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《今も立つのか》22歳になったレッサーパンダの風太くんの現在「右目は失明」「繁殖を繰り返して」知られざるその歩み

シセンレッサーパンダ展示場の前にある石像 記念写真スポットとして人気(写真提供/千葉市動物公園)
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高齢期を迎えた風太くん

飼育下のレッサーパンダの平均寿命は15歳前後とされているが、風太くんは2025年7月で22歳を迎えた。伊藤さんによれば「かなりの高齢ですが、食欲もあり元気です。ここ数年は春先に体調を崩すこともありますが、現在は回復して元気に過ごしています」とのこと。

夏場は暑さを避けるため展示を中止していたが、秋の涼しさを感じる最近は展示が再開される日も増えているようだ。外に出た風太くんの活動的に動き回る様子も見られ、来園者を喜ばせている。かつてのように立ち上がる姿は見られなくなったが、のんびりと歩いたり食事をしたりする姿は、いまも多くの人を和ませている。

現在の風太くんの様子。展示は健康を第一に考え、気温や体調に応じて判断される(写真提供/千葉市動物公園)
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広がる子孫たち

風太くんは繁殖にも大きな役割を果たしてきた。これまでに子や孫が数多く誕生し、日本各地の動物園へ移動して繁殖を重ねている。その数は5世代で70頭以上にのぼるという。伊藤さんは「多くの園で“風太の孫、ひ孫”と紹介され、その存在の大きさを感じます」と話す。子孫の活躍は、風太くんの名前をさらに広めることにつながっている。

絶滅危惧種という現実

レッサーパンダは国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されている。生息地の減少や気候変動の影響により、野生での個体数は減少しており、未来に残すべき動物のひとつだ。風太くんの存在は、日本中にレッサーパンダを広めただけでなく、こうした現実を伝えるきっかけにもなっている。

これからの風太くん

右目は白内障で失明をしている(写真提供/千葉市動物公園)
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“立ち姿”で注目を浴びた風太くんはいま、穏やかな日々を送りながら、園のシンボルとして愛され続けている。伊藤さんも「レッサーパンダといえば『風太』と言われるくらいで、未だに多くの人の記憶に残っており、ビッグスターと呼んでも過言ではありません」と話す。

風太くんを見に千葉市動物公園を訪れた際には、ぜひ石像の前でも立ち止まり、その歩んできた年月や子孫たちへとつながる命の環に思いを寄せてみてほしい。

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