
度重なる値上げに増税、医療保険料の負担増、そして年金の“大改悪”と、老後資金への不安はますます募るばかり。老後の暮らしをシミュレーションするうえで忘れてはいけないのが、女性の「おひとりさまリスク」の大きさだ。夫に先立たれひとりになったそのとき、本当はいくら必要なのか。【全3回の第2回。第1回を読む】
専業主婦の老後は200万円以上の赤字
まず、老後のひとり暮らしにはいくらかかるのか。
総務省の家計調査によれば、高齢単身者の平均的な生活費は月に14万9286円となっている。だが、住む場所や生活スタイルによっては、これでは少なすぎるかもしれない。ファイナンシャルプランナーの服部貞昭さんが解説する。
「家計調査では、住居費を1万2693円として計算しています。持ち家ならまだしも、賃貸ではそれで済むわけがない。65才以上の全国平均の家賃4万7689円に置き換えると、老後おひとりさまに必要なお金は最低でも月に18万4282円ということになります」
この金額を男女の平均寿命の差である「夫の死後6年分」で計算すると、必要な総額は1326万8304円となる。
それでは、受け取れる年金はどれくらいなのか。2025年度では、基礎年金のみの場合は月額約6万9000円で年間約83万円、6年間なら約500万円になる。ここに夫の遺族厚生年金や、自分も働いていた場合には厚生年金が上乗せされるが、金額は現役時代の年収や働いていた期間によって変わる。

「夫と死別した場合には、夫の厚生年金(報酬比例部分)の4分の3を遺族厚生年金として受け取れますが、自分(妻)自身が厚生年金をどれくらい受給しているかで受け取り方は変わります」(服部さん)
就業者の賃金実態の統計である厚労省の「賃金構造基本統計調査」(2024年)をもとに、服部さんが、夫と死別した妻の年金収入を試算した。
【1】「第3号被保険者(ずっと専業主婦だった)の場合」、6年間の年金収入は1121万1294円、【2】「30才まで厚生年金に加入し、以後は専業主婦の場合」、1243万7460円、【3】「定年まで働いて厚生年金を満額もらえる場合」なら、大卒の場合は1804万7718円、高卒だと1581万4680円となる。
前出の“必要な生活費”と照らし合わせると、【1】なら205万7010円不足、【2】なら83万844円の不足、【3】で唯一黒字となる計算だ。
2700万円あれば安心して生活できる
場合によってはもっと多くのお金が必要になるケースもあることを、忘れてはいけない。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが言う。
「女性の生涯医療費約3000万円のうち、80才から亡くなるまでの間には平均929万円、1割負担だと92万円がかかります。入院すれば差額ベッド代など、保険適用外のお金がかかることもあるので、医療費として150万〜200万円は余分にあった方が安心できます」
介護費用は、生命保険文化センターの調査によればリフォームなどの一時的な費用約47万円を加えると、1人あたり約542万円が平均となる。
「余裕をもって安心した老後を送るためには、生活費として月約15万〜20万円のほか、医療費150万円、介護費用540万円、家電の買い替えなどの予備費として200万〜500万円もつくっておきたい。そうなると、2000万〜2700万円あれば、ひとりでも安心して生活できるといえるでしょう」(黒田さん)
“目標金額”を2700万円とすると、前出の【1】のパターンでは1578万8706円、【2】でも1456万2540円もの不足額が出る。平均的な生活費で計算した場合は黒字になっていた【3】のパターンも、大卒で895万2282円、高卒で1118万5320円が不足するという試算に。医療や介護にかかる金額は人によって大きな違いがあるうえ、長生きすればするほど、かかるお金も増えていく。男性よりも寿命が長いからこそ、女性の老後は“長生きリスク”との闘いなのだ


(第3回に続く。第1回を読む)
※女性セブン2025年7月17日号