
2024年5月に、夫・中尾彬さんを亡くした池波志乃さん。現在は70才のひとり暮らしで、遺言書を書き直しているといいます。中尾さんの生前から「早めの終活」について夫婦で積極的に発信してきた池波さん。発売中の女性セブンと『チ。―地球の運動についてー』のコラボ付録の「もしもシート。」を手にしてもらいながら、「想いを書き残す」ことの大切さを聞きました。
『チ。―地球の運動についてー』(作・画/魚豊)と女性セブンが初コラボ!
累計500万部突破の大人気まんが『チ。』は、15世紀のヨーロッパを舞台に、異端思想「地動説」を命がけで研究した人々の物語。登場人物たちは自分の信念を貫き、地動説という真理を、次の時代に託していく――。
付録の「もしもシート。」にも通ずる、「想いをつないでいく」メッセージが随所にちりばめられた本作。付録にも、作中の印象的なセリフを抜き出して掲載しています。
「もしもシート。」は最後のラブレター
50代の頃から、中尾さんと一緒に遺言書を書き始めたという池波さん。付録の「もしもシート。」を見て、池波さんは太鼓判を押してくれました。
「このシート、すごくいいですね! 中尾さんと私は、遺言書の『付言事項』という、自由に気持ちなどを書ける欄を活用して互いにメッセージを残していたのですが、このシートがあれば、もっと手軽に気持ちを残せて便利だったなと感じます。好きな有名人や好きな場所、大切な人に向けたメッセージなど、一見必要なさそうなことを書くスペースがたくさんあるのは、普通の『もしもシート』と少し違うところかもしれませんが、これがとても大事なんです。
大切な人を失ったときって、本当に無になってしまうんですよね。でも、私の場合、生前に中尾さんからもらった言葉があったおかげで、頑張れた場面がたくさんありました。ささいな言葉や想い出が残っていると、一緒にいた頃の会話を思い出して、なんだか笑えてきたり、元気が出たりする。“遺言は最後のラブレター”なんて言葉がありますが、このシートはまさに、残された人への手紙だと思います」(池波さん・以下同)

いざとなったら言おう、は絶対無理
「中尾さんや、54才で亡くなった父をはじめ、いままで何人も見送ってきて感じるのは、人は亡くなる前にまず言葉を失う、ということ。話すって、ものすごく体力が必要なんです。なかなかドラマのように、しゃべりたいだけしゃべってパタッと亡くなるなんてわけにはいかない。若くたって、明日突然倒れるかもしれないし、何でもないときにこそ、ちゃんと言葉を残しておかないと。
それに、自分の気持ちって、意外と自分でもよくわかっていないものなんです。病気になったら、亡くなったら、どうしてほしいんだろう?って、文字にしてみて初めてわかることもある。だから終活のつもりじゃなくても、1回考えを整理しておく、自分のために書くっていう姿勢で使うのもおすすめです」
「僕らは足りない。だから補い合える」アルベルトのセリフに共感
池波さんは、全8巻の物語の最終盤に登場するキャラクター、アルベルトのセリフに特に共感を覚えたそう。
「“僕らは足りない。だから補い合える。”っていい言葉ですよね。自分ひとりで生きている、と思っている人もいるかもしれないけれど、そうではないんです。
私自身、中尾さんを見送って70才になったいまでも、例えば中尾さんの旧友など、“補い合える”相手が見つかる瞬間があります。友人でなく、弁護士や公共の見守りサービスを活用してもいい。『もしもシート。』をきっかけに、ぜひ自分にとっての信頼できる相手を考えてみてください」(池波さん)
『もしもシート。』記入時のポイント3つ
もしものときのために、必要な情報を書いておく「もしもシート」。ひとり暮らしの高齢者が増加している、などの社会的背景もあり、自治体等での配布が広がっています。

用途を踏まえ、必要な箇所だけ書きましょう
書きやすいところから、好きな順番で記入しましょう。個人情報など、書くことに不安を感じる箇所は、空欄で構いません。
「好きな有名人や好きな場所など、一見必要なさそうなことが、残された人の背中を押すこともあります」
保管のしかたは、よく考えて
重要な個人情報なので、封筒に入れて封をするなど、注意して保管します。家族など、信頼できる誰かがいれば、「保管場所」と「おおまかな内容」を伝えておきましょう。
「ひとり暮らしなら、誰が目にしても問題ない内容だけを記入し、すぐ目に付く場所に置いておくという使い方もできそうです」
考えが変わったら、その都度書き直します
1度目で完成させる必要はありません。書き換えた際は、その都度「更新日」の欄に日付を記入します。
「書いた数日後に見返したら、気持ちが変わっていることもあります。まずは鉛筆で下書きするのがいいかもしれませんね」


撮影/宮崎貢司
※女性セブン2025年9月4日号