更年期以降が危険なワケ
「女性は20代から徐々に筋肉が減少するうえ、更年期で女性ホルモンの分泌が大幅に低下します。すると、自律神経が乱れて血流が滞り、より冷えを感じやすくなるのです。
さらに問題なのが、毛細血管の“ゴースト化”。血管はあるのに血液が流れていない『ゴースト血管』が、加齢で促進するのです。
毛細血管は全身の細胞へ酸素や栄養素を届けるという重要な役割があるため、ゴースト血管が増えると血流がみるみる滞る。しかも、70代で約4割の毛細血管がゴースト化するともいわれています」
漢方医学には、人間の体は「気・血・水」で構成されるという考え方がある。「気」は元気、気力など目に見えないエネルギー、「血」は血液と栄養素、そして「水」は血液以外の体液を表す。
「3つのバランスが整った状態が健康とされるため、『血』が滞って冷えを生むと、『気』『水』のバランスも乱れてさまざまな不調が起きるのです」

血の滞りで起こる日常の不調は、むくみや肥満、肩や腰のこりや痛みなどだ。
「低体温で代謝が下がると、体脂肪が燃えにくくなって暴飲暴食をしていなくても太りやすくなる」
冷えが高じると、生活習慣病に至ることもある。
「内臓も筋肉ですから、冷えて血行が悪くなると胃痛や消化不良が起こるほか、腸では便秘や下痢、お腹にガスがたまるなどの不調も。ひどくなると、高血圧や脂質異常症、糖尿病のリスクも高まります。生活習慣病には、『冷え』も大きくかかわっているのです。『血』の滞りと連動して『水』が滞ると、肌の潤いが不足し、かゆみや乾燥を引き起こします。そして、『気』が滞れば気分の落ち込みや不眠というメンタルの問題が生じる。漢方医学で『冷えは万病のもと』というのはその通りで、冷えを軽く見てはいけません」
すでに各地で熱中症警戒アラートが発表されているが、冷えは熱中症の発症リスクをも高めるという。
「四季がはっきりしていた時代、体は汗をかくなどして徐々に暑さに順応する『暑熱順化』ができていました。しかし、低体温になると汗腺を閉じたり開いたりする能力が低下するため、昨今のように急に暑くなると体温調節がうまくいかず、体の中に熱がこもって熱中症になるのです。
とはいえ、いまの気候で冷房をがまんするのは危険ですから、部屋は涼しいまま“温活対策”をする必要があります」
温活のためには、まず自分の体温を知ることだ。
「代謝、免疫力ともに高い健康な人の体温は36・5〜37℃とされていますが、現代の環境を考えると36・5℃あれば理想的で、最低でも36℃はあってほしいですね。35℃台のかたは、すぐに温活にとりかかる必要があると思います」
体温は、いつどう測るのがいいのだろうか。
「朝の起き抜けは体温が低く、14〜15時はいちばん高くなる時間帯なので、間をとって午前10時頃、脇の下で測定してください」
臓器、美容、代謝、免疫力、メンタルの健康は、「適正体温」になってこそ叶う。先述の「ゴースト血管」も、温活に励むことで進行を食い止めることができる。