健康・医療

《100才まで正常に機能する腎臓と肝臓を維持するための「生活習慣」》運動はウォーキングなどの有酸素運動と筋トレ 食事では減塩に気をつけ、たんぱく質を摂りすぎない

健康な腎臓と肝臓を維持するためには、ウォーキングなどの有酸素運動がベスト(写真/イメージマート)
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機能が低下しても自覚症状が出ない腎臓と肝臓は「沈黙の臓器」といわれる。それだけに、ひょっとしたらあなたの腎臓と肝臓は気づかぬうちに悲鳴を上げているかもしれない。しかし、正しい知識を持てば、100才まで正常に機能するかもしれない。あなたと家族の命を守るため、その“声なき声”に耳を傾けたい。【前後編の後編。前編から読む

過剰なたんぱく質が腎臓の負担になる

100年元気な腎臓を作るにはどうすればいいのか。山形県立保健医療大学学長で腎臓専門医の上月(こうづき)正博さんは「適度な運動習慣が欠かせない」と話す。

「ウォーキングなどの有酸素運動がベスト。血液中に酸素が取り込まれて血流が改善することで、腎臓にかかる負担が減ります。強度は中程度で、脈が安静時より20〜30増えるくらいの早歩きがちょうどいい。1日20〜30分くらい、1週間でトータル150〜180分ほど行ってください。腎機能の悪化を食い止めることができ、心疾患の予防にもなる。

ゆっくり歩きはあまり効果がなく、マラソンのように負荷が大きいとかえって腎臓を悪くします。サルコペニアやフレイルの予防になるので、あわせて筋トレも行うといい。スクワットがおすすめです」(上月さん・以下同)

元気な腎臓を作るには中程度の有酸素運動がベスト(写真/PIXTA)
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食生活でまず気をつけるべきは減塩だ。

「みそ汁は塩分が多いので、1日1回に控えること。かまぼこなどの練りものやソーセージ、ベーコン、ハムは意外と塩分が多い。時々ならいいですが、できるだけ回数を減らしてください。

糖尿病になると透析になりやすい。食べすぎや偏った食事をせずに、生活習慣病の予防治療をしっかりすることも、腎臓を守るうえで重要です」

意外にもたんぱく質の摂りすぎが腎臓に負担をかけることもある。

「いくら体にいいといっても、摂りすぎると腎臓に負担がかかってしまう。推奨されている量を守ってください。運動量にもよりますが、あまり運動をしない人なら1日の必要量は標準体重1kgあたり1g程度。65才以上の高齢者は吸収率が落ちるので、2割増が目安です。ただし、腎臓病の人はその程度によりたんぱく質制限が必要となりますので、主治医に確認してください」

お菓子などに含まれる食品添加物「リン」にも気をつけたい。

「スナック菓子などの加工食品には無機リンが多く含まれていて、9割が体に吸収される。体内でカルシウムと一緒になって血管の石灰化を起こすこともあります。リンは多くの食材に含まれていますが、肉や魚、野菜などの有機リンは体に吸収されにくいので気にしすぎる必要はありません」

肝臓専門医の浅部伸一さんは夏のビールに注意を促す。

「アルコールは利尿作用が強いので脱水症状になりやすい。ただでさえ脱水気味のところにアルコールを飲むと、腎臓への負担が大きくなります」

麺類を食べた後は2分運動する

栗原クリニック東京・日本橋院長で肝臓専門医の栗原毅さんによると、肝臓は“年をとらない臓器”だという。

「子供の肝臓と病気のない100才の肝臓は、区別がつかないくらいどちらもきれいな見た目をしている。確かに機能は衰えますが、100年元気な肝臓にすることは不可能ではありません」(栗原さん・以下同)

そのためには、何より体を冷やさないことだ。

「暑いからといって冷えたものばかり口にせず、温かいものを意識的に口にすること。夜は湯船につかって、内臓をしっかり温めてください。体が温まると血行や代謝がよくなり、体も動きやすくなるので、脂肪肝の改善につながります」

肝臓の機能を低下させないためにも歯周病に気をつけたり、湯船につかって内臓を温めたい(写真/PIXTA)
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食生活も見直して、脂肪肝の原因を取り除こう。食後の血糖値が急上昇・急降下する「血糖値スパイク」が起きると、肝臓に脂肪が蓄積されやすくなるので、血糖値の上昇をゆるやかにすることが大事だ。

「血糖値を安定させるためにおすすめなのは、70%以上の高カカオチョコレート。食前に5g食べてください。食事のときは大さじ1杯くらいの酢を納豆のタレの代わりにかけたり、お水で割って飲むのもいい。血糖値が上がりにくく、脂肪を減らしやすくなります。

食事はゆっくり30回噛んで食べること。麺類のように糖質が高い食事の後は、2分でいいので運動するといい。たんぱく質を摂って運動して筋肉を増やすことも大事です」

食後は歯磨きもしっかり行おう。

「歯周病になると炎症性サイトカインという物質が血液中に流れて、脂肪肝を悪化させる。起きた直後と就寝前はデンタルフロスも活用して、しっかり歯を磨いてください。舌磨きも1日1回は行いましょう」

ビタミンB群を忘れずに摂ってほしいと話すのは、浅部さんだ。

「肝臓が働くためにはビタミンB群が欠かせません。食事から摂るのがいちばんですが、忙しいときはサプリメントやドリンクで補うといいでしょう」

肝機能を低下させる悪習慣も覚えておこう。普段、何気なく口にしているものが、知らず知らずのうちにダメージを与えていることもある。

「乳酸飲料やスポーツ飲料も、体にいいと思って常に飲んでいると逆効果です。毎日果物をたくさん食べるのもよくない。果糖は脂肪肝の原因になります。甘いサワーや果実酒は、砂糖に類似した果糖ぶどう糖液糖が入っていることが多いのでよくありません」(栗原さん)

適切なケアをすれば、100年健康な腎臓と肝臓を維持することは不可能ではない。沈黙の臓器が騒ぎ出す前にできるところからやってみよう。

すべての病気の出発点は「脂肪肝」
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(前編から読む)

※女性セブン2025年8月14日号

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