見つけ、いまでは本業となりました。

2つめは、人柄や顔つき、仕事ぶりなど、自分が憧れる身近な人を見つけて『勝手弟子』になること。『憧れの師匠』の所作や言動を観察していると、自分の足りないところ、目指すべきものが見えてくるでしょう。

3つめは、頭で考えてばかりでなく行動すること。特に2つめと3つめについては、男性より女性の方がフットワークが軽いと感じます。

71才で吉本興業に入った『おばあちゃん』という芸人さん、70代、80代でSNSのインフルエンサーになった女性など、皆さん柔軟で行動力がある。女性は年を取ったなりの“自分の旬”を楽しめる人が多いですね」

◆楠木新

ライフ&キャリア研究家。大手生命保険会社在職中から取材・執筆活動をはじめる。多くの定年退職者やシニア女性への取材をもとに、『定年後』(中公新書)、『75歳からの生き方ノート』(小学館)などを出版し、話題となる。

老後にはじめたいことのランキング
老後にはじめたいとみんなが思っていることは? (イラスト/かたおか朋子)
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趣味・ひとり旅

自分の時間ができてはじめたことで目立ったのは、「推し活」などの新たな趣味。

「義父母と夫の長い介護生活が終わり、大好きなサザンオールスターズのコンサートや旅行を楽しめるようになりました。いま、ようやく自由のなかった40年間の穴埋めをしています」(61才自営業)

「推しの韓流スターのファンミーティングに参加して友達をつくり、美術館や博物館めぐりをして、懸賞に応募するために情報アンテナを敏感に…。好奇心のおもむくままに楽しんでいます」(60才主婦)

「終活のつもりで着物のリメークをはじめましたが、やってみると楽しくてハマりました。ミシンに向かうと、自分が無になるような心地よさがあります。被服費も減って、一石二鳥!」(67才無職)

「手話をはじめました。自分の知らない文化に触れることができ、視野が広がりました」(62才会社員)

「若いときから楽器演奏は好きでしたが、あえて未経験のバイオリンサークルに入会しました。下手なりに楽しくやっています」(73才主婦)

「自分で料理を作るようになり、レパートリーが広がっています。いまからでも遅くない、チャレンジあるのみ!」(70才パート)

旅行する女性
老後の趣味としてひとり旅が人気(イラスト/かたおか朋子)
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なかでも多かったのが、「ひとり旅」をはじめた人たちだ。

「推しの地方ライブに参加することで、ひとり旅の楽しさを知りました! 健康・時間・お金の三拍子そろうのが60代。いまが人生でいちばん自由で楽しいです!」(62才会社員)

「夫の死をきっかけに、ひとりで何でもできるようになろうと思い、ひとり旅をはじめソロ活を実践中。ポジティブで健康になりました」(62才パート)

「ひとり海外旅にチャレンジ中。台湾、香港、韓国になんとか行けて、“自分はまだ大丈夫”と自信がつきました」(67才主婦)

野菜の高騰も手伝って、家庭菜園にハマる人も増えている。

「きゅうり、トマト、おくら、レタス…。野菜の成長を見ることで癒されますし、無農薬の新鮮な野菜が食べられるのもうれしいです」(75才主婦)

「土づくりから収獲まで膨大な準備と時間がかかりますが、野菜づくりには何がどれだけ必要なのかがよくわかってありがたみを感じる」(64才無職)

植物を育てる女性
家庭菜園で一石二鳥!(イラスト/かたおか朋子)
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ボランティア活動

「定年退職後、小学生の補習授業のアドバイザーを1年間務めました。言うことを聞かない子供もいて苦労しましたが、総じていい経験になりました」(68才パート)

「食品メーカーの商品開発のモニターに参加しています。いろいろなものが食べられるので、次は何かしらと、毎回ウキウキしながら応募しています」(68才無職)

「子供たちに紙芝居の読み聞かせをしています。興味深く聞き入る子供の表情を見ると、とてもうれしい気持ちになります」(68才主婦)

「病児保育のボランティアをはじめました。働くママが、お子さんが体調不良でも仕事を休めないときに預かる施設です。体調が急変しないよう注意を払う必要はありますが、小さな子供と過ごすのは数十年ぶりで懐かしく、はじめてよかったなと感じます」(62才パート)

「町内会の役員として月2回、夜間の防犯パトロールをしています。いままで交流することのなかった地域の人とのつながりができてよかったです」(62才会社員)

こども食堂やヘアドネーション、神社の掃除、街のゴミ拾いという活動も。いずれも誰かの役に立つという充足感が、心身の健康に好影響をもたらしているようだ。

※ヘアドネーションとは、事故や病気などで髪の毛を失った子供たちのために、医療用ウィッグの素材として自分の毛髪を寄付するボランティア活動のひとつ。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2025年7月3・10日号

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