
千葉市動物公園のレッサーパンダの風太くんは、2005年に“立ち姿が美しいレッサーパンダ”として一躍注目を集め、日本中にその存在を知らしめた。あれから20年が経ち、現在22歳。国内でも最高齢クラスの長寿個体となったいまも、園の人気者であり続けている。この記事では、風太くんの現在とこれまでの歩みを紹介する。
大ブームを呼んだ「立ち姿」
2005年、後ろ足で立ち上がる風太くんの姿がテレビや新聞で取り上げられ、大きな話題になった。千葉市動物公園の飼育員、伊藤泰志さん(飼育歴35年/レッサーパンダ飼育歴1年6か月)は「突然のブームで来園者が急増し、GW時などは特に、誘導作業に追われたのを覚えています。その後、動物園での話題はレッサーパンダ中心になりました」と当時を振り返る。普段は動物園に足を運ばない人々も訪れ、レッサーパンダという動物が広く知られるきっかけとなった。
園内には風太くんをモデルにした石像も設置されている。等身大で再現された像は来園者の記念撮影スポットになり、当時のブームを思い出させる存在でもある。

高齢期を迎えた風太くん
飼育下のレッサーパンダの平均寿命は15歳前後とされているが、風太くんは2025年7月で22歳を迎えた。伊藤さんによれば「かなりの高齢ですが、食欲もあり元気です。ここ数年は春先に体調を崩すこともありますが、現在は回復して元気に過ごしています」とのこと。
夏場は暑さを避けるため展示を中止していたが、秋の涼しさを感じる最近は展示が再開される日も増えているようだ。外に出た風太くんの活動的に動き回る様子も見られ、来園者を喜ばせている。かつてのように立ち上がる姿は見られなくなったが、のんびりと歩いたり食事をしたりする姿は、いまも多くの人を和ませている。

広がる子孫たち
風太くんは繁殖にも大きな役割を果たしてきた。これまでに子や孫が数多く誕生し、日本各地の動物園へ移動して繁殖を重ねている。その数は5世代で70頭以上にのぼるという。伊藤さんは「多くの園で“風太の孫、ひ孫”と紹介され、その存在の大きさを感じます」と話す。子孫の活躍は、風太くんの名前をさらに広めることにつながっている。
絶滅危惧種という現実
レッサーパンダは国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されている。生息地の減少や気候変動の影響により、野生での個体数は減少しており、未来に残すべき動物のひとつだ。風太くんの存在は、日本中にレッサーパンダを広めただけでなく、こうした現実を伝えるきっかけにもなっている。
これからの風太くん

“立ち姿”で注目を浴びた風太くんはいま、穏やかな日々を送りながら、園のシンボルとして愛され続けている。伊藤さんも「レッサーパンダといえば『風太』と言われるくらいで、未だに多くの人の記憶に残っており、ビッグスターと呼んでも過言ではありません」と話す。
風太くんを見に千葉市動物公園を訪れた際には、ぜひ石像の前でも立ち止まり、その歩んできた年月や子孫たちへとつながる命の環に思いを寄せてみてほしい。