《信頼できる“かかりつけ医”の見つけ方》総合病院よりも個人病院、ネットの声よりリアルな口コミ…「私のかかりつけ医になっていただけますか?」と合意をとるのも重要

医療に関する技術が進歩していく中で、クリニックの専門が細分化される傾向にある。しかし、患者にしてみれば、不調の原因がわからず、どの科を受診すべきなのか判断できないということも多いだろう。そういった場合に頼れるのが「かかりつけ医」だ。どんなことでも総合的に相談できる「かかりつけ医」が、安心を与えてくれるのだ。後編では、信頼できるかかりつけ医の見つけ方を紹介する。【前後編の後編。前編を読む】
内科も外科も精神科もすべてをカバー
頼れるかかりつけ医はどのように見つければいいのか。「科にそれほどこだわらなくてもいい」と言うのは、『「総合診療かかりつけ医」がこれからの日本の医療に必要だと私は考えます。』の著者で、きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さんだ。
「かかりつけ医に『科』はいりません。あえてあげるとしたら総合診療科。つまり、はちに刺された、包丁で指を切ってしまった、胸が苦しい、眠れない、などあらゆる症状においてなんでも診てくれる医師がいい。つまり、内科も外科も精神科もすべてカバーできるようなイメージです。
昔は町の診療所にそうした医師がいましたが、最近は専門に特化した教育がなされる傾向が続いたため、総合的に診られる医師は残念ながらそんなに多くはいません」
海外では、かかりつけ医のような総合診療医を示す「プライマリ・ケア医」の存在は一般化されており、欧米ではプライマリ・ケア医を介して紹介状をもらわなければ大病院を受診できないこともあるという。
こうした流れを受けて日本にも「家庭医療専門医」「プライマリ・ケア認定医」「総合診療専門医」といった制度が整備されつつある。こうした資格を持っているかどうかは、かかりつけ医を選ぶ際のひとつの指標になるだろう。ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子さんが言う。
「いまはまだかかりつけ医の情報が少なく、データ化もされていません。来年から『医療情報ネット』(ナビイ)という国が運営する医療機関検索サイトに、かかりつけ医機能が新設される予定といわれています。当該の医療機関が、どんな機能を持っているのかを公表していくことになっていて、“内科を標榜しているけど更年期障害も診察できる”“介護保険の主治医意見書を書けます”など、かかりつけ医にできるかどうか、より検索しやすくなると期待されています」

また、かかりつけ医にするのなら、総合病院よりもクリニックや個人病院の方を選ぼう。
「総合病院は受付も煩雑でハードルが高くて行きにくいし、担当医が外来に出ていたら診てもらえません。できれば家から近いところで、予約が取りやすく行けば必ず院長がいるようなクリニックの方が絶対にいい」(菊池さん)
総合診療医が理想ではあるものの、持病がある場合やすでに治療を受けている病気がある場合には、専門医がかかりつけ医となることもあるだろう。共通するのは、患者の話をしっかり聞いてくれるかどうかだ。「小中学生から通えるレディースクリニック」を掲げるInaba Clinic院長の稲葉可奈子さんが話す。
「“あまり話を聞いてくれない”というのは、日本の医療制度の問題で、正直なところ保険診療は診療報酬が安価なため患者さんが満足いくまでじっくり話を聞くのが難しい現実があります。それでも、患者さんの困りごとを汲んで治療するのが医療ですので、相談に取り合わない医師は避けた方がいいですね。ちなみに、医師の診察なしで受付で薬だけ渡すのは、医師法違反です」
どんな医師がいいか明確にしておく
自分が専門とする科ではない病気になったとしても、丁寧な問診から端緒を見つけてくれて、専門医につないでくれるかどうか、それが命にかかわる病気の早期発見にもつながる。
「選択肢があるなら、きちんと話を聞いてくれるかどうかとともに、フィーリングが合うかも大切です。
地域と連携が取れているクリニックかどうかも判断材料のひとつ。うちもいろいろな周りの病院と連携していますが、それはとても大事なことですね。いざというときに紹介できるので。患者さんにとっても安心だと思います」(菊池さん)
どんな医師か、その医師がかかりつけ医にふさわしいかを見極めるにあたり、「自分がどんな医師を求めているか」を明確にしておくことも必要だというのは山口さんだ。
「“いいお医者さんに診てもらいたい”ってみなさんよくおっしゃるんですけど、“どういうお医者さんをいいお医者さんと思ってますか?”と聞くと、だいたい絶句される。ただ漠然と、“いい医師”と思っていても、具体的なイメージがないと出会えません。
“治療経験が豊かな医師がいい”とか、“副作用とか合併症とかマイナスのことを聞いても嫌な顔せず答えてくれる先生がいい”とか、“長くおつきあいするのでやさしくて丁寧な医師がいい”など、自分にとって譲れない基準をつくるといいと思います」