健康・医療

《60才「老化の壁」の乗り越え方》「60代は病気の見本市」心身ともに下り坂であることを受け入れる“意識改革”が重要 参謀としての「かかりつけ医」を見つけることも

インスタントラーメンを食べるなら卵をちょい足し

食事面の老化の壁は機能低下によるさまざまな変化によりもたらされる。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の森由香子さんが指摘する。

「加齢によって味覚や嗅覚、食欲の低下が起こりやすく、いつもの味に近づけようとして味付けが濃くなり、ナトリウム(食塩)摂取量が増える可能性があります。また60才になると咀嚼や嚥下機能の低下、歯のトラブル、唾液の分泌量の減少なども生じやすく、逆流性食道炎も多くみられます」

若い頃と食事量が変わらないのに体重が増えやすくなることも。

「60代になると基礎代謝が落ちて若いときと同じ食事の量でも内臓脂肪が増えやすくなります。体重測定を日課にして増減を意識することが大切です」(森さん)

人間の体は食べたものでできているだけに、食事の内容にも一層気を配りたい。

「さっぱりしたものしか食べたくなくなるのは危険信号です。たんぱく質が不足して、体重はあるけど筋力が乏しい“隠れ栄養失調”の可能性があります。もちろん、食が細くなって体重が減少するのも危なく、健康と要介護の間であるフレイルになるリスクが高まります」(吉村さん)

食事の壁をどう乗り越えるか。舛森さんは「60才からは何を食べるかが、薬以上に体を守る」と話す。

「健康長寿の源は筋肉です。日々の食事では体重1kgあたり1.2gを目安に肉・魚、大豆製品、卵などたんぱく質を豊富に含む食材を毎日食べてほしい。特に『朝の卵&チーズトースト』など、朝食でしっかり栄養を摂ると一日をアクティブに過ごせます。骨の材料のカルシウムと、その吸収を助けるビタミンDをセットにした『しらすと青菜ときのこのソテー』も理想的な組み合わせです」

さばやいわしなどの青魚に含まれるEPA、DHAは健康長寿の天敵である動脈硬化を予防する。さば缶などを積極的に食べたい。

加齢とともに食が細くなり、日々の食事は簡素になりがちだが、わずかな努力が大きな実を結ぶ。

「粗食が美徳とされたのは昔のことで、健康に長く生きるにはしっかり食べることが大事です。どうしてもインスタントラーメンを食べることをやめられなければ、卵を1個加えたり、納豆を1パック食べるといった“ちょい足し”をすれば、栄養面がリッチになります。食事を豪勢にする必要はないので、栄養をちょい足しするくらいの心持ちでいてほしい」(吉村さん)

60才からの食事は量よりも、質やバランスが重要と説くのは森さんだ。

「1日10品目を目安に多様な食材を摂ることを心がけてください。特に女性が骨密度を維持するためには、若い頃からたんぱく質やカルシウム、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンKなどをバランスよく摂取することが肝要です。また食事の際はきれいな器を使って彩り豊かに盛り付ければ、視覚的な満足度が高まって味覚の低下による影響を抑えられます」

実際の食卓では「カーボラスト」「ゆっくりよく噛んで食べる」を意識して、食後の血糖値の急上昇を抑えることも忘れずに。

年齢別高血圧患者数
写真4枚
年齢別全がん罹患者数
写真4枚

(後編に続く)

※女性セブン2025年8月14日号

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