「戸籍集め」は「広域交付制度」を利用する
財産の照会ができるのは相続人だけで、場合によっては相続人であることを証明する戸籍謄本などが必要になることもある。このため、財産総額のチェックと並行して、相続の準備でもっとも面倒だといわれる「戸籍集め」にも着手しておくのがベスト。
具体的には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等と相続人全員の戸籍謄本を入手すること。これらの書類はこの後のあらゆる相続手続きに必要になるため、序盤に終えておくと一気に効率的に進められるようになる。この戸籍集めには、昨年から便利な制度が使えるようになった。
「亡くなった人の戸籍謄本等を揃えるには、出生から死亡までの戸籍謄本を、本籍地があった自治体で取得する必要があり、場合によってはそれだけで数か月かかることもありました。ところが、2024年3月からスタートした『広域交付制度』では、配偶者や子供といった直系血族なら、最寄りの役所で一度申請するだけで、亡くなった人の戸籍謄本一式が1週間ほどで手に入るのです」(明石さん)
相続人自身の戸籍謄本や住民票、印鑑登録証明書などは、自治体によってはマイナンバーカードを使ってコンビニのマルチコピー機で取得できる場合もある。これらを利用すれば、書類集めは格段にラクになる。
必要書類が揃ったら、この後に待ち受ける遺産分割協議や相続税の申告、亡くなった人の銀行口座の解約、株式の移管、不動産の所有者変更の登記と、あらゆる相続手続きをスムーズにするための最強アイテム「法定相続情報一覧図」をつくることができる。
「亡くなった人と相続人の関係を示す図です。1つの手続きのために戸籍謄本の束を提出すると、返却されるのを待たないと次の手続きに進めなかったのが、一度に何枚も取得できる法定相続情報一覧図があれば、複数の手続きを同時に進めることができるようになるのです。しかも発行は無料で、有効期限もない。
ここまでに集めた亡くなった人のすべての戸籍謄本等、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、住民票などの書類と、自分で書いた相続関係図を持って最寄りの法務局で申請しましょう。法務局のウエブサイトに図の書き方があるので、それに従えば難しくはありません」(板倉さん)

(後編に続く)
※女性セブン2025年8月14日号