
まもなく会期末を迎える大阪・関西万博の会場として盛り上がった大阪、海外からの観光客にも圧倒的な人気を誇る京都、そのどちらからも同距離にあるのが“日本発祥の地”である奈良――。世界遺産に登録される神社仏閣や、国宝・重要文化財に指定されている建築物、仏像が多数あるなかでいま改めて注目されているのが、法隆寺を中心とした斑鳩エリアだ。聖徳太子が建立したとされる世界最古の木造建築・法隆寺の謎を解き明かしながら、改めて古都の魅力を再発見する旅を紹介する。
現存する世界最古の木造建築群は圧巻
遡ること1400年以上前、奈良・斑鳩の地に聖徳太子によって建立された法隆寺は、世界最古の木造建築物として、1993年に日本で初めての世界文化遺産として登録された。
再建については諸説あるものの雨風や雷、火災、地震などに弱い木造建築が1400年以上もの間、同じ姿であり続けることは奇跡ともいえる。なぜそんなことが可能なのか。宮大工ら職人たちが世代を超えて技術を受け継ぎ、修繕、修理の努力を重ねてきたことや、驚くべき工法の秘密が建築物の細部から明らかになってきている。
1400年前の古都の景色は令和の街並みに自然となじみ、その静謐な空間にいるとまるでタイムスリップしたかのような不思議な感覚に。大人になったいまこそ楽しめる法隆寺を旅しよう。
日本で初の世界文化遺産 悠久の歴史を体感して
いまから約1400年前の推古15(607)年頃に創建したとされる法隆寺。聖徳太子が父・用明天皇を偲んで建立したと伝わる。記録によると天智9(670)年に焼失するも奈良時代初頭には再建した、世界最古の木造建築物だ。金堂や五重塔などがある西院伽藍と夢殿を中心とした東院伽藍がある。
聖徳太子が母のために建立

東院伽藍に隣接する中宮寺は、聖徳太子が母・穴穂部間人のために建てた尼寺。「アルカイックスマイル」として知られる国宝の菩薩半跏像が人々を魅了する。
八角円堂の建物は太子信仰の聖地

東院伽藍にある夢殿。内部には聖徳太子をモデルにしたとされる国宝の救世観音像が納められている。

《最古の謎に迫る》屋根を支える謎の動物たちやなぜか膨らむ柱の中央部分
《謎その1》屋根を支える謎の動物たち
五重塔や金堂の軒下にいる龍や邪鬼(力士)。屋根が下がってくるのを防ぐために建てられた支柱の代わりとして置かれ、“守り神”のような存在だ。


《謎その2》なぜか膨らむ柱の中央部分
回廊の柱は直径2m以上のヒノキの巨木から作られている。より安定し強度が高まるよう、中心部が膨らむ「胴張り柱」として作られている。

《謎その3》柱に残るのは埋められた木片
柱を近くで見てみると、パズルのような木片が。これは傷んだり腐ったりした箇所に新しい木材を埋め込む「埋め木」という工法を採用し、丁寧な修復が繰り返された証。

《古都に泊まる》人間国宝の生家が宿泊施設に
1日2組限定の贅沢な空間で癒されて
記念館として活用されていた奈良県安堵町出身の陶芸家・富本憲吉の生家が2017年から宿泊施設になった「うぶすなの郷 TOMIMOTO」。緑豊かな敷地には晩年を過ごした部屋を残した和室のある「日新」、大正時代に建てられた蔵をリノベーションした「竹林月夜」の2棟があり、1日2組限定という贅沢さ。
最大8名で利用できるメゾネットタイプの「竹林月夜」には美しい坪庭を眺めることのできる石風呂が。

「日新」には富本が過ごした純和室と、モダンなベッドルームを併設。

レストラン「五風十雨」では“幻の赤牛”と呼ばれる「まほろば赤牛」のほか、朝どれのきのこ、琵琶湖の鮎など季節の逸品食材を使った食事を堪能できる。宿泊者以外でも利用可能。


「うぶすなの郷 TOMIMOTO」
住所:奈良県生駒郡安堵町東安堵1442
《とっておきグルメを堪能》繊細な絶品スイーツ&奈良の食材を生かした滋味深い料理
「かき氷」の聖地でいただく繊細な絶品スイーツ

氷の神様を祀る氷室神社があることから、“かき氷始まりの地”ともいわれる奈良ではかき氷ブームが。「和CAFE布穀薗」では、季節の果物や香り高い抹茶などを使ったこだわりのかき氷がいただける。明治時代の屋敷を生かした趣ある店内ではかき氷のほか、素材にこだわったランチも人気。
斑鳩産生麩と大和抹茶のかき氷~練乳添え~(1200円)。


「和CAFE布穀薗(ふこくえん)」
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺2-2-35
奈良の食材をたっぷりと使用

「鵤樂舎」は、法隆寺の宮大工である西岡常一棟梁と唯一の内弟子である小川三夫棟梁の技と心を伝えるギャラリーカフェ。地産地消にこだわり、奈良の旬の食材をふんだんに使用した創作料理が楽しめる。

「鵤樂舎(いかるががくしゃ)」
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺西1丁目3-3
撮影/横田紋子
※女性セブン2025年10月9日号