
老後、夫に先立たれて「おひとりさま」になる女性は少なくない。彼女たちの多くはこう語る。「夫が亡くなった後は、悲しむ暇もないほど忙しかった」と。人が最期を迎えた後にすべきことは、葬儀だけではない。特に夫を亡くした妻は、ありとあらゆる手続きを自分ひとりで行わなければならない“現実”に直面し、呆然とする人は多い。だが実は、制度やサービスをうまく使いこなせば、「最短ルート」で手続きを終えることも可能。手間を最小限に抑えた「夫を亡くした妻の手続き」について、専門家に聞いた。【全3回の第2回。第1回から読む】
マイナンバーが頼りになる味方に
死後の手続きを最短で済ませられる“最強アイテム”は、マイナンバーだ。夫がこれを持っていれば、厚生年金・国民年金受給権者死亡届の提出(日本年金機構にマイナンバー登録がある場合)のほか、国民健康保険や勤務先の健康保険、後期高齢者医療保険などの資格喪失手続きも、死亡届の提出と同時に自動で処理されるため、面倒な手続きが不要になる。
マイナンバーカードを作成しておけば健康保険証、運転免許証、印鑑登録証明書などと同じく、亡くなった後に使用されることがないため返納する必要もない。
日本年金機構にマイナンバー登録がない場合は、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内に受給権者死亡届を年金事務所に提出しよう。年金の手続きは、忘れると大損につながる。FPラウンジ代表でファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんが言う。
「受給権者死亡届を出さないまま年金が振り込まれると、場合によっては不正受給を疑われることがあり、これは遺族年金の受給の遅れにもつながります」

受給権者死亡届は、年金事務所に提出する。その際、同時に“請求しないともらえない年金”の手続きも忘れてはいけない。年金は2か月ごとに振り込まれるため、亡くなると必ず、その前後いずれかの月の分の「未支給年金」が発生し、これは請求しないと受け取れないのだ。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが語る。
「未支給年金の請求期限は死亡から5年以内ですが、受給権者死亡届や遺族年金との請求と同時に行えるので、忘れないうちにまとめて請求しましょう」
夫が会社員で遺族厚生年金を受け取れる場合は勤務先が手続きするため、妻が動く必要はない。一方、夫が国民年金の受給権のみ持っていた場合は、自分で手続きが必要。遺族基礎年金は子供(18才未満)がいる場合のみ受け取れる。
「亡くなった夫が国民年金で18才未満の子供がいない妻は、受給資格があれば『寡婦年金』か『死亡一時金』のいずれかを選んで請求しましょう。妻が60才以上65才未満だと寡婦年金の対象になり、夫の老齢基礎年金の4分の3を受け取ることができます。一方の死亡一時金は国民年金保険料を納めた期間に応じ、12万〜32万円ほどです」(豊田さん)
年金にかかわる手続きはすべて年金事務所で済ませられる。一度で終わらせるためには、書類はぬかりなく揃えておく必要がある。
「すべての手続きで必要な死亡診断書(コピー可)、亡くなった人の戸籍謄本、住民票の除票、亡くなった人と請求者のマイナンバーカード、請求者の身分証明書と印鑑のほか、請求者の所得証明書、振込先の口座情報がわかるもの(通帳など)や夫の年金証書、夫と自分の年金番号がわかるもの(年金手帳など)が必要です」(三原さん・以下同)


(第3回に続く。第1回から読む)
※女性セブン2025年7月31日・8月7日号